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鳥ヤロー、金髪、鼓動、

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 大学の図書館で勉強した帰り道。

 福原遥ちゃんとRin音さんの「道標」を聴きながら、ゆっくり歩いていた。最近見つけた、好きな曲。

 あぁもうあと1年も経たないうちに、この道を通ることもなくなるんだなぁ。
 夜の大学って、こんな綺麗だったっけ。

 今日は全身新しい服だなぁ、贅沢だなぁ。

 5月なのに寒いなぁ。

 そんなことを考えていた。

 ふと、道沿いの居酒屋の横を通り過ぎるとき、店の中を眺めてみた。知ってる人いたりして。

 けっこう混んでるなぁ。


 その瞬間、胸がどきっっっとした。

 彼がいる。
 1年前、私のことを好きと言ってくれた後輩。

 前にも日記に書いた、あの子がいた。店内の真ん中辺りの席にいた。

 彼はうつむいていて、顔を上げるところだった。目は合わなかった。

 彼のドレッドヘアは金髪になっていた。
 金髪にしたの、知らなかった。

 心臓がびっくりして音を立てている。自分の鼓動を感じるくらいどきどきするのなんて久しぶりで、余計に感じる。

 この心臓にくる深い響きはなんだろう。

 彼氏がいたときは彼のことを思い出しちゃいけないと思っていたけれど、別れた今は思い出すことに罪悪感を感じないからかもしれない。思い出してもいい存在になったからかもしれない。
 付き合うなら彼みたいな人がいいと思っていたその人が、そこにいたからかもしれない。
 単純に、久しぶりに彼を見たからかもしれない。まさか知り合いが中にいるなんて思っていなかったからかもしれない。

 本当は、
「いま鳥ヤローいたよね?外から見えたよ笑」
とLINEをしたい。
 そこからまたLINEを再開して、1年前みたいに仲のいい関係になりたい。

 でも、それをするには自信がなさすぎる。
 また彼を傷つけてしまわない自信が。

 彼は今別の好きな人がいるかもしれない。
 私と関わることは、彼の苦い思い出や辛さを呼び起こすことになるかもしれない。
 もう一度仲良くなって、もしもまた好きにさせてしまったら。私が好きになれなかったら、また傷つけてしまう。

 そして、好きになれる自信もない。

 私はただ、人として、友達として、後輩として、彼を求めている。「仲のいい波長のあう一緒にいて楽しい人」として。

 そして、私はきっと、「私のことが好きな人」として、彼を求めてしまっている。


 目が合っていればよかったのに、と思う私は、本当に悪い奴だ。

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