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もちもちのカプレーゼ

年下なんだけど“マザー”ってよんでる友達がいる。

広い海のようなこころをもっていて、すぐカッカしてしまう私になんでも「そうなんだ、そうなんだ」って1回私が落ち着くまで話を聞いてくれたりする貴重な友達。

あとすごく料理が上手で、料理することがストレス発散だったり自分が作ったごはんを他人が喜んで食べてるすがたに幸福度が高まるタイプ。うってかわってわたしは最低限の料理はできるけど、お腹が空くから仕方なく料理してる…程度。毎回作ってもらう料理のクオリティが高くて、美味しくて、マザーの料理を食べるたびに幸せになってる。


ーー実家から大きいトマトが届いた。

従兄弟がトマト農家で、ブランドトマトを作ってる。それを「大きいでしょ、」と母が送ってくれて、宅急便のダンボールを開けた時に新鮮なトマトの香りをかいで私はこの美味しそうなトマトを誰かと食べたいな〜と思ったのだった。

料理のうまい、友達の“マザー”は近くに住んでいて、たまたまこの日おうちでごはんを一緒に食べようよって話をしてた。ちょうどよかった!一緒にこのトマト食べよう。

ちょうどマザーが「海鮮とトマトのスープパスタ」を作ってくれるという話だったので、イタリアンっぽくカプレーゼでも作ってみるか!という気持ちになった。…この料理が苦手、嫌いなわたしが。しかもカプレーゼっていったらまずモッツァレラチーズがいるし、オリーブオイルとか持ってないよ~と思いながらスーパーに走った。モッツァレラチーズもオリーブオイルも一番安いやつだったけど、これから出来上がるカプレーゼに胸をおどらせる。

マザーがうちに食材を買ってもってきてくれて、いざ料理がはじまると、

「ん?どうしたん?」

とマザーと肩を並べてキッチンに立つ私を彼女は不思議そうに見た。だって彼女がいつも料理をふるまってくれるとき、私は邪魔にならないようにすみっこでTVをみるなどし、ぶつぶつと独り言を言っているからだ。

「いや、実家からトマト送られてきてさ〜。すごい美味しそうだからマザーと食べたくて。今日はわたしも、ちょっと料理する」

私がそう言うと、「へんなのwwまあいいけど、邪魔すんなよ」とマザーはニヤニヤしていた。結局トマトとまんまるくてもちもちの安いモッツァレラチーズはマザーが切ってくれた。

あんまり使ったことがないオリーブオイルにレモン汁を少し入れて、粗挽き黒胡椒と塩を適当に入れて、乾燥したバジルとかも気取って入れてみた。すきとおったちょっとダークな黄色いとろとろしたドレッシングができたので、マザーが切ってくれたトマトとモッツァレラチーズの上にゆっくりかけた。

初めて料理って楽しいかも…って思った瞬間だった。

春が夏を連れてきてるような夕暮れに、YouTubeでカントリー・ロードを流しながら、肩をゆらしてパスタができあがる前にカプレーゼをつまむ。

料理が好きな人って、いつもこんな幸福を感じながら料理をしてるのかなー。

一緒に食べて楽しい姿を思い浮かべながら、わたしはスープパスタができあがるのをいまか今かと待つ。ぬるい風が我が家の晩餐の香りを運んで、だれかに幸せがおすそ分けできてたらいいなーなんて思ったりもした。

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