鳥尾巻

三歩歩くと全てが忘却の彼方に消え去る愉快なとりあたま。 良い事も悪い事も綺麗サッパリ忘…

鳥尾巻

三歩歩くと全てが忘却の彼方に消え去る愉快なとりあたま。 良い事も悪い事も綺麗サッパリ忘れて気楽に生きている。 チャームポイントは頭の三本のアンテナ。さあ、明日はどっちだ。

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  • さえずり(短編集)

    2000文字前後のショートショートを集めた短編集です。 現代ドラマ、恋愛、ホラー、SF、ファンタジーなど、様々なジャンルを収めています。 不定期更新です。

  • フォトドローイングまとめ

    写真にイラストを描いたフォトドローイングをあつめました

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さえずり(短編集)第1話

屋上の狙撃手  教室を抜け出して学校の屋上に出た。強い風がスカートを巻き上げ、乱れる髪を押さえながら見上げた空は、憎らしいほどに青く澄み渡っていた。  あの教師の授業には出たくない。幸い私の席は廊下側の一番後ろなので、出席だけ取って空いていたドアの隙間からこっそり廊下に出た。他に行く場所が思いつかず、学校のある時間に制服で外を歩けば人目を引いてしまうから、屋上はサボるのに最適だといつも思っていた。  不真面目なくせに悪い生徒のレッテルを貼られたくない自分の小心さが少しダサ

    • さえずり(短編集)第10話

      反転する世界(ファンタジー)  コーティングされた世界を生きるボクたちは、耳触りの良い言葉と、お行儀のよい態度をまず最初に教えられる。  嘘はつかない。誰かを傷つけない。自分のことは自分で。悪い事をしたら謝る。みんなとなかよく。どれもこれもシンプルで、大切なこと。  ありがとう。どういたしまして。ごめんなさい。だいじょうぶ。きにしないで。  そうは言っても、大きくなれば、糖衣の奥から苦い薬が滲み出すように、物事はどんどん複雑になるものだ。    高校からの帰り道、ボクは

      • さえずり(短編集)第9話

        Garden(SF)  おれは今日も穴を掘る。おれはあんまり頭がよくない。でも博士たちはいつもおれをほめてくれる。  きみはジマンのガーデナーだって。ガーデナーっていうのは、庭を作ったり、草や花を育てるのがうまいヤツってことだ。  博士たちは頭がいい。なんでもしってる。だからきっと、おれは腕のいいガーデナーなんだ。  おれが生まれたころ、世界にエキビョウが流行った。大人たちが死んで行き場のなくなった子どもを集めた博士たちは、みんなにご飯を食べさせ、きれいな服を着せて、勉強

        • さえずり(短編集)第8話

          かたつむり(恋愛)  ドアが閉じた。軋みの音すら立てず滑らかに。こうあるべきと決まっているような子供部屋。ペールブルーの扉。無垢な白い壁。  パステルカラーとお菓子の悪夢に閉じ込められた、甘やかなマヤカシの楽園。  僕らはそこで本能の壊れたケモノになる。    遠くから聞こえる祭囃子。彼女が僕の耳を塞いだら、それが合図。  余計な雑音は何も聞かなくていい。細い指が耳殻を掴み、暗い孔に潜り込む。貪るように唇を食む白い歯、気分の悪くなるような水音と、荒い呼吸音しか聞こえない。

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        さえずり(短編集)第1話

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        • さえずり(短編集)
          10本
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          12本

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          さえずり(短編集)第7話

          HAPPY BIRTHDAY(現代ファンタジー)  遠くなる過去に馬鹿げた願いを抱く。  明るく振る舞っても心が疲れ切って、擦り切れていて、もうどうしようもない。    玄関を開け、黒いジャケットを脱いでネクタイを外しシャツと一緒に投げ捨て、ズボンのベルトに手をかける。狭いアパートの廊下に点々と服の道ができていくが、どうせ誰も咎める者はいない一人暮らしだ。  シャワーを浴び濡れた体をおざなりに拭いて、パジャマを着る気力もないままベッドの上で膝を抱えた。  暗い部屋で昼間彼

          さえずり(短編集)第7話

          さえずり(短編集)第6話

          Mother(SF)  銀色の宙船Noahが大気圏に突入する。私達人類は安住の星を求め長い旅をしてきた。  ようやく適合する未開の星を見つけ、着陸しようとした矢先。老朽化した船は大気圏突入の衝撃に耐え切れず、機体の一部が損壊した。  私は艦長。船の乗組員を統べる存在。私には責任がある。私を先に逃がそうとする彼らに命令する。  総員速やかに脱出せよ。  地上での繁殖が可能なように、不老処置を施された肉体は若い姿を保っている。見た目は少女と変わらない私に、未来への希望を託

          さえずり(短編集)第6話

          さえずり(短編集)第5話

          孤月(伝奇) 孤月。 銀の光芒揺らめく紺青の川面に一葉の小舟。 暮方。 凪の水面に舳先の裂く水のさざめき。 曳き波の紋様が束の間に尾を引くばかり。 緘黙。 河岸の両に伸びる芒の陰に絶えぬ虫の音以外は――。    流れに任せ進む舟の上には一組の男女。  女は、舟の中ほどに座し、白皙の面をやや傾けて天を仰いでいた。年の頃は十九、二十。上等ではあるが地味な小袖に黒の帯。解れた髷を結い直しもせず、乱れた黒髪が妙に艶めかしく白い項にかかる。  月光が蒼白い面輪を冴え冴えと染め、

          さえずり(短編集)第5話

          さえずり(短編集)第4話

          見える言葉(童話)  そいつはボクのことを見てわらった。  花粉症がひどくて、ゴーグルみたいなメガネをしてたからかな。ボクが目がかゆいって言ったら、お父さんが買ってくれたんだ。フチが青くて目のまわりをぐるっと囲むかっこいいメガネだ。    その日は小学校でもいっぱいいじられて、ちょっとへこんでた帰りみちだった。花粉症なんて、だれでもなるのにさ。いつもはメガネしてないから、めずらしかったのもあるんだと思う。  先生がちゅういしてくれて、みんな「ごめんね」って言ってくれたけど、

          さえずり(短編集)第4話

          さえずり(短編集)第3話

          画鋲(ホラー)  夜ごと眠りに就いて短い死を迎え、朝の光に生を取り戻す。ひとときの眠りは、岸辺に打ち上げられた波が、広大無辺の彼方へと帰り、再び戻るようなものだ。  子供の頃、一緒に住んでいた祖父がそう言っていた。その時は噛み砕かない祖父の言葉は難しくてよく分からなかったが、今ならなんとなく理解出来る気がする。死と眠りはある意味同じようなものであり、朝に目覚めるのなら、それはまだこの世に帰ってやることがあるということらしい。  仕事を引退した祖父は、時々「あの世に逝ってくる

          さえずり(短編集)第3話

          さえずり(短編集)第2話

          残り火(恋愛)  3月の肌寒く凍えた朝に虚ろな気分で毛布を手繰り寄せた。厚い遮光カーテンの隙間から差し込む光が白々と室内を照らし、傍らに眠る男の肌をゆっくりと染める。昨晩交わした熱はとうに冷め、再び彼の体温を求める気も起こらないまま、私は毛布の頼りない温もりに縋りつき、もう一度眠りの中に逃げ込もうとした。どこかでキジバトが鳴いている。それほど田舎でもないのに、どこで鳴いているのだろう。  長閑な声に耳を澄ませ目を閉じても、一度冴えてしまった頭はあの蕩けるような微睡を運んでは

          さえずり(短編集)第2話

          春の便り

          春の便り

          エアメール

          エアメール

          +3

          落ちた花弁

          落ちた花弁

          +2
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          美しい食卓

          美しい食卓