見出し画像

23,09,27。腸よ鼻よ完結巻③

自分が大腸がんの腫瘍摘出手術からの縫合不全からの仮設人工肛門敷設に
至ったのは8年前です。

退院後比較的早めに仕事に復帰したのですが季節は夏。現在とほぼ同じ仕事だったので重労働では無いとはいえ外仕事。夏場の約3か月間を大腸無しで
(小腸の末端をお腹から出すイレオストミーと呼ばれる人工肛門でした)過ごしたのですが、食べた物から水分を摂取してくれる大腸のありがたみを痛感させられたものです。

全優氏が改善の兆しが見られない大腸の具合に業を煮やし、大腸摘出を決行してからの人工肛門にまつわるエピソードは約3カ月の仮設だったとはいえ覚えのある話ばかり。

今にして思えば自分の体験も人工肛門にしているオストメイトと呼ばれる方たちの苦労を身をもって体験する事で他人を慮る気使いを得られた貴重な3カ月だったと自負してはいますが、作中での全優氏による「+不謹慎にならぬレベルでの笑いどころの加味」には共感と共に感銘を受けた事を覚えています。

大腸摘出以来、あちらと思えばまたこちらといった下半身にまつわる数々の不具合を腸鼻で描く際に決して暗いものにはしないという全優氏の決意の裏に有った乙女ならではのシリアスな弱音は完結巻である本作のあとがきの中で初めてほんの少し明かされていますが「そりゃそうだよな…」という思いと共に全優氏のギャグ漫画家としての鋼鉄のごとき矜持を見たような気がしてその漢ッぷりにうっとりです(笑)

腸鼻の単行本化が決まった時には「3巻くらいでまとまる話かな…」などと邪推していましたがよもやよもやの全10巻というボリュームでの完結。

健康になっての完結ゆえ「続編は期待しないでくださいね」という巻頭のコメントからも「お疲れ様でした」と「おめでとうございます」の言葉しか無いのですが、全優氏におかれましてはこれからも少しニッチな作品でお目にかかれる事を期待しております。

そしていつの日か「永久人工肛門をあえて選択しない」という決意が功を奏し、my肛門での健康な排泄に成功した暁にはその感銘を腸鼻番外編として描いて戴きたいと心よりお願いするのでありました。

この記事が参加している募集

#マンガ感想文

20,191件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?