木造建築の特徴 鉄筋コンクリート造、鉄骨造との違い
はじめに
増えている木造建築
ここ数年、住宅以外でも木造の構造設計を依頼されることが多くなった。公共の事務所や、ある企業の厚生棟(社員休憩所)など、今までなら鉄筋コンクリート造や鉄骨造で設計していた建物を、あえて木造で建てる事例も多い。
それで、自分のなかでの整理もかねて、木造とその他の建築物との構造的な違いを書いていこうと思う。
(ここでは、構造強度に関する視点(地震に対して強いか?など)から書いていきます。デザイン性や、環境性能に関しては、ここに書くものとは別に、いろいろな特徴があるかと思います。)
木造の一番大きな特徴とは
木造は天然材料なので強度のばらつきが多い、大スパンの構造が難しい、などの特徴があるが、一番大きな違いは、柱と梁がピン接合であること、
だと思う。
ピン接合と剛接合
構造部材の接合方法は、大きくは、ピン接合と剛接合の2つにわかれる。
その2つを説明すると・・
ピン接合とは
ピン接合とは、下の図のように、木造の柱と梁は金物やボルトなどで接合されているのだけど、理論上は点で接合されているだけなので、回転してしまうような接合方法のことをいう。木造は、基本的にピン接合となる。
剛接合とは
ピン接合とは違い、回転しないようにがっちり接合する方法を、「剛接合」という。一般的な鉄骨造や鉄筋コンクリート造は、このような接合方法が多い。(ピン接合の鉄骨もある。)
木造でも剛接合にする方法はあるが、大きな柱や梁にしなければならなかったり、特殊な金物を使用しなければならなかったり、制約が多い。
そもそも、木造は、材料の特性として、接合面全体を溶接などでがっちりくっつけるということができず、剛接合に適していない。
地震力に抵抗するには
今度は、それぞれの構造がどうやって地震力に抵抗するかということを書いていく。
重力が鉛直に地面の方向にかかる力だとすると、地震力は、横から水平方向にかかる力になる。
鉄筋コンクリート造、鉄骨造の場合
剛接合である鉄筋コンクリート造、鉄骨造の骨組みに地震力(横からの力)が加わった場合、この骨組み全体が力に耐えて、地震力に抵抗する。
これは鉄筋コンクリート造、鉄骨造の主な構造で、ラーメン構造という。
(ラーメン構造ではない、鉄筋コンクリート造、鉄骨造もある。)
木造の場合
ところが、同じように、木造のフレームに地震力が加わった場合、木造はピン接合なので、下図のように倒壊してしまう。
では、どうするか?というと木造は、すじかいや合板などで、水平力に抵抗させることになる。
だから、このすじかいや合板などの耐震壁をどこに配置するか?というのが、重要になってくる。デザインにも大きく影響するので、初期段階から、意匠設計者とのすり合わせが必要だ。
実際の要望は
しかし、実際は、「すっきりと、柱と梁だけで渡り廊下をつくれないか?」という要望がデザイナーや意匠設計者からくることがあり、頭を悩ませる・・・
言いたいこともわかるので、できるだけ要望にこたえてあげたい。でも危険な建物をつくるわけにはいかない。
タイトル写真のように、上部に「方杖(ほうづえ)」という斜め材をつけるのが、一般的な渡り廊下や東屋などの方法だ。
でも、方杖もデザイン的に違うと言われると・・・特殊な金物を使って柱梁を剛接合にするか? 部分的に鉄筋ブレースを入れるか? など今も悩んでいる物件がある。
これだ!という引き出しが自分の中にいくつかあるといいなあと思うのだけど。似たようなデザインがないか調べているところだ。
もし参考にできそうな建物があれば教えて頂きたいです。
今後も、木造でいろいろ思うところがあるので、自分の勉強もかねて、ブログに書いていく予定です。
テーマは、金物について、接合方法について、耐震補強について、など。
いろいろご意見頂けると幸いです。
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