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北ヨーロッパと旅と本

 朝目が覚めて、ベッドの上でだらだらしながら何気なくインスタを開いたら、アイスランドの動画が流れてきた。
 ところどころ岩が水面から出ている浅い川と、岩肌を幾筋も白く流れる綺麗な滝、周りは背の低い鮮やかな緑で溢れていた。日は照っていないけれど、曇っているという言葉が似合わない、幻想的なグレーの光。
 北ヨーロッパは、どうしてこうも曇天が似合うのだろう。

 北ヨーロッパには、6年ほど前にイギリスに行って以来、行けていない。旅行で、ユーレイルパスという鉄道乗り放題チケット(青春18きっぷのような)を買って、ロンドンからハワース、マンチェスター、湖水地方、リバプールなどを周った。

 あの、緑と水が多くて、岩肌が灰色で、薄い光の、イギリスやアイルランドなんかの景色が好きで、懐かしくて、少し前にインスタで、現地の写真を集めたアカウントや、観光協会のアカウントを、片っ端からフォローした。おかげでタイムラインが、いつも壮大なことになっている。

 旅で、見たこともないものを見る感じや、逆にずっと憧れていたような景色を目の前にして、憧れが立体的になるような感じが好きだった(一時期、一か所に長く滞在して、そこで暮らすような旅行をしてみたこともあったのだけれど、現地で友達を作るのが上手くないぼくは、マグロのように動き続ける旅が落ち着くみたいだ)。だから、移動が好きで、電車から見える景色が好きで、それが変わっていくのが好きで、それは本を読むことに似ている。知らなかったことを知ったり、好きなことをより鮮明に浮かび上がらせてくれたり、先を知りたいと思いながらむさぼるように読み進めさせてくれる感じ。

 そして、旅をすることと、本を読むことは、呼応し合う。

 少し前に、ケルトの本を読んだ。北ヨーロッパの文化の古層には、ケルト文化がある、ということが書かれていた。イギリスやアイルランドだけではなく、北ヨーロッパ全体に。ハロウィンの起源になった、ケルトの夏の終わりの祭り、サウィンと、循環・再生の思想。自然に近いものに神や精霊を感じる、動物、女性的なものへの信仰。賢者・ドルイド。そして、アーサー王伝説に見られる、鉄鉱石=自然から金属=文化を生む「剣」の観念と、中央アジアに伝わる伝承の共通性。

 本で知ったこういうことを頭の片隅に置いて、また北ヨーロッパに行きたい、と思う。逆に、現地で見た風景を思い浮かべながら、本を読みたい、と思う。

 今朝、すごく素敵なアイスランドの景色を目にして、死ぬまでに世界中のこういう素敵なところ全てに行きたい、という、月並みな、でも切実なことを思った。そのときの旅が楽しくなるといいなと思いながら、そして今も旅している気分で、本を読む。

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