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【エッセイ13】子どもの頃のヒーローが目標に変わった日

みなさんの子どもの頃のヒーローって、誰でしょう?

おそらく多くの人に、子どもの頃に憧れたヒーローがいたのではないかと思います。

私にも子どもの頃、とても大事なヒーローがいた。

私はめったにマンガを読まない。
なぜかは分からない。
すぐ読み終わってしまって、楽しみが持続しなくてもったいないからかもしれない。
まさか私は子どもの頃から費用対効果を考えていたのだろうか。全然かわいくない子どもである。

さすがにそれはないけれど、案外それに近いことは考えていたかもしれない。
やはりどうしても小説の方が時間をかけて読むことになるので、楽しみが続く。だから小説を選んでいるだけかもしれない。
なにせマンガが嫌いなわけでは決してないのだから。
その証拠に私の子どもの頃のヒーローはジャンプの主人公だ。

彼との出会いは、小学校低学年の頃だったと思う。
祖父母の家で見ていた夏休みこどもアニメで、初めて彼を知った。

私が夏休みに長期で祖父母の家に行くと、祖父はよく夕方に散歩に連れて行ってくれた。
近所に本屋さんがあって(今考えればあれはブックオフだっただろうか)、そこに行くのがお決まりのコースだった。
そこで私はこどもアニメで見た彼の姿を見つける。
いつも二冊ほど買ってもらって、どんどんコミックスを揃えていったのだった。

彼は小学校の先生だった。それもめちゃくちゃ頼りになる先生。
いや、普段は頼りにならない。給料日前は給食だけで過ごし、休日はどっかの店前に置いてある見本食を勝手に食べたりする(もはや犯罪である)。
年中黒スーツ。
これで分かる方いらっしゃるでしょうか。ここまでで分かった方、同志さんですね!

そう、左手に鬼の手を持つ、「ぬ~べ~」こと鵺野鳴介。
小学生だった私はぬ~べ~みたいな先生に憧れた。

どうでもいいことだけど、今キーボードの「~」がなぜか壊れていて利かず、ぬ~べ~って入れるのにいちいち「から」って打って変換してる(ホントにどうでもいい)。

子ども心に、あんな先生が担任だったらなぁ、なんて密かに思っていた。
あんなに生徒想いの先生いないよ!っていうか、現実にあんな恐ろしい妖怪が次々に出てくる学校があったら、それこそ嫌だ。こわい。

怖すぎて今でも読みたくない話もある。
小学校高学年で、買って一回読んだきり、怖すぎてそれから一度もきちんと読んでない話。
確か、郷子がメインのストーリーで、人形が手足取りに来るやつだったかな。さすがに一回しか読んでいないと記憶が曖昧。
他にも郷子メインの兵隊さんのやつも怖かった……。そう考えると郷子、怖い思いしすぎだろ。
とはいえ、結局最後はぬ~べ~がかっこよく助けてくれるわけです。

私も助けられたい、と何度思ったか。
いや、実際には怖がりなんで霊とか妖怪とか無理です。こわいです。
なので、そういう霊現象には、最初から出会いたくありません(なら助けられないだろう)。

でもとにかく自分が大怪我を負っても、生徒を守り抜く先生が本当にかっこよく、頼りがいのある大人に見えた。

生徒の成長のために、若干妖怪を泳がせておいたり(え)、最後に教訓めいたものを言ってくれるのも、とても25歳とは思えない。
この人、悟り開いてる。

だからって、このセリフが座右の銘です!というようなものはない。
彼のその「人としての佇まい」が好きなのである。
生き方というかね。

成長するに従って、途中、玉藻(ライバルの美形妖狐:玉藻京介)に浮気しつつも、ぬ~べ~のことは心で慕い続けていた私。
その後、少し変な方面にもハマったのは、別の話。

ついに憧れすぎて、大学生の頃に塾講師になった!一瞬だけだったけど。

あの頃、「先生」と呼ばれる人の気持ちが少しだけ、ほんの少しだけ分かった気がする。
子どもたちのために、必死に準備して自分の教えられることは全部伝えようと思った。
でもやっぱりあんな悟りの境地みたいなところまでは到底いけない。

子どもの頃は生徒目線で「こんな先生がいたらいいな」と思っていたのが、いつの間にかぬ~べ~が目指す大人になっていた。

子どもの頃は、25歳ってすごく大人なんだと思っていた。
事実、ぬ~べ~はすごく立派な大人だった。
大人になったら、自分の気持ちなんて簡単にコントロールして、人への思いやりを常に持てるんだと思っていた。
んなわけない。

私はぬ~べ~の年に近づくにつれ、ぬ~べ~の人間性の高さに慄いた。

大学を卒業し、社会人になって四年目(え、計算合ってる?一応ストレートです)。
私はついに25歳になった。
25歳の私は、当然そんな聖人君子にはなれていなかった。

いや、高校二年生ぐらいで、薄々思ってたんですよ。
私全然、新一や蘭みたいになれてないって(突然のコナン)。あの人たち、大人すぎやしません?
まぁでもまだ子どもだしってことで、一応納得させていた(無理やり)。

結局、約30年生きてきて、全巻揃っているマンガは『地獄先生ぬ~べ~』だけだ。しかも2セット。コミックス版と文庫版。
文庫版は大学生の頃に大人買いした。ちなみにアニメのDVD-BOXも大人になってから買った。
今でもたまに自分の中でブームが巻き起こるんですよ。数年に一回ぐらいだけど。

そして30歳を目前にした今。
再び少しブームがおとずれている。
ぬ~べ~の年に追いつき、追い越してしまった私は、やっぱりぬ~べ~の人間性に追いつくどころか、近づくこともできていない。

気分にむらはあるし、時おり不安定になるし、瑣末なことで苛立ってしまうときもある。
30歳なんて世間からみれば、まだまだなのかもしれない。
それでも「こういう大人でありたい」という想いだけは、しっかり持っていたいと思う。

子どもの頃のヒーローは、私の中で目指す人に変わった。

私はどれほど、彼に近づけたのだろうか。

もう何年も読んでいなかったけれど、引っ越し先にはちゃんといつも持ってきている『地獄先生ぬ~べ~』。
今は亡き祖父に、そのほとんどを買ってもらった思い出のコミックス版。

さぁ久々に読み返して、初心を取り戻そうか。

※お題企画「自分を構成する5つのマンガ」に参加しているくせに、1つしかなくてすみません。なにぶんあまりマンガを知らないもので……許してくださいまし。
でも語りたかったので、ここまで読んで頂いたみなさま、本当にありがとうございました!

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