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フグ田ナマガツオ
2023年8月6日 12:30
壁一面に時計のある締め切った工房。そこが親父の仕事場だった。親父は時計職人だった。齢はもう100を超えている。朝は6時に目を覚まし、7時に工房に入って、18時ぴったりに工房から出てくる。そのルーティーンが崩れたことはほとんどない。まるで時計のような人間だった。 親父は気に入った客にしか時計を売らない。作った時計は娘みたいなものだから、半端な奴にはやれないのだと言っていた。だから親父の工房にはい
2023年3月12日 23:40
屋根裏部屋で見つけた懐中時計はすっかり古ぼけていて、蓋はガバガバだし、どの針も微動だにしない。蓋の表面は少し錆びていて、ザラザラとした感触がある。何やら文字が書かれているのは分かるのだが、読み方が分からない。もうかれこれ10時間以上は調べているのだが、現存する言語に当てはまりそうなものは見あたらない。だとすると、ここに書かれているのはすでに世界から失われた言語で、この文字を読むと金銀財宝を隠