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『竹取物語』イントロ02。(古典ノベライズ前編)

(先週木曜からの続き)

「毎日朝晩この竹林に分け入っているワシにはピンときたよ。確信した。お前さんはきっと、天から賜ったうちの子なんじゃな」

 ちょっとなに言ってるかわからない。
 仔犬や仔猫を飼うときにそんなん言う人たまにいるけど(むしろわたしもそのタイプ!)、まさか自分がその犬猫側の気持ちになるとは人生ってなにが起こるかわかんなくて茫然。
 わたしはトラックに轢かれた挙句、この巨人の世界に来ちゃったみたいなんだけど?
 わたしの困惑なんか気にも留めずに、おじいちゃんはニコニコうんうんうなずいていた。

「うちの子にならぬか? なり給へ。なるべし。よし、なれ」

 古典の四段活用を駆使して、巨大なおじいちゃんは勝手に決めた。
 決めるや、わたしの体丸ごとを、セクハラって知らないらしく上から雑にむぎゅっとつかんできた。
 ひょいっと持ち上げ、反対側の手のひらに載せるや、おにぎりみたいに両手でふさぐ。
 浮かれた足取りで、いそいそと歩き出した。

 一方で、上下左右に激しく揺れる、手の内側のわたし。
 這いつくばったまま内臓ごと揺さぶられ続けて、船酔いよりもゲッソリ吐きそう。
 一瞬ホントに吐いてやろうかと思ったけれど、それで困るのは間違いなくわたしだ。まみれる。
 おじいちゃんのシワシワの両手に包まれたまま、揺れと吐き気をひたすらに耐え続けた。
(続く)

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