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京大ロー 令和6年入試 再現答案 行政法

①問題・出題趣旨

②再現答案(3.2枚)

第1 問1について
1. (1)そもそも、Cが指定候補者に選定されることにつき、Cに「申請」権(行政手続法参照2条3号)はあるか。
2条、3条、4条、5条の存在。3条によりCに指定候補者への指定につき許認可を求める行為が付与され、4条、5条により市長が認否の応答をすべきとされているから、「申請」の定義を満たし、Cに「申請」権は保障されている。
(2)したがって、CはY市に対し(行政事件訴訟法38条1項、11条1項1号)、申請型義務付け訴訟と取消訴訟を併合提起し、Cを指定候補者に選定するよう義務付ける訴訟を提起すべきである(同法6条2号、37条の3第1項、3項)。
2. 実体的違法事由
(1)Y市指定管理者指定手続に関する条例の4条1項柱書には、各号の要件を満たしたことのみをもって指定管理者に「選定するものとする」とされており、市長に効果裁量を認めていない。したがって、仮にCが同条例4条各号の要件を満たしているにもかかわらず、A Bが申請候補者に選定されたことを理由にCを申請候補者に指定しなかった場合、同法4条に反し、違法事由となる。
(2)同法4条1項各号の文言は概括的記載になっているのみならず、要件充足性の判断は市長の専門的技術的判断が尊重されるべきであるから、市長に要件裁量は認められる。したがって、市長に裁量権の逸脱濫用が認められれば、違法である(行政事件訴訟法30条)。ABを申請予定者に選定したことのみを理由にCを選定しないことは、合理的理由なしに差別的取扱いをしているといえ、裁量権の逸脱濫用にあたり、違法事由となる。
3. 手続的違法事由
(1)ABが選定された理由しかCの文書に提示されていないため、理由提示として不十分ではないか(Y市行政手続条例9条)。理由提示としてどの程度記載すべきかが問題となる。
理由提示の趣旨は、行政庁の判断の恣意を抑制し、名宛人に不服申立ての機会を保障することにあると解される。したがって、付記すべき理由としては、いかなる事実関係法令条文を適用して処分がなされたかを、申請者においてその記載事項自体から了知しうるものでなければならない。
上述のように、文書にはABが選定された理由のみを記載しておらず、本件条例のいかなる条文に反する事実が認められるのかにつき、文書自体から了知することはできない。
したがって、理由提示手続に瑕疵は認められる。
(2)もっとも、手続の瑕疵が違法事由になるか否かは別問題である。当該手続を取り消しても再度同じ処分がなされるため、取り消したところで紛争解決において意味がないと考えられるからである。
しかし、手続の瑕疵が違法事由にならなければ、行政庁は行政手続を守らないこととなり、法が当該手続を定めた趣旨を没却する。したがって、行政手続条例が定める手続を履践しないで行われた処分は、違法事由となる。
上述のように市長はY市行政手続条例9条が定める理由提示義務を履践しているとはいえないからい違法事由となる。最高裁も理由提示の瑕疵は直ちに違法事由となるとするから上記結論に問題はない。

第2 問2について
1. 訴訟係属中に指定期間が満了した場合、Bが取消訴訟を適法に提起しても指定取消処分が取り消されることはないから、訴え提起することは紛争解決には無意味であり、原則として訴えの利益は認められない。
2. しかし、具体的事案に照らして個別的な法律上の利益の侵害状況が継続していると言えれば、「回復すべき法律上の利益」を有しているといえ、訴えの利益は認められる。
指定取消処分を行なったのは指定期間の4年目が終了する月末であり、条例6条により指定期間は5年間とされている。すると、残りの1年間、Bは指定を受けることによって営業上の利益を得ることができたと考えられ、これは事実上の利益とはいえず、法律上の利益である。
なお、指定期間2年目に大規模な土石流が発生し、多くの宿泊予約がキャンセルされ、Bの財政状況は厳しくなっていることからすると、残りの1年間にBが営業を開始することはないと考えられ、営業上の利益を得ることはなかったとする反論も想定されるが、訴えの利益の判断は必ずしも確実に法律上の利益を得ることができることまでは必要とせず、法律上の利益を得ることができる蓋然性があれば足りる。したがって、4年目以降では財務状況が回復する可能性も考えられる以上、上記反論により法律上の利益が否定されることはない。したがって、残りの1年間のBが受けると予想される営業上の利益は、「回復すべき法律上の利益」にあたり、訴えの利益は認められる。
3. 以上より、他の訴訟要件に問題がないので、訴えは却下されるべきではない。
以上

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