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ぜひ観て欲しい『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』【映画】

何か書かないと。
週に1投稿はするってマイルール設定した翌週に反故にするんじゃ情けない(笑)
ということで、パッと思いついたので好きな映画について語ろうかと。

【注意】

この記事は映画、その他関連作品などのネタバレがあります。
ご注意ください。


『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』とは

2019年公開、アメリカ製作。
原作はサリンジャーの死後に発表された『サリンジャー 生涯91年の真実』(晶文社/ケネス・スラウェンスキー著)。

著作がどれ程売れても映画化など己の手を離れることを頑なに拒んだ小説家。
アメリカの若者たちの心の代弁者。
はたまた、大分イカれた良く分からない小説を書いた人。
もしくは、アニメ【攻殻機動隊】の笑い男のモチーフとなった作品の著者。

知っている人は知っている、でも世代によっては全然知らないってこともあるだろう一人の小説家の伝記的映画。
代表作『ライ麦畑でつかまえて』は、青春小説の古典的名作と呼ばれ読み継がれるほどに一時代の若者の心を掴んだ作品と言われる。
そんな名作を生みだした大ベストセラー作家が如何にして若者たちの代弁者となったのか、その半生を映画化した作品。

読んでおきたい代表作

私自身は映画原作の著作は読んでいない。
読まないまま観ても問題なく楽しめる映画だと思う。
けど、サリンジャーの代表作でありタイトルにも含まれている名著『ライ麦畑でつかまえて』は読んでおかないと分からない部分が多いかも。

『ライ麦畑』の主人公ホールデンがどれほどインチキな世の中に批判的で、鬱屈としていて、例えばライ麦畑を駆けまわる小さな子供たちくらいにしか純粋さというものを見出せていないのか。
その辺が青年サリンジャーの感情にも通じるものがある気がするので、分かって観ればより感情移入しやすいかなと。

もしも読むとなると小説『ライ麦畑でつかまえて』では、かなりめちゃくちゃな口語文体を読むことになる。
けどそのめちゃくちゃ加減が、誰もが一度は通る思春期のあらゆるものに対する怒りや不満や義憤や遣る瀬無さなんかを思い出させて。
それに一度触れておくと、映画の中の青年サリンジャーの不安定さや感性の鋭利さが結構身近なものに思えるかも。

『ライ麦畑でつかまえて』の日本語訳は、個人的に村上春樹版より野崎孝版推し(*´艸`*)
好き好きにはなるけど、村上版はさすがというかさすが過ぎるというか、文章があまりにも整い過ぎている感じがあった。
これじゃ主人公(ホールデン)のめちゃくちゃでしみったれたどうしようもないどん詰まりの心境が、逆に感知し辛いんじゃないかなと思うくらい文章が綺麗(笑)
野崎版のホールデンの方が、私は何となく親しみやすかったな。

この映画の何が刺さったのか

「書いて書いて書きまくれ」。
これは、サリンジャーの大学の恩師であり、彼の作品を最初に世に送り出した雑誌「ストーリー」の編集長でもあるバーネット教授が学生だったサリンジャーにぶつけた一言。
私にはこれが何より、文字通り突き刺さった。

何てシンプルな極意か。
これが出来ないなら「私は物書きです」なんて恥ずかしくって、とてもじゃないけど言えやしないよなと思える痛恨の一打。

やりたい事はある。
けれど、いつもそれをやらないための言い訳を探している。
そんな自分をぶちのめしてやる気を出させてくれる、ありがたい一撃がここにはある(笑)

創作の苦しみを知る人へ

サリンジャーは、結局最後まで苦しんで苦しんで苦しみながら小説を書く。
不採用の連続、出版社に要求された小説の内容の訂正、戦争、そして売れてからはまるで自分自身が世間のインチキの一部になったかのような空虚さ。
付き纏い、心無い言葉を浴びせるファンにさえ悩まされ、苦しみながらそれでも最後まで彼は書き続けることを止めない。

書けない、(そんな嘘は)書きたくない、書く事しかない、(インチキを)書いてしまっていないか、書く事が辛い、でも書かないままでは心の安寧はない。
サリンジャーの全ては、ただ生きる事よりずっと強い力で書くことに向かっていく。
ここまで書くということに命を使い尽くした人生もないだろうと思わされる、その人生の描かれ方が例えようもなく苦しくて、私は目が離せなくなった。

私自身もほんの少しばかり文を書いていたけれど、実は楽しい一辺倒で書き終えられた経験が一度もない。
趣味で書いてる筈なのに、書くことは常に苦しい辛いしんどいの三拍子が揃っていた。
サリンジャーの苦しむばかりの人生を描いたこの映画が好きなのは、そういった共感できる経験があるからかも知れないな、とは思う。

それでも美しい映像と音楽のお陰で、ラストは清々しさまで感じられる作りになってもいる。
特に苦しみへの共感が高ければ高いほど、サリンジャーの心が満たされる瞬間には同じような癒しを得られるかも知れない。

心を動かす燃料、カンフル剤にしても良し。
心の洗濯、栄養剤としても良し。
創作が上手く進まない人、止めようか続けられるか迷っている人。
そんな人こそ、一度サリンジャーと一緒に悩んでみるのも一つの手かも知れない。
ということで、オススメの映画紹介でした!


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