新規開発テーマを通す

課長やグループマネージャーの醍醐味は「グループ/課の未来をデザインすることだ」と前回note『課長のみる景色』で言及しました。

新規事業展開について考えるとき、アンゾフの成長マトリクスのように既存事業を軸に位置付けを考えていくことが大切です。

https://www.osaka-toprunner.jp/articles/new_business/no04.html

私の場合、研究所内1グループのグループマネジャーですので、自グループと関連性の高い事業についてSWOT分析を行い、その分析結果をもとに中長期的な視点も入れながら開発テーマのポートフォリオを組みました。

その中でひときわ重要視しているのが
『自社にとって破壊的イノベーションとなる技術を包容するテーマ』
でした。

クリステテンセンのイノベーションのジレンマ、ご存知でしょうか。

クリステンセンは、優良企業が合理的に判断した結果、破壊的イノベーションの前に参入が遅れる前提を5つの原則に求めている。

企業は顧客と投資家に資源を依存している。
 既存顧客や短期的利益を求める株主の意向が優先される。
小規模な市場では大企業の成長ニーズを解決できない。
 イノベーションの初期では、市場規模が小さく、大企業にとっては参入の価値がないように見える。
存在しない市場は分析できない。
 イノベーションの初期では、不確実性も高く、現存する市場と比較すると、参入の価値がないように見える。
組織の能力は無能力の決定的要因になる。
 既存事業を営むための能力が高まることで、異なる事業が行えなくなる。
技術の供給は市場の需要と等しいとは限らない。
 既存技術を高めることと、それに需要があることは関係がない。

イノベーションのジレンマ(Wikipedia)

と紹介されているように、ある前提の上に合理的な判断を重ねた結果、破壊的イノベーションに飲み込まれる状態になることを示しています。

イノベーションの”ジレンマ”と表現されるぐらいですので、この「破壊的イノベーションになりうる技術テーマをポートフォリオに組み込む」というのは、実は簡単なことではありません。現事業方針と異なるためです。

またRDテーマの開発原資を負担するのは、大きく以下の3つ、コーポレート(共通部門)、ドメイン(複数事業部を1つにまとめたもの)、ユニット(事業部)と細かく別れており、実はどの財布の予算で開発テーマを行うかでそのテーマ管理手法も異なります。

昨年の年末ごろから、持論の事業戦略案を整理して色々なレイヤーの方に説明し「破壊的イノベーションの包容」の必要性について主張してきました。しかし、実際に予算がつくまでには至らず10%カルチャーの中で粛々と準備をすることに留まっていました。

が、7月のグループマネージャー昇進に伴い、テーマ提案の権限が増したことから本テーマの位置付けについて再度整理したストーリー構築し、開発がうまくいった暁には将来的にユニットが引き受けるという形で人も予算もつく正式な開発テーマに格上げされることになりました。

なぜ予算が限られる中で、我々がその開発テーマをしなければならないのか?現製品とカニバルものを作ってどうする気だ?

この手の質問、その形や表現を変え幾度となく浴びせられてきました。
その都度、その発言に至る背景をもっと知るために顧客の声を注意深く聞いたり、顧客の後ろに広がる業界の動向について知見を深め構造的な理解に努めてきました。

ストーリーはかれこれ5度以上修正し、上が納得するようにキーマンを巻き込み、いろんな画策の果てにようやく、予算責任者がその上に納得して説明できる形になったようです。

年始、今年の抱負に掲げたこと。

『引き続き新規事業開発を3倍速で進めながらメイン事業がその落とし穴に嵌らぬよう躍動し、結果的に破壊的イノベーションを良い形で包容することで、クリーンで社会的インパクトの大きな次世代事業を作り上げる』

想定より時間はかかりましたが、ようやく実行に移すスタートラインにようやく立てました。ますます面白い展開へ。


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