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公認会計士9年目のリアル〜4大監査法人から独立まで〜

公認会計士試験の合格率は平均10%前後と狭き門にも関わらず、2023年の志願者は20318人。年々増加の傾向にあります。

今回は、公認会計士歴9年目のIさんにインタビューさせていただきました。
Iさんは大学卒業後公認会計士試験に合格し、大手監査法人に7年勤めたのち独立し活躍しております。

大事な商売道具である電卓

そもそも公認会計士とは?
会計のスペシャリストとして、企業等の公正な経済活動・社会の健全な発展に重要な役割を担う専門家、それが公認会計士です。
公認会計士が独立した立場で監査を行うことによって、投資家は安心して投資活動を行うことが可能になるのです。

※日本公認会計士協会より引用


公認会計士を目指したきっかけ


ーー 公認会計士試験の合格率は平均で10%以下と、難関国家資格かと思いますが、目指したきっかけは何なのでしょうか?

私の周りの家族含め親族全員が自営業で、サラリーマンをやっている人がいないんです。
小さい時から平日の昼間に親族の集まりがあったり、自由に時間を使っている大人ばかりでした。なので、元々サラリーマンになるイメージはなかったです。

将来的に自営業として働くために士業で考えた時に、三大国家資格と言われる医師・弁護士・公認会計士を検討しました。
大学の学部が医学部ではないので医師はなし、大学で法律の講義を受けた時に向いていないと感じたので弁護士もなし、消去法で公認会計士に興味を持ちました。

公認会計士の様々な会社の内部が見れることと、毎日同じ場所で仕事をするのが嫌なので色々な会社や場所に行けるのもおもしろそうだと感じました。


難関とされる国家試験の勉強の実態とは


ーー 親族含め周りの環境が大きいのですね。公認会計士に興味を持ち、実際試験勉強はどのように取り組んだのでしょうか?

実は大学4年の時に少し勉強をしたのですが、ちょうどその頃数年間、公認会計士試験の合格者が増えすぎたため、その反動で合格者が減少すると推測し、タイミングが良くないと思い勉強するのをやめたんです。
そのあと大学を卒業して3年間はバイトをしながら勉強もせず、フラフラ過ごしていました(笑)。

そして25歳くらいから、心を入れ替えて勉強を再開しました。
一般的に3,000〜4,000時間くらい勉強をすれば受かると言われていて、私は短期集中型なので、最初の半年はほどほどに、後半の半年は1日十何時間勉強していました。

マークシート式の一次試験と、論文式の二次試験があって、最初の年は二次試験で落ちてしまったんです。
一次試験の合格は3年間有効なので、翌年は二次試験の論文だけ受けて無事合格しました。
合格発表まで3ヶ月空くため、その間は勉強をしないので学んだことを忘れてしまうのと、初受験のフレッシュな人たちと共に試験を受けるのが辛かったです。


ーー 3000〜4000時間の勉強量は想像を絶します...。勉強期間中に特に苦労したことは何でしょうか?

試験科目が7科目あるので、その勉強のバランスを管理するのが大変でした。
それぞれの科目で覚えることがたくさんあって、一つの科目の勉強する期間が空きすぎると学んだことを忘れてしまう。
なので7科目を色分けして、勉強するスケジュールを一元化して見えるように、紙に書き出していました。
このスケジュールを立てる力が、実は今の仕事でも役立っています。思い返すと、苦労というより得た部分が多いように感じます。今だから言えることかもしれませんが。

勉強期間中に消費した大量の青ペン


独立を視野に、まずは4大監査法人へ入社しキャリアを築く


ーー 凄まじい勉強量をこなし合格した国家試験。公認会計士として働き始めてから想像とのギャップなどはありましたか?

まず私は、4大監査法人の一つに入社しました。
就職活動の際、4大監査法人を4社とも受ける人もいるようですが、私は雰囲気が合いそうと感じた1社だけ受けて、面接時の会社の雰囲気も期待通りだったので、入社を決めました。

実際に働き始めてから感じたことは、クライアントとのコミュニケーションが想像以上に多く、大事だということです。
一見、公認会計士の仕事ってずっと数字とにらめっこしてるように思われるかもしれませんが、実際は色んな人と関わりがあります。
クライアントの経理が作成してくれた書類に、誤りがあった時に訂正をお願いしたりするのですが、相手が目上の方だったりすると伝え方などにも苦労しました。

社内でも、それぞれチームを組んで同時並行で8社9社のクライアントを対応するので、毎日違うメンバーで違う会社の仕事をします。
想像以上に人との関わり合いがあります。


ーー 意外にも人と接することが多い職業なのですね。

その後は監査法人内でどのようにキャリアを築いてきたのでしょうか?
入社3年目で、現場のトップのようなポジションになりました。
役割としては、チームのメンバーの進捗管理をしたり、更に上の管理職への進捗報告などです。それに加え自分のタスクもあるので、多方面に一番気を配らなくてはいけないポジションかと思います。

そこから、大小様々な規模の会社の担当をしてきて、管理職に上がる試験の直前のタイミングで辞めました。
ここまでの7年間で、仕事の進め方も理解できましたし、管理職になればなるほど辞める時に現場やクライアントに迷惑がかかるので、このタイミングだと思いました。


独立をしてからは自分のペースで働く


ーー 7年間監査法人でキャリアを築き、その後独立されて、働き方に変化はありますか?

一番大きな変化は、自分のペースで働けるようになったことです。今月は自分を追い込んでたくさん仕事を受ける、だとか、次の月はプライベートを優先し仕事は少し緩く、なんてことができます。

あとはスーツを着る機会がグッと減りました。私がリモート対応の会社を選んでるというのもありますが、昔は週5でスーツを着てクライアント先に行っていたので、私服で過ごせるのはラクです。

ーー 小さな頃から見てきた自由に時間を使う大人を体現できているんですね。
独立されてからはどのようにお仕事を受注しているのでしょうか?
仕事は監査法人時代の先輩や関係者に紹介してもらうことが多いです。結局はチームを組んでやる仕事なので、独立している個人が集まって即席チームを作ってやっています。

あとは、年に何万社という会社が設立されているので、会計士がいない場に行くと重宝されるのと、同じ環境にいる独立会計士からの紹介もあるので、仕事には困らないと思います。


公認会計士はAIに仕事を取られるのか否か!?


ーー 「仕事には困らない」の話でいうと、会計士はAIに仕事が取られるのではないかという話題について、当事者としてどう感じますか?

正直、今やっている業務でAIでできると感じるものはあります。できればAIに投げてしまいたい仕事もあります。

でも結局はそれを使いこなせるのって知識がある人間なのと、意外とコミュニケーションも多い職なので、完全になくなることはないと感じています。
日本はペーパーレス化がなかなか進みにくいので、紙が完全になくなるまではまだ時間がかかると思います。

かなり前からAIに仕事が取られるとは言われていますが、進歩は遅いのではないでしょうか。

これからのキャリアの築き方


ーー 大手監査法人でのキャリア、独立してからのキャリアを築かれてきた中で、これからIさんがやってみたいことはありますか?

監査法人時代はBtoB企業を多く担当していたので、今後は飲食店のようなBtoC企業の担当をしたいです。食べることが好きなので、仕事に繋げられたら良いなと思っています。

会計士をやっていておもしろいと感じることが、会社の内部を見れることなので、税金や会計面を見て、事業計画を作ったりしたいですね。
クライアントの方には本業に力を注いでもらって、経営面が負担にならないように支えるイメージです。

公認会計士を目指す方へメッセージ

ーー 最後に、公認会計士を目指す方にメッセージをお願いします。
公認会計士試験に受からないと何も意味がなくて、落ちるか受かるかの0か100かになってしまう。
「プロセスに意味がある」というのは綺麗事で、試験勉強を頑張ったプロセスというのは世間では意味をなしません。覚悟がない人は受けない方が良いです。
落ちてしまったらその分勉強に費やしてきた時間も無駄になる。そして、一度受けると諦めどきが難しく何年も時間を費やす人もいます。
覚悟を持って挑んでください。


インタビューを終えて

最後のメッセージが、3000〜4000時間勉強してきた苦労を感じさせる重みがありました。
公認会計士のリアルを聞かせていただき、数字とただ向き合うのではなく、人とのコミュニケーションが大事になってくるお仕事なのだということがわかりました。

貴重なお時間を、ありがとうございました!

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