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The Long Game あるサラリーマンたちのランチ①

午後12時。

陽当たりいい窓際にはいつもの彼らが座っている。

松岡くんと佐藤くんはこのあたりのオフィスのサラリーマンでおそらくは20代後半くらいの同期だ。

ここは喫茶『ファニング』で私はマスター。彼らは大切な常連さんというわけ。

二人とも仕事熱心な好青年なので、私は彼らが語り合うのを聞くとはなしに聞くのがとても楽しみなのだ。

なかでも二人が読んだ本について語り合うのを聞くのはとても勉強になるし、私も選書の参考にさせてもらっていたりする。

今日もそんな日になるみたい。

松岡:そういや、ロングゲーム、読んだよ。

佐藤:お、早いな。どうだった?

松岡:正直、きつかったー。

佐藤:なに、つまんなかった?

松岡:いやそうじゃなくって、家族にも友達にも佐藤にもミーハー飽き性認定されてる俺にとっては、全部の章でグサグサ刺されてる気分だわ。

佐藤:あー、そっちな。確かに松岡には忍耐のにの字もないもんな。

松岡:佐藤からの悪意をひしひし感じたわ。

佐藤:悪意なんて20%くらいしかないって。

松岡:わりとあんじゃん。

佐藤:でもさ、なるほどーって思うとこもあっただろ?

松岡:そりゃあるよ。この本に書いてあるなんていうか失敗する人のマインド?的なのはまんま俺だったし。

佐藤:どんなだっけ?

松岡:色々とアイデアは浮かぶんだけど、すぐに成功する自分をイメージしちゃうから反応なかったり反発されたらすぐやめちゃうとか。

佐藤:あー、でもそれ、俺もだわ。

松岡:そうなの?今はさ、とにかくスマホ開けばキラキラ成功者の話がどんどん出てくるじゃん?しかもそんな苦労してませーんみたいな感じだし、自分もイケるんじゃね?ってなるよな。

佐藤:そうそう。でもさ、偉人とか天才とか言われてる人の話とかは結局努力と忍耐なんだよな。

松岡:わかってはいるんだけど、楽な方に流れるのが人間じゃん。てかそもそも俺、人生の目標とかないんだよね。

佐藤:俺もないけどさ、なんかこう目先の営業成績とか部門目標とかが小さい話だよなって思うわ。

松岡:それも大事だけどな。

佐藤:そうだけどさ、こういうの読むとなにかに夢中になりたいって思わない?

松岡:わかるわかる!まずはここに書いている質問とかちゃんと考える時間作らないとだよな。

佐藤:それな!あ、そのことで面白いなぁって思ったことがあったんだけどさ。

松岡:なになに?

佐藤:限りある時間の使い方って本読んだじゃん?あれって人生4000週間くらいしかないから、ちゃんと自分のための時間を作るために行きたくない予定は断ろうみたいなこと、書いてたじゃん?まぁ、最近の時間系の本にはだいたい書いてあることだけど。

松岡:確かに、あの本にも書いてたし、ロングゲームにも書いてたよな。

佐藤:そう、それなんだよ。限りある時間の使い方は人生は短いって本でロングゲームでは人生は長いから長期戦略でいこうって本だからある意味では逆のことを主張しているのにどっちも日々の余白を作ることって書いているのが面白いなぁって思ってさ。

松岡:ほんとだ。めっちゃ不思議だな。ただでさえあれこれ考えたくないのに忙しいと余計にイヤになるもんなぁ。余白か。週末の課長との飲み会、断るか。

佐藤:まさかのシンクロ!俺もそうしよかなって思ってた!

松岡:さすがは同期だな。あの会、まじでいいことなしだもんな。課長の愚痴会に行ってる時間なんてねぇっての。

佐藤:ほんとだよ。その次の週の部長とのバーベキューは楽しみだけどな。

松岡:まじでそれ!部長の話は勉強になるし、こう、いっつもやる気になることを言ってくれるんだよな。

佐藤:この本の質問の尊敬する人物は?って質問はすぐに部長の顔が浮かんだもん。

松岡:わかるなぁ。部長って偉そうにすることもないし、常に成長しようってスタンスだし俺らからも学ばせてくれとか言ってくれるしまじで尊敬するわ。

佐藤:俺らの身近にそんな人がいるってことに改めて気が付けてよかったよな。とりあえずは部長みたいな人間になるって目標持って長期戦略を練ってみますか。

松岡:だな。ロングゲーム、勝ってやろうぜ。うし、そうと決まれば仕事だ仕事!

佐藤:マスター、お勘定!

そう言って彼らは来た時よりも晴れやかに店を出ていった。

ロングゲーム、わたしも読んでみようと思います。

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