サイレントウェーブ
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わたしには名前がない。朝起きて、身支度を済ませて、適当に朝食を済ませて、歯を磨いて自宅を出る。一連の朝の大まかなルーティーンをこなして、ドアを開けて、世間に出ていくわたしには、両親から授けられた、猶原初美という名前がある。けれど世間でのわたしなりの役割を終えて自宅に帰宅すると、その名前の一つ一つを脱ぎ捨てていく。すべての名前が払拭されるときは眠りについたとき、夢の中を歩き回りわたしの意思とは裏腹に、様々な行動をとる。そのわたしには名前はなかった。こんなことを思うようになっ