見出し画像

『竹取物語』イントロ01。(古典ノベライズ後編)

(続き)
「お前さんの座っている竹の根元が光っておってな。不思議に思って近寄ってみれば、筒の中まで急に光りだしおった」
「……?」
「その竹を、スパリとナナメに鉈で切ったら、お前さんが座っていたというわけじゃ」
「……わたし、まだ生きてるんですか?」
「竹のもう少し下のほうを伐っておったら、お前さんは袈裟がけに切られて死んでおったな。わっはっは」

 巨人のおじいちゃんが目の前で大きく口を開けて笑う度、蛇に呑まれる蛙の気分。
 しかも死にかけたことを伝えられたわけで、こっちは全然おもしろくない。
 ちなみに顔のサイズだけでもわたしの身長の2倍は優にありそうな巨人と通常の音量で会話ができたことは、このときそんなに気にならなかった。
 だってそんなことよりも、高校前でトラックに轢かれたはずのわたしがいまいったいどうなっちゃってるのかのほうがよっぽど謎だもん。

「ここは、いったいどこなのよ?」

 せめて状況を把握しようと辺りを見回せば、ここは空の高く青い、清らかな竹林。
 ナナメに切られた竹筒の中で横座りになった小さなわたしは、学長が有名デザイナーに縁故で頼んだとかいう高校自慢の制服のまま、パチパチ目を瞬かせるのみだった。
(翌週へ続く)

お読みいただきまして、どうもありがとうございます! スキも、フォローも、シェアも、サポートも、めちゃくちゃ喜びます!