さえずり(短編集)第2話
残り火(恋愛)
3月の肌寒く凍えた朝に虚ろな気分で毛布を手繰り寄せた。厚い遮光カーテンの隙間から差し込む光が白々と室内を照らし、傍らに眠る男の肌をゆっくりと染める。昨晩交わした熱はとうに冷め、再び彼の体温を求める気も起こらないまま、私は毛布の頼りない温もりに縋りつき、もう一度眠りの中に逃げ込もうとした。どこかでキジバトが鳴いている。それほど田舎でもないのに、どこで鳴いているのだろう。
長閑な声に耳を澄ませ目を閉じても、一度冴えてしまった頭はあの蕩けるような微睡を運んでは