手の中には。

ある日のこと
手の平から芽がでてきた

とても痛い、

どうすることもできず、

ただそっと撫でるように触れてみる

突然現れた芽、そして痛む手の中。

痛む、どんどん芽が成長してきている気がする

どうしたらいいんだろうか…

痛む手の平、開いても、閉じても。

けれどいつの日か、その芽に愛着を持つようになった

手を広げれば、そこにいるのだ。

芽が成長し、蕾となった

痛みは増すばかり、けれども
共に、生きている。

蕾が開く

激痛と共に、のたうち回った。
激痛に耐えながら、開いた蕾を見た。

そこには、
鋭く、柔らかい、
羽のような植物が静かに存在していた。
呼吸を感じる。
人の姿のようにも見えた。

私の手の平で、虚ろに、美しく
遠くを見つめているようで

私は呆然として
ただただ、眺めているのだった。

痛みも忘れ、時も忘れ、ただ、ただ

その存在に、魅入られて

『しぜんとともに、おいきなさい。』

突然のことだった。

喋った、

たしかに。

再び、私は眺めた。

「目」を見つめた。

どこからともなく、聞こえる
不思議な、声。

しぜんとともに、おいきなさい。

『 自然と共に 、お行きなさい 。 』

『 自然と共に 、お生きなさい 。 』

『 自然と共に 、おいきなさい 。 』

どれだけ時が経ったのか、それとも経っていないのか

手の平のそれは、羽が散るように、姿形は枯れ崩れ
風の方へ無くなってしまった。

私の手の平には、もう何も無い。
広げれば、普通の手の平がそこにある。

しかし、痛みの感覚は残っており

いつまでも、

忘れられないのであった。

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