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京大ロー 令和6年入試 成績・再現答案の分析

(1)成績

京大ロー入試成績

順位は60位前後。

書類点については282点しかありませんでした、、、。内部生の合格者の書類点平均は305~320点、外部生の合格者の書類点平均は少なくとも290点以上はあると思うので、私の書類点の点数は合格者の中でもおそらく最底辺だと思います。

一方で、筆記点の合計は342点でした。当初の目標が330点だったので、それを大きく上回る望外の結果となりました。書類点が低かった分、外部生であれば筆記で各科目平均で60%の点数をとることができれば充分合格圏に達することができますね。ちなみにですが、筆記点1位の人は、例年350~355点ほどらしいので、1位の人とは8点~13点ほど差があることになります。京大ローは偏差値方式で点数がつけられるので1点の差がかなり大きいため、1位の人とはかなり実力差がありそうです。彼らに追いつけるよう精進します。

民法以外は主観と客観で大きくズレがなかったのもよかったです。むしろ良い意味で予想より点数が伸びてくれました。試験は相対評価なので、皆が書けることを当たり前に書けば60%付くのではないでしょうか。

民法 60/100(予想63)
商法 57/100(〃57)
民訴 32/50(〃31)
刑法 66/100(〃64)
刑訴 31/50(〃30)
憲法 64/100(〃61)
行政 32/50(〃29)
筆記合計 342/550(〃335)
書類 282.923(〃285)

合計 624.923(〃620)

(2)再現用案の分析

①憲法(予想61点→実際64点)

予想より上振れました。

やらかした点としては、
・第1問、プライバシー権については頑張りすぎたせいで、紙面が足りず無理やり薬事法射程外にしての明白性の原則にした。あてはめが雑
・第2問の事件2、判例の多数意見と逆の結論となる。合理的期間か否かについてあてはめてない
ですね。

第1問の権利選択についての正解筋は、出題趣旨では「子どもに対する性犯罪の防止を目的とする架空の制度に即し、憲法上の職業の自由プライバシー権の理解を問うものである。」と書いてあります。この権利選択について、意外とどちらかしか検討していなかったり、14条で検討していた人も数多く見受けられました。私は出題趣旨がいうように両者とも検討できていたので上振れたのかなと思います。それと、最近の司法試験の傾向と同じように、判例の射程について検討したり、判例の引用を沢山したのが評価されたのだと思います。判例の射程の勉強を沢山していてよかったです。

第2問では、「事件1について最大判昭和35年6月8日民集14巻7号1206頁を踏まえて、統治行為論の意義及び問題点等を論じ」とあるので、統治行為論と苫米地事件について書けたら高評価がつくでしょう。私は、事件1の元ネタの苫米地事件を知っていたので判例のロジックをそのまま答案に表現するよう努めました。その際は砂川事件の論理をできる限り利用するようにしました。

事件2については、元ネタの判例を知らなかったので、完全に現場思考でした。作問者は「問1との事案の違いを確認したいのかな」と思い、回答の際には問1とはどの点が異なるのかにつき意識して論じました。お気持ち表明頑張りました。出題趣旨でも、「事件2では、 憲法53条が個々の国会議員の臨時会召集要求に係る権利・利益を保障したものか否か、あるいは当該事件において国会議員としての職務に関する権利・ 利益に対する侵害がある否かを中心に、 各自の見解を説得的に論じることが求められる。」としかかいておらず、事件1の場合と異なり元ネタ判例について引用されていないので、知らなくても自説のロジックを説得的に論じていれば高評価がついたのでしょう(知っていたら尚更有利ですが)。
ただ、問題の「なお~」以降の事実をどう評価すればよいかわからなかったので、訴えの利益について検討しちゃいました。これは完全に間違ってますね。結論としては、私は判例の反対意見のようなロジックになってしまいましたが、まだ耐えれたのかなと思います。

②行政法(〃29点→〃32点)

こちらも、予想より上振れました。

やらかした点としては
訴えの利益について、回復すべき権利利益の内容を営業上の利益にしてしまったことですね。シンプルに委託費請求権にした方がよかったと思います。

第1問の出題趣旨で、「申請手続を契機とする行政指導については、通知がいかなる法的意味を持つのかを検討した上で」とあるのは、「Cが指定候補者に選定されることにつき、Cに「申請」権(行政手続法参照2条3号)はあるか。」ということにつき検討せよというですかね?良くわかりません。
また、「これに対応するための行政手続上の対応…を論じることが必要である。」としか書いてないので、作問者は実体的違法事由についての検討を求めていなかったぽいですね。

また、第2問においても、訴えの利益についてはノーマークだったので、上述のようにお気持ち表明答案となってしまいました。

このようなマイナスの事情があるにもかかわらず、なぜ点数が上振れたのかは謎です。あまり受験生は行政法の勉強に手が回ってないということでしょうか。

③商法(〃57点→〃57点)

やらかしまくりました。受験した後「落ちた」と思いました。
なぜならば、
・第1問→事業譲渡の条文(467条1項2号の2)引けてない
・第2問(1)→振替法引けておらず、名義書替えの不当拒絶とか書いてた
・(2)→433ではなく考えすぎて125Ⅱを検討してしまう。
といった全設問で大ミスをかましていたからです。

案の上、合格者平均未満の57点しかありませんでした。
合格者の皆さんは事業譲渡の条文や振替法について言及出来ていたということでしょう。書けた人すごすぎます。今年の商法は知識ゲーでしたね。

第1問については、瑕疵連鎖についてはわかりましたが、本件契約が何故株主総会決議事項なのかについてかがわかりませんでした。株主総会決議事項の契約なんて組織再編契約ぐらいしかないのですが、あてはまりそうな条文を見つけられず、やむを得ず、株主交換契約であると認定してしまいました。ここで安易に重要財産処分で書いてたらさらに点数を落としていたでしょう。

第2問(1)については問題文に「上場している」と書いてあったので「振替法かな?」とは思いましたが、時間がなかったのとそれについて検討する勇気がありませんでした。

(2)についても「有価証券元帳」って会計帳簿じゃないとわりきって、「これは433を検討させるように見せかけて125Ⅱを検討させる問題なのかな」と思っていたのでしたが誤りでした()。深読みしすぎちゃいましたね。

④民法(〃63点→〃60点)

一番ニガテじゃない科目の民法でしたが、予想より低かったです。これについての原因は謎です。だれか答案読んでアドバイスしてください、、、。

出題趣旨を概観してみますと、
第1問の「問1では、譲渡担保権に基づく物権的請求権行使の可否占有改定による即時取得の成否および後順位譲渡担保権の実行の可否について問うている。」とあります。すべて言及出来てたつもりなんですが、問1はあまり難しくなかったので、ここではあまり差がつかなかったということでしょう。

第1問の「問2では、動産譲渡担保に基づく物上代位債権質の優劣について、①抵当権に基づく物上代位と債権譲渡に関する判例法理および②動産売買先取特権に基づく物上代位と債権譲渡に関する判例法理を踏まえつつ検討することを求めている。」とあります。未知の論点でしたので、現場思考でしたね。上記優劣については①②の事案の違いをふまえつつ出題趣旨通り検討できていたつもりですが、どうなんですかね。合格者の皆さん解けていたということでしょうか。
だれかアドバイスお願いします、、、

おそらく減点の要因とされたのは第2問でしょう。
出題趣旨では「問1では、契約解除による本来的帰結、民法545条1項但書の「第三者」として保護される要件のほか」と書いてあるので、545条の第三者について言及しなければなかったところ、私はそれについて「あえて」検討しませんでした。Aが解除したことにより他人物賃貸借となるのではないかという点が問題となるも、「他人物賃貸借になると賃借人が可哀想なのでそうした弱い立場にある賃借人を直接保護しようとした法律が借家法である」という理解だったからです。大学の民法教授にも聞いたところ、「545条1項但書の「第三者」についての検討は不要っぽいよね」とおしゃってたので不要なのかなと思ってました。この点につき、出題者の解説をぜひ聞きたいですね。

問2については、不当利得の類型論についての理解が問われているのかなと思いました。うわさで聞いたのですが、内部生は不当利得について、衡平説ではなく類型論で教わってるそうです。なので、内部生の方は割と解きやすかったのかな?
私は、類型論の立場に立ち、給付利得の場合は全面返還が原則であると言及しながら、それを貫徹できておらず、答案上論理矛盾が生じてしまっています。また、賃料分についてはシンプルに法定果実と捉えたら良かったものの、準事務管理と構成してしまったりしてしまいました。
このように、第2問については、作問者の意図に答えられなかったり、答案上論理矛盾が起きていたので評価が低かったのではないかと推察します。

⑤民事訴訟法(〃31点→〃32点)

読解民訴ありがとう。

第1問は、「訴訟外で成立した訴え取下げ合意を含む和解契約が、訴訟上どのような意義を有するかについて、私法行為と訴訟行為の関係和解契約と訴訟上の和解の区別を踏まえて論じることが期待される。」とあるので、明文なき訴訟契約の理解が問われているということでしょう。第1問は、事前に論証を覚えていたのでそれをそのまま吐き出しました。

第2問は、出題趣旨がいうように、後発損害と既判力の論点が出題されました。読解民訴ありがとう。私は、読解民訴の勅使河原説に立って答案を書きました。その際は原則論をしっかり提示するように意識しました。合格者平均より上振れたので、この点は評価されたということでしょう。ちなみに、問題では「判断するに当たり必要な審理があれば、必要と考える理由とともに指摘すること」と書いてあったのですが、どう検討すればよいかわからず、試験本番ではこれについて検討しませんでした。今もよくわかってません。有識者の方いれば教えてください。

全体的に論証ゲーという感じでした。例年よりは易しめだったのかなと思います。法的三段論法の大前提部分をかけるかかけないか、その理解が正確かにより大きく差がつきそうな問題でした。

⑥刑法(〃64点→〃66点)

予想より上振れました。

第1問ですが、最初30分くらい「過失犯じゃね?詰んだ笑」と思ってました。過失犯は出ないものと思い、全然勉強してなかったんですよね。全然わからなかったので、30分ほど経ってから問2を解き始めました。
でもよくよく考えると、「乙はAに対して未必の故意ある!!」と思ったので故意犯かなとひらめきました。そして、「そうすると、Bについては方法の錯誤を検討、判例によればBについても故意があることになるので、各位、緊急避難と誤想防衛の一種について検討するって感じか。なんか、『防衛行為の結果、第三者にも結果が生じた場合どうなるか』という論点と似ているな」となりました。
これを試験中にひらめいて興奮してアドレナリンが出まくりました笑
出題趣旨においても、「緊急行為を中心に錯誤責任も検討対象とする。」とあるので、概ね出題趣旨通り書けたのかなと。
また、「多数説によれば正当防衛状況であるため、乙にとって客観的には甲の轢過が最適解である。乙はその状況を認識したにもかかわらず無関係な B を殺 害しAの傷害を悪化させており、判断の誤りにつき過剰避難あるいは適法行為の期待可能性の低減が問題となる。」とあり、これは「誤想防衛の一種」として責任故意を阻却した判例(大阪高判平14.9.4)が参考になりますね。緊急避難についても要件ごとに規範→あてはめをしっかり守りました。
問題は甲の罪責ですが、周りの人たちと話し合った結果、①傷害罪説、②建造物侵入罪説、③過失犯説、④往来妨害罪説等色々上がりました。私は④を検討しました。出題趣旨ではこの点について言及はなかったので、ここではあまり差がつかないということでしょう。どうせ責任阻却されるし。

第2問は、横領後の横領の理解について問われているかなとおもいました。ただ、横領の各要件や乙の共犯についても論点がてんこ盛りだったので、時間と筆力の勝負でした。
出題趣旨でも、「①横領罪の成立要件、②詐欺罪における財産的損害、③二重譲渡における第二買主に対する横領罪の共犯の成否、④横領後の横領の取扱いに関する基本的理解を問うものである」とあり、①〜④について全て指摘できていたら60点はつくでしょう。
なお、横領罪の要件が全て満たすかどうかについても不安だったので、一旦成立させといて保険として背任罪の成否も検討しました。背任罪についても検討する際も論点沢山ありますよね。しかし、出題趣旨では背任罪について触れていなかったので、出題者は本件では横領罪が成立することを当然に意図しているものと思われます。背任罪について検討しても間違いではないですが、余時記載として点数はつかない可能性はあります。
横領や背任の各要件についてはしっかりと定義・規範をあげ、当てはめるという順を徹底しました。
横領後の横領についても共罰的事後行為説に立ちしっかりと書きました。後々気づいたんですが、判例は第1行為が時効により不可罰となり第2行為により立件できないのは不合理だから、共罰的行為とみるのが妥当ってロジックだったと思うんですよね。んで、今回は公訴時効は関係なく、第2行為を不可罰とすると「正犯なき共犯」は認められないわけですので、乙の共犯も不可罰となってしまうわけです。この結論は不当である。共罰的事後行為と不可罰的事後行為の違いってこういう場面においても生じるんですよね。勉強になりました。

⑦刑事訴訟法(〃30点→〃32点)

非常にシンプルな問題で、訴因の特定が出題されました。規範はどうせみんなかけるのであてはめで差がつくでしょう。

規範については古江本が非常に参考になりました。大好きな本ですこれ。

しかし、公訴事実については色々問題となる箇所があります。「訴因の特定に関する判例てんこ盛り問題」ってかんじですね。答案構成力が問われます。

あてはめでは、何個か検討すべき文言を飛ばしちゃいましたし、あてはめの仕方もそもそもあってるかわかりませんでした。ただ合格者平均より上振れてるので概ね評価されたということでしょう。

(3)おわりに

最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました!!
京大ローを目指してる方にとって少しでも参考になれば幸いです。
質問ある方は気軽にコメントしてください。


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