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『竹取物語』イントロ02。(古典ノベライズ後編)

(昨日から続き)

 わたしが「逃がして!」と恐怖でぴーぴー叫んだところで、鼻歌交じりにスキップするおじいちゃんは、聞く耳無いのか耳が遠いのか、家に着くまでまるきり返事をしなかった。
 巨大なおじいちゃんの両手に包まれたまま、わたしは揺らされ、運ばれる。
 どこかに着いて、鼻歌のおじいちゃんは手のひらを開き、中のわたしを誰かに向けて「ほれ、ご覧よ」差し出した。

「あら、おじいさん。お帰りなさい。早かったんですね」
「見てくれ、ばあさん。小さなかわいらしい女の子を、捕まえてきたぞ」

 物騒な言葉をニコニコと放ちながら、おばあさんにわたしを見せる。
 土間から家へと上がり、the日本昔話風味の囲炉裏の縁にわたしを置いた。
 追って興味深げにわたしに近づいてきた人の好さそうなニコニコ顔のおばあちゃん。
 そのシワまみれの柔らかな表情を見上げて安心したのも束の間、おばあちゃんは――ちょっとヤバい人なのかもしれなかった。

「まぁ。かわいらしいことこの上ない。――美人じゃないけど。まぁ、かわいらしい」

 姑にも似た、新参の女への敵意が、おばあさんのじとりとした視線に感じられた。

「ねぇ、おじいさん。こんなにかわいらしいのでしたら……」

 ニコニコのまま、敵意の感じる視線は相変わらず、おばあちゃんはわりと無茶苦茶な提案をしたんだわ。

「籠に入れて育てましょうね」

 (。´・ω・)ん?
 怯えの声を上げるより早く、おばあちゃんはわたしを雑につかんだ。
 竹の籠へと、虫か小さな動物みたいにポイっと雑に放り込まれたんだよね。
(続く)

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