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140字小説

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140字以内で書く超短編。
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#恋愛

【140字小説】静脈と紫陽花

送られてきた紫陽花の静脈のような色が綺麗で、暫く見蕩れていた。
添えられたカードには見覚えのある彼女の字。
懐かしい記憶には雨音が伴って、二人で傘の下歩いた景色を想起させた。
これを僕への贈り物として選んだ彼女は、おそらく知っている。
もう花の色は変わってしまったことを。
ゴミ箱が揺れる。

【140字小説】独占欲

先に気になっていると言えば、貴女は優しいから諦めてくれる。
そして別れたあとも気を使って、距離を置いていてくれる。
酷いことをしている自覚はあるけれど、他に思いつかないのだ。
密かに人気のある貴女を、誰にも取られない方法なんて。

【140字小説】ショートカット

ショートカットが好きだって貴方が言ったから、私の髪は1年短い。
だけど今、貴方の隣を歩く子の髪は長く伸びている。
多分好みが変わったわけじゃない。
考えればすぐにわかる話だ。
好みを聞かれたその時期の、その子がショートだっただけじゃない。