見出し画像

ファッション。 人間理解と新規事業開発

こんにちは
音楽と数学の交差”の考察でも言及したように、「人の精神は矛盾を本質的に包摂している」という立場であるため、巷のわかりやすいフレーズには距離をとったり批判的思考が発動してしまいます。

今回は、”ファッション”をテーマに、音楽と数学とは違う観点で人の特性について考えを言語化していきたいと思います。

SNSでよく目を惹く投稿として、「他者と自己を切り分けて、他者の目は気にせず気にせず自分らしくいこう。許容しよう!」というものがあります。これは、外部刺激に敏感になりすぎその対応に疲弊してしまっている場合、とても有難い考え方であり、広く受け入れられていると思います。
一方で、その方面に全面的に振り切り過ぎてしまうのも健全ではないと考えており、1つ視点を提供させていただきます。

それは、人間の特性理解に重要なファッションのお話です。

ファッションは、他人目線を意識します。 例えば、”3首”と言われる概念があります。この3首は首・手首・足首を意味しており、自分で見ることが難しいが他人の視線が集まる先となります。
もちろん、
「私はこれの服が着たい。そうすることで気分がアガるから!」
という考えも良いのですが、
「オシャレは他人の為にするもの」と思った方が人間理解に重要なファッションの歴史をよく理解することができるようになったりします。

また、自分はセンスがないからこれでいいんだ」ではなく、「他人目線のオシャレ」が世の中を少し良くするかもしれない。なぜなら、他人を思うことに繋がるからです。

【新規事業開発との繋がり。流行とその理由】

さらに面白いのは、ファッションに絶対はなく社会性をもつ人間の特性故に流行のサイクルがあること。例えば、ドレッシーとカジュアルのバランスをどう取るかは時代によって変わります。相対的なもの。 「私はこれがいい!」とスタイルを固定化してしまうと、本当の楽しみを味わえているとは言えないところが、実に興味深い。


人が流行に従う動機を纏めた文章があります。

(1) 自己の価値を高くみせようとする動機
(2) 集団や社会に適応しようという動機
(3) 新奇なものを求める動機
(4) 個性化と自己実現の動機
(5) 自己防衛の動機

流行(ファッション)に対する意識
https://www.jumonji-u.ac.jp/sscs/hoshinoa/2001/fashion.pdf

では社会性を持つ人間が、上記動機を持つとなぜサイクルが起こるのか?
それは、ファッションに「人が着飾るもの」という”構造制約”があるからです。
構造制約があると循環が生じる。これは音楽の旋律も同等です。
ただ、単純に円運動をしているというよりは、もう1つ別の次元が加えられて、螺旋状に発展しているイメージを持つとより現実社会に応用できると思います。ファッションについては素材(生地)に見られるようなテクノロジーの進化ですね。

実は、私の祖父は某紡績会社のバイヤーでした。祖父には流行の先読みができる力(仮説構築力と検証力)があったらしく、軍艦マーチを唄いながら各国の市場に自社製品を売り込んでいった武勇伝を私の小さい頃に聞かせてくれました。
その時には、祖父の仕事ってすごく楽しそう!という漠然とした想いしか抱かなかったのですが、世の中の構造や人についての理解を探究するうちに、そのカラクリが少しずつ見えてきたように思います。

【ファッション史の考察を新規事業開発に繋げる】

新規事業開発でブルーオーシャンを目指すには、すでに顕在化している課題ではなく、その先の課題を見つけて取り組むことが必要です。
そこで重要なのが”循環”と”別の次元x”への意識。
次元xは、それぞれが得意な領域があるので各々の色を出してアンテナを貼るエリアを決めましょう。これはポジショニング戦略にも通じます。
また、”循環”を意識すると次の2つの点で有用です。
①未来に顕在化する課題を見つけやすくなる。
②その課題感は過去誰かがすでに感じており、その当時にも課題解決のために何かしらの検討をしているという考えのもと、過去技術を調査する姿勢になれる。

私は、MOTの観点から特に後者の②が重要な心構えなのではないかと思います。課題解決には何かしらのテクノロジーの適用が図られますが、テクノロジーが社会貢献する確度はその完成度に大きく依存します。ローテク、ハイテクという言葉がありますが、いったいどの程度が理想だと考えますか?

私はこの比率が9:1となるケースが理想だと仮定し、徹底してローテクの調査を進めてから技術開発を行います。(そして、1は自身で開発して権利化してしまう。)

…いつか、幼少期と今の自分に影響を与えた祖父のエピソードを交えながら新規事業開発論を書きたいと思っていました。今回、ファッションを切り口に、表現出来たことを嬉しく思います。GWありがたし。

(終わり)


※人が流行を追う理由についての詳細解説です。


(1) 自己の価値を高くみせようとする動機
個人の流行採用の背後には、自分が高い価値を置いている目標を達成する ための道具としてそれを用いようという動機が隠されていることが多い。 社会の中で自己の地位を高めることや、異性による注目や関心を獲得する ことが例として挙げられる。
(2) 集団や社会に適応しようという動機
個人はしばしば、適切な行動の基準として流行を利用する。流行を採用す ることによって、自分が適切な構想をとっているという安心感を得ると動 じに、獣医に対しても適切な行動を取りうる人間であることを証明できる。 流行の採用は、社会や集団に適応するための簡単かつ容易な手段として機 能するのである。
(3) 新奇なものを求める動機
個人には、自己を取り巻く環境から情報を得ようとする欲求や自分自身に 対する刺激を求めようとする欲求、すなわち「好奇心」と呼びうる基本的 欲求がある。流行の採用は、倦怠感を打ち破るための手段である。
(4) 個性化と自己実現の動機
自己を他人から区別したいという欲求。また、流行を感情のはけ口や、意 思表示の手段とすることがある。
(5) 自己防衛の動機
個人は社会の中で様々な束縛を受け、内的コンフリクトを抱えている。これらを解消し、自我を保護するために、抑圧された感情のはけ口として流行の採用を行う。

流行(ファッション)に対する意識
https://www.jumonji-u.ac.jp/sscs/hoshinoa/2001/fashion.pdf


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?