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馬に乗らない馬好きによる「日本在来馬」まとめ

はじめに

この記事は以下の書籍およびWEBサイトを参考に書いたものである。

https://www.utp.or.jp/book/b589069.html
近藤誠司編『日本の馬 在来馬の過去・現在・未来』,東京大学出版会,2021年10月

現存する日本在来馬8種について体系的にまとめられた稀少な書籍。日本在来馬について詳細に学びたい人にとっては必読の一冊!

https://www.bajikyo.or.jp/native_horse_01.php
公益社団法人日本馬事協会『日本在来馬について』(2024年6月)

日本在来馬の血統登録や飼養頭数などのデータをとりまとめている。

https://www.bajibunka.jrao.ne.jp/zairaiba/index.html
公益財団法人馬事文化財団『日本の在来馬』(2024年6月)

馬好きの間では超有名!私も大ファンでグッズもたくさん持っている、おがわじゅりさんのかわいらしいイラストと共に、日本在来馬についてサクッと解説してくれている。

https://www.minnano-jouba.com/mame_chishiki02.html
みんなの乗馬『馬の豆知識 馬の種類(日本在来馬)』(2024年6月)

各在来馬の基本情報・特徴・歴史について、写真とともにわかりやすくまとまっている。
在来馬がそれぞれどんなお馬さんなのかを知りたい方や、調べ学習をしたい学生さんにも役立ちそう。

なお、各在来馬の詳細に関するWEBサイトについては記事内の該当箇所にリンクを張るので参照いただきたい。


「いずい」の正体

わが国の「馬好き」の世界は,主として競馬文化と馬術部文化により醸し出されてきているのが現状である.

近藤誠司編『日本の馬 在来馬の過去・現在・未来』,東京大学出版会,2021年10月,P192

あとがきに記されたこの一文にハッとした。
自他共に認める「馬好き」である私なのだが、実はこれまでどんな馬に関するコミュニティに身を置いても、なんとなしに違和感があった。
東北訛りで言うところの「いずい」*ともいうべき感覚。

*いずい:なんだか居心地がよくない、据わりが悪くて落ち着かない様。身体的感覚により近い所で感じるどうしようもない歯がゆさ。
例)歯が抜けそうで抜けない。服のタグが肌に当たってもぞもぞする。
※なお、地域や人によって使いどころや感覚が違うため標準語での表現が難しい類のものであり、いずいネイティブによる異論は認める。

最近「うまテラス」というオンラインサロンに入会し、何か馬に関わる活動ができないか模索し始めた。

そこで「馬業界ってある種閉鎖的・排他的なところがあって、もう内輪で世界が出来上がってる所に新参者が入ろうとしても疎外感を感じることってあるよね!」というあるあるを教えていただき、確かに自分でも過去にその経験があったので、「いずい」のはその馬業界独特の内輪文化のせいかな?なんて思ったりもしていた。
その「いずい」の正体が何なのか、先ほどの書籍の一文で見えた気がしたのだ。

私も馬が見たくて競馬中継を見たり、JRAのグッズを買ったりするし、初心者ながら乗馬クラブに所属していたこともあるし、旅先ではホーストレッキングを楽しんだりもする。
でも本当はそういう関わり方ではなくて、のんびりと馬を眺めながら馬のそばで馬に触れて、ただひたすらに馬と一緒に居るということが何よりも好きでたまらない。
なんなら「うま」という言葉を発するだけで幸せになれるタイプの人間(変態)だ。
「馬に乗らない馬好き」とでも言っておこうか。
いや、乗るけども、それがメインではない部類という意味で。

表向きは「競馬文化と馬術部文化の馬好き」に対して「馬に乗らない馬好き」はマイノリティ、ということになる。
コンパニオンアニマル(伴侶動物:互いに心通じ合う関係という意味合いを含むペット)的な関わり方が提供されている馬の施設は限られていて、馬と触れ合うためには自ずと競馬や乗馬を主とした場に出向くことが多くなる。
そういった場では「あー、いや。馬が見たくて競馬見るし、乗馬もやったりしますけど。本当はそういうことじゃなくて、ただ馬とのんびり一緒に過ごしたいだけで…」なんて大声では言いづらい。
そういった発言をしたところで、なんだか変な空気になってしまった経験もある。
だから、ちょっとした違和感を抱えつつも、そこは同じ「馬好き」同士なのだし、ほかに「居場所」もないので、とりあえずニコニコして合わせるのが常なのだ。

ただ「うまテラス」で“自分は馬と一緒に居たいだけの馬好きなんだ”という告白をしたところ、“実は私も…”という方が複数いらっしゃった。
ホースセラピーを体験しよう!という趣旨で“馬に乗らずに触れ合うイベント”を行ったときには、けっこうな集客があったという情報もいただいた。

》競馬や乗馬のように入場者数や会員数といった具体的な数値で表せないから顕在化しないだけで、潜在的な「馬に乗らない馬好き」は相当数いて、そこにコンパニオンアニマル的な関わり方を提供する施設やイベントの需要はあるのではないか。
》数値に表れていないものを見える化し、そういった施設を増やして維持するためには、やはり収益化できる必要があるよね。
》小さなイベントからでも始めて、需要がある分野だということを馬業界に訴えて行こうよ。

そんな議論がいま、広大なオンラインの片隅で繰り広げられている。

私も元々はそれこそサラブレッドに代表されるような“均整の取れた大きな体格の、一般の人がイメージするであろう馬らしい馬”がどちらかというと好きだった。
「うまテラス」に入会したことで、自宅でできる“馬活(うまかつ)”として馬に関する書籍を読み漁るうちに『日本の馬』に出逢った。
そして、“ただ馬と一緒に居たいだけの「馬に乗らない馬好き」の私は、もしかしたら日本の在来馬と相性が良いのでは?”と思い至ったのが、今回改めて在来馬についてまとめてみようと考えたきっかけである。

日本在来馬とは

4世紀頃(古墳時代)に大陸から持ち込まれたモンゴル在来馬系の馬が日本各地に広まり、用途や気候風土に応じてそれぞれの土地で飼養されてきた、日本固有の馬のこと。
2024年において現存する日本の在来馬は次の8種類。

  • 北海道和種(ほっかいどうわしゅ)

  • 木曽馬(きそうま)

  • 御崎馬(みさきうま)

  • 対州馬(たいしゅうば)

  • 野間馬(のまうま)

  • トカラ馬(とからうま)

  • 宮古馬(みやこうま)

  • 与那国馬(よなぐにうま)

日本在来馬比較表

日本在来馬のあゆみ

それぞれの地域の気候風土や文化に合わせて飼養されてきた日本各地の在来馬には、もちろんそれぞれの歴史・たどってきた道がある。
それを横断的に見てみると、そこには人の歴史に翻弄されてきたおおむね共通するストーリーも見えてくる。

かつて大陸から持ち込まれた馬の多くは「牧(まき)」と呼ばれる日本各地の国営牧場で飼養されていた。
そのうち比較的大きめの馬は軍馬として武家に供給され、小さい馬は荷役に使われたり、農家などに払い下げられたりするようになる。
しかし明治時代以降になると在来の軍馬は欧米列強に大きく劣るとされ、国をあげて外国産馬との交配を推奨し、法律によって在来の種雄馬は去勢することになり、在来馬の撲滅が図られる事態となった。
さらに時代はモータリゼーションへと移り変わり、第二次世界大戦後の自動車や農業用機械の庶民への普及に伴い、在来馬の交通手段や荷役・農業用の使役としての役割が失われ、姿を消していくこととなった。
そんな中にあって、一部の地域で細々と、でもしっかりと在来馬の特徴を残しながら命をつないできたのが、現存する日本在来馬となる。

日本在来馬のプロフィール帳

それぞれの在来馬についての基本情報・特徴・歴史については冒頭紹介したWEBサイトがよくまとめられているのでご覧いただければ十分かと思う。
在来馬を知ることも立派な支援の第一歩だ。
ここでは、それと合わせて在来馬の未来につながるその先の情報もお伝えできればと考え、インターネット上に散在する情報をかき集めてご紹介する。

  • 在来馬に実際に会いに行ってみたいけれど、どこに行けば会えるの?

  • 在来馬って乗れるの?

  • 寄付やボランティア活動などの支援をしたいのだけれど、どこに問い合わせたらいいの?

知ったら会いたくなった!在来馬のために何かしたくなった!そういった需要にお応えできれば嬉しい。

※馬と接する際には、管理者から提示されたルールを守ることが絶対条件!相手がいきものである以上、100%の安全は存在しない。「馬優先」を念頭に、馬との信頼関係を築きながら楽しく過ごしてほしい。

北海道和種(ほっかいどうわしゅ)

北海道和種。以下、ふるさとの位置と現存する毛色をイラストで示す。

🐴ふるさと
北海道南部。※冬でもミヤコザサを採食できる地域。
東北地方の南部馬(なんぶうま)が15世紀頃道南に移入し、駄載(荷物の運搬)用や武士の乗用として道央・道東に広まった。

🐴飼養頭数
1143頭(2023,(公社)日本馬事協会,保存団体報告値)

🐴体高(地面から肩までの高さ)
オス:127~130cm、メス:123~130cm
※公益社団法人日本馬事協会登録規定による。実寸はこれよりやや大きめだが、年々小型化傾向。

🐴体重
350~400kg

🐴乗る人の体重制限めやす
80kg ※施設によるため要問い合わせ

🐴毛色
栗毛・栃栗毛・鹿毛・黒鹿毛・青鹿毛とそれぞれの粕毛、芦毛、月毛、河原毛、佐目毛。青毛とその粕毛もいるが減少傾向。
鰻線(まんせん:原種に近い馬に見られる背中の一本線模様)があるものもいる。
粕毛(地の毛色に白毛が交じって全体的に白っぽく見える毛色)が50%近くを占める。月毛も多め。
※2019年現在、青毛と栗毛の種雄馬はいない。
※頭部・肢部に白徴(白い模様)があるものは(公社)日本馬事協会登録不可。

🐴保護指定
北海道文化遺産(2004)

🐴主な保存団体と活動
▶公益社団法人日本馬事協会
【本部】
〒104-0033 東京都中央区新川2丁目6-16 馬事畜産会館7F
TEL:03-3297-5626 FAX:03-3297-5628
E-mail:info@bajikyo.or.jp
【北海道事務所】 
〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条5丁目9-3 北海道獣医師会館2F
TEL:011-642-5554 FAX:011-642-5521

・血統登録、繁殖登録事業(1979)
※新規登録条件:両親とも登録済の北海道和種馬の間に生まれた馬。
・普及啓発事業

▶北海道和種馬保存協会
※公式サイトが長年更新されていないため、さっぽろまちづくり活動情報サポートサイトまちさぽの団体情報にリンク。
【本部】
〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条5丁目9-3 北海道獣医師会館3F
TEL:090-6269-7782 FAX:011-642-5521
E-mail:shirai-k@k4.dion.ne.jp

※道内8支部がそれぞれ独立予算で活動。
・共進会での優秀馬表彰
・ふれあい、講習会、ホースメッセ参加などのPR活動
側対歩*の美しさを競う「じみち美人コンテスト」開催 ※北海道新聞動画ニュースのYoutubeにリンク。
*側対歩:左前後肢⇔右前後肢と、同じ側の脚が同時に動く歩き方。人間に例えると、左手左足・右手右脚が一緒に出ている状態。
その他の馬の歩き方=歩法(ほほう)についてはこちらを参照。

https://jodhpurs.jp/contents/blog/20240308-26195/
ジョッパーズ『馬の歩き方、走り方の種類を学ぼう!』(2024年6月)
 

▶行政(北海道)
※北海道遺産一覧にリンク
・北海道遺産第2回選定「北海道の馬文化(ばん馬、日高のサラブレッド、北海道和種馬など)」

🐴特色
◎ほどよい体高
◎人とコミュニケーションがとりやすい性格
◎上下動の少ない側対歩ができるものが多い
◎「だんづけ」という古来からの駄載(ださい:荷物を運搬する)技術がある

🐴現在または今後期待される活躍の場
◎ホーストレッキング(乗馬での野山散策)
◎ホースセラピー(ふれあいを通じた心身の充実)
◎流鏑馬(やぶさめ)競技
◎笹の下草刈り
◎災害救助(被災地への物資輸送)

🐴保存団体が望むこと
△生産者が固定化・高齢化していて、新規参入者が少ないので、後継者が増えてほしい。
△経済的価値の見出だせる新たな活躍の場を作りたい。

🐴北海道和種に会える場所
※必ず会えるとは限らないため、各施設へは事前に問い合わせを。

【道南地域】
▶函館どさんこファーム(函館市)
〒041-0834 北海道函館市東山町180-14
TEL:0138-30-1035 FAX:0138-30-1036
問い合わせフォームはこちら

はじめての観光体験乗馬から上級者のトレッキング、流鏑馬レッスンまで行うどさんこ馬を中心とした乗馬クラブ。預託馬制度もあり、馬の販売も行っている。年末年始ほか不定休。乗馬体験は要予約(やむを得ず当日の場合は要問い合わせ)。

【道央地域】
▶ホースガーデンMURANAKA(恵庭市)
〒061-1421 北海道恵庭市牧場152 村中牧場内
TEL:090-3890-1171
問い合わせフォームはこちら

札幌や新千歳空港の近くでありながら北海道の大自然を満喫できる、外乗専門の牧場。年中無休、完全予約制。新千歳空港・JR恵庭駅より送迎有り。

【道東地域】
▶鶴居どさんこ牧場(阿寒郡鶴居村)
〒085-1262 北海道阿寒郡鶴居村字久著呂71-1
TEL:0154-64-2931 FAX:0154-64-7468
問い合わせフォームはこちら

年間を通して昼夜放牧しているどさんこ馬で釧路湿原国立公園などをホーストレッキングできる乗馬施設。センターハウスには喫茶軽食コーナーや宿泊設備を備え、どさんこ馬を眺めながらのんびりした時間が過ごせる。

▶D-base(河西郡芽室町)
〒082-0001 北海道河西郡芽室町平和西14線 (柏葉農場東向、北平和福祉会館すぐ)
TEL:090-6873-5261 FAX:011-351-2351
問い合わせフォームはこちら
E-mail:d-base@dosankobase.com

所属馬の9割がどさんこベースの乗馬クラブ。乗馬サークルや乗馬クラブのイベント向けにホースマンシップ講習も出張で行う。預託馬・預託調教制度も。木曜定休。

【道外】
▶和種馬ホースランド(大阪府)
〒582-0027 大阪府柏原市円明町642-1​
TEL:072-979-7337
問い合わせフォームはこちら

どさんこ馬を中心に乗馬体験やトレッキングができる施設。和装でのコスプレ乗馬体験コースも。月曜定休(祝日の場合は翌火曜)。

▶ホワイトストーンランチ(宮城県)
〒989-0851 宮城県刈田郡蔵王町曲竹上欠山1-67
※ナビの施設名検索では別の場所が案内されるので注意!検索は「ピッツアハウス・トムソーヤ( 富夢想野 )」「宮城県刈田郡蔵王町曲竹道路西61」「セブンイレブン蔵王遠刈田店」のいずれかで。
TEL:0224-33-3197 FAX:0224-33-2548
問い合わせフォームはこちら
E-mail:ws.ranch@khaki.plala.or.jp

どさんこ馬を中心としたおとなしい馬と経験豊富なスタッフが初心者から上級者まで一人ひとりのレベルに合った「馬旅」を提供する観光牧場。馬以外にも犬、猫、烏骨鶏がいるほか、運が良ければ野生のリスやキツネにも出会えるかも?馬を飼ってみたい、移住したいという方の相談受付も。車で15分の距離にある「ZAOくるみの森」との並行営業となっている(2024年6月)ため、希望日にどちらの施設で乗れるか確認が必要。前日までの予約推奨。最寄り駅・近隣施設からの送迎有り。

▶公益財団法人馬事文化財団 ポニーセンター(神奈川県)
〒231-0853 神奈川県横浜市中区根岸台1-3
TEL:045-662-8105
月曜定休(祝日の場合は翌平日)
※休園中、2028~2029年頃再開予定。

【動物園等】
▶那須どうぶつ王国 王国ファーム(栃木県)
〒329-3223 栃木県那須郡那須町大島1042-1
TEL:0287-77-1110
問い合わせフォームはこちら
水曜定休(春休み・GW・夏季期間・祝日は営業)

▶狭山市立智光山公園 こども動物園(埼玉県)
〒350-1335 埼玉県狭山市柏原864-1
TEL:04-2953-9779 FAX:04-2953-9780
問い合わせフォームはこちら
月曜定休(祝日は開園)、年末年始休園

▶多摩動物公園 アジア園(東京都)
〒191-0042 東京都日野市程久保7-1-1
TEL:042-591-1611
水曜定休(祝日・都民の日の場合は翌木曜)

🐴補足情報
北海道和種の別名、道産子(どさんこ)。
ばんえい競馬の「輓馬(ばんば)」と混同されることも多いが、全くの別モノ!(馬好きの私も恥ずかしながら混同していた。)輓馬の先祖は外国産の大型馬なので体高180cm・体重1tにもなる。

https://pacalla.com/article/article-1244/
Pacalla『ばん馬とどさんこ(北海道和種)のちがい』(2018年5月)

🐴現地取材記事

http://www.chie-project.jp/011/no04.html
日本列島 知恵プロジェクト『にっぽん、馬紀行♯4森をつくる馬、ドサンコ―北海道静内―』,高草操,2012年6月

木曽馬(きそうま)

木曽馬

🐴ふるさと
長野県木曽地域の中部山岳地帯。
6世紀頃に渡来したモンゴル在来馬が、交通手段として、また米の代わりの上納品や自由売買による資金源として利用された。

🐴飼養頭数
128頭(2023,(公社)日本馬事協会,保存団体報告値)

🐴体高
125~143cm、平均132cm

🐴体重
350~420kg

🐴乗る人の体重制限めやす
100kg ※施設によるため要問い合わせ

🐴毛色
鹿毛(全体の85%)、栗毛、河原毛。
鰻線がよく見られる。

🐴保護指定
長野県天然記念物(1983) ※対象:木曽郡内の優良馬

🐴主な保存団体と活動
▶公益社団法人日本馬事協会
・血統登録、繁殖登録事業
》原産地での登録条件:木曽馬同士の交配によるもので、過去3代にわたり他の品種が混血していない馬。
》原産地以外での登録条件:保存会が把握している+両親が木曽馬として登録済+父馬が種畜証明を得ている+実馬審査で一定の基準を満たした馬。
※北海道から九州の全国各地で飼養されているため、血統書を持てない“自称・木曽馬”も多く存在する。
・普及啓発事業

▶木曽馬保存会(1969) ※JRAの援助あり
※公式サイトが長年更新されていないため、木曽馬の里にリンク。
〒397-0301 長野県木曽郡木曽町開田高原末川5596-1 木曽馬の里木曽馬乗馬センター内
TEL:0264-42-3085 FAX:0264-42-3086
・保存会総会の開催
・飼育者に対する助成
・木曽馬に関する広報、啓蒙活動
・木曽馬及び管内一般馬の登録業務委託
・種雄馬の確保及び配置(種雄馬選定委員会)
・木曽馬の現状把握調査実施
・情報提供(飼育頭数・現況・販売情報など)
・日本在来馬保存活用対策協議会参加
・長野県天然記念物指定馬の馬体検査

▶行政(長野県、木曽町、開田村)
※長野県の文化財一覧にリンク
・文化財(県指定天然記念物)指定

🐴特色
◎安定して乗るのにほどよい体高
◎比較的おだやかな性格(気まぐれなので、相手によっては言うことを聞かないことも…)
◎軍用に混血を繰り返したため体格にバリエーションがあり、良い意味で使用用途が広くなった

🐴現在または今後期待される活躍の場
◎ホーストレッキング
◎ホースセラピー
◎御神馬(神事用)
◎馬耕などの牽引作業(小学校の実習用田んぼや県内外の農家)

🐴保存団体が望むこと
△生産者が高齢化し後継者が不足しているので、若手移住者を継続して育成したい。
△地域の人々に、地域おこしの観光資源として再認識してもらいたい。
△純系の“木曽馬らしさ”を維持しながら、「大人でも長時間乗れる大きさが欲しい」という要望に応えたい。

🐴木曽馬に会える場所
※必ず会えるとは限らないため、各施設へは事前に問い合わせを。

【長野県内】
▶木曽馬の里乗馬センター
〒397-0301 長野県木曽郡木曽町開田高原末川5596-1
※ナビの施設名検索では別の場所が案内されるので注意!検索は「木曽馬の里おみやげお食事センター」「開田高原観光案内所」のいずれかで。
TEL:0264-42-3085 FAX:0264-42-3086
問い合わせフォームはこちら

木曽町開田高原にあり、保存会の所在地でもある。保存繁殖・乗馬・馬車馬として純系の木曽馬の多くがここに集められている。見る、乗る、ホースセラピーを受ける、学生を対象とした体験学習、各種イベントやCMなどへの貸し馬といった幅広い対応が可能。年中無休。

▶白樺リゾート池の平ファミリーランド
〒391-0392 長野県北佐久郡立科町芦田八ケ野1596
TEL:0266-68-2100 FAX:0267-55-6369

総合レイクリゾート内のテーマパーク。「わくわくどうぶつ王国」の一角に木曽馬の乗馬体験ができるコーナーがあるとのこと。冬季休業。

【県外】
▶ひるがのホープロッジ・ひるがの高原木曽馬牧場(岐阜県)
〒501-5301 岐阜県郡上市高鷲町ひるがの4670-3654
TEL:080-5113-2339
外乗予約はこちら
宿泊予約はこちら
問い合わせはこちら

静かな高原の林の中にある、ペット同伴可能な宿泊施設を備えた観光乗馬牧場。「乗馬と馬のお世話体験パック」としてホースセラピー体験も可能。近隣では郡上八幡・飛騨高山・白川郷観光も併せて楽しめる。平日不定休のため、2日前までに予約を。

【動物園等】
▶よこはま動物園 ズーラシア(神奈川県)
〒241-0001 横浜市旭区上白根町1175-1
TEL:045-959-1000
火曜定休(祝日の場合は翌水曜)、臨時開園あり、年末年始休園

▶富山市ファミリーパーク(富山県)
〒930-0151 富山市古沢254
TEL:076-434-1234 FAX:076-434-1208
問い合わせフォームはこちら
Email:info2020@toyama-familypark.jp

当日受付で3歳~大人まで引き馬体験が可能(火曜除く)。エサやり体験も(無くなり次第終了)。3月1日~14日、12/28~翌1月4日は休園。

▶長野市茶臼山動物園 木曽馬・ポニー舎(長野県)
〒388-8016 長野市篠ノ井有旅570-1
TEL:026-293-5167
12月~2月の月曜定休(祝日の場合は翌火曜)、12月29日~31日は休園。

▶鞍ヶ池公園 動物園内 観光牧場(愛知県)
〒471-0002 愛知県豊田市矢並町法沢713-2
TEL:0565-80-5310

▶サファリリゾート 姫路セントラルパーク チャイルズファームふれあいの国(兵庫県)
〒679-2121 兵庫県姫路市豊富町神谷1434
TEL:079-264-1611
エサやり体験可能。営業日についてはこちら

▶北九州市立総合農事センター 花農丘公園 動物ふれあい広場(福岡県)
〒802-0822 福岡県北九州市小倉南区横代東町1丁目6-1
TEL:093-961-6045
年末年始休園

🐴補足情報
飼育数の増減や混血を繰り返したため純血性が失われる危機にあったが、戦後の天覧や上野動物園への寄贈で話題になったことで復元の気運が高まった。一生懸命探したところ、神社の御神馬として去勢を免れた木曽馬が発見され、その馬を元に再興したものが現在の純血木曽馬とされている。

🐴現地取材記事

http://www.chie-project.jp/011/no09.html
日本列島 知恵プロジェクト『にっぽん、馬紀行♯9木曽馬なくして木曽の歴史は語れない―長野県上松町開田村―』,高草操,2013年5月

御崎馬(みさきうま)

御崎馬

🐴ふるさと
宮崎県串間市の最南端に位置する都井岬(といみさき)。
江戸時代初期に高鍋藩の藩営牧場「御崎牧」が設置されて以来、周年放牧・自然繁殖による半野生状態で現在に至る。

🐴飼養頭数
92頭(2023,(公社)日本馬事協会,保存団体報告値)

🐴体高
約130cm

🐴体重
200~300kg

🐴乗る人の体重制限めやす
半野生馬のため接触禁止。

🐴毛色
鹿毛、黒鹿毛が多い。その他、明るい鹿毛や赤みを帯びた鹿毛、灰色に近い薄墨毛、青毛。
鰻線がはっきりしているものが多い。

🐴保護指定
国指定天然記念物(1953) ※「岬馬およびその繁殖地」として、馬では唯一の指定。

🐴主な保存団体と活動
▶公益社団法人日本馬事協会
・血統登録、繁殖登録事業
・普及啓発事業

▶都井岬馬保護対策協力会
※公式サイトがないため、宮崎県教育研修センター 宮崎県教育情報通信ネットワーク 教育ネットひむか みやざきひむか学ネット『御崎馬を守る人々』にリンク。
〒888-0001 宮崎県串間市大字大納42-7 都井岬放牧組合事務局内
TEL:0987-76-1244 FAX:0987-76-1244
・「駒追い」と呼ばれる寄生虫駆除/健康診断/検疫と遺伝子解析のための採血/個体識別のための烙印作業など、御崎馬の管理全般。2011年に馬伝染性貧血症の陽性馬が確認され12頭が自主淘汰して以降「駒追い」は特に重要な作業となっている。

▶行政(宮崎県、串間市)
※串間市役所『串間市の楽しみ方』へリンク。
・観光コースの紹介
・「駒追い」行事への参加者募集案内

🐴特色
◎気軽に会いに行ける半野生馬

🐴現在または今後期待される活躍の場
◎半野生馬の生態観察、教育
◎ガイドツアー
◎エコツーリズム
◎「駒追い」体験(年1回:妊娠が終わってオスが落ち着き事故リスクが下がる秋頃)

🐴保存団体が望むこと
△都井岬放牧組合員が高齢化して存続の危機にあるので、後継者が欲しい。
△餌付けによる悪馴れ、接触事故や交通事故、ゴミによる馬体の負傷が発生した経緯があるため、観光客にはつかず離れずの程よい距離感を保ってほしい。
△保護活動によって増えたのがオス馬に偏っていたため、今後は雌雄の個体数バランスを議論していきたい。
△単に給餌や医療介入を手厚くするだけでなく、半野生状態を保つためには草地の造成や手入れなどの環境的バックアップをしていきたい。

🐴御崎馬に会えるガイドツアー
※半野生馬のため、情報ゼロで行っても全く会えないことも。事前の問い合わせを推奨。馬のいる場所や各ガイドの設定コースにより、集合場所は「都井岬観光交流館パカラパカ」「小松ヶ丘広場」のいずれかを案内。

【観光案内所】
▶都井岬観光交流館PAKALAPAKA(パカラパカ)
〒888-0221 宮崎県串間市大納42-3
TEL:0987-27-3477 FAX:0987-27-3505
E-mail:toimisaki@pakalapaka.jp

目の前に都井岬の大パノラマが広がる、屋内型の休憩スペース。24時間開放のバリアフリートイレや授乳室も完備。軽食コーナーもあり、特製フード&ドリンクや地場産品の販売も。まずはこちらに問い合わせて、以下のガイドツアーを紹介してもらうことも可能。火曜定休。

【ガイドツアー実施団体】
▶一般社団法人串間市観光物産協会 野生馬ガイド
〒888-0001  宮崎県串間市大字西方5740-1 矢野不動産ビル2階1号室
TEL:090-4588-1133
問い合わせフォームはこちら
E-mail:kusi-kan-guide@gaea.ocn.ne.jp

最少催行人数2名。予約優先だが、当日受付も可能。ちょっと話を聞きたい方は30分コース、ゆっくりしっかり知りたい方は60分または90分コースがオススメ。市内宿泊施設利用者への割引サービスも有り。火曜定休。

▶おぷしょん
〒888-0008 宮崎県串間市大字本城5951-2
TEL:090-6386-3738
公式LINEはこちら
E-mail:option.happy.21@gmail.com

串間市観光物産協会野生馬ガイドから独立し、プロとして野生馬ガイド事業を行う。小学生以上1名~5名までの少人数制で、事前問い合わせが必要。60~90分の散策コースや馬を見ながらのトレッキングコースがあり、よりじっくり知識や経験を深めたい方にオススメ。土日祝定休、利用可能日は公式サイトのカレンダーでチェックを。

🐴補足情報
多くは春~夏に山側の草地で種雄馬+複数の雌馬+仔馬から成る「ハレム」という群れを作る。秋~冬は小群に分かれて海寄りの林に移動して過ごす。
広い岬内を自由に行動しているため、必ずしもガイドを利用せずともタイミングさえ合えば馬に会うこともできる。「馬優先」を心がけ、ルールを守って楽しんでほしい。

🐴現地取材記事

http://www.chie-project.jp/011/no14.html
日本列島 知恵プロジェクト『にっぽん、馬紀行♯14野生馬として生きる御崎馬―宮崎県串間市都井岬―』,高草操,2014年8月

対州馬(たいしゅうば)

対州馬。たいしゅううまとも呼ばれることがある。

🐴ふるさと
対馬島(つしまじま/つしまとう)。現在は島全体が長崎県対馬市。飛行機やフェリーの直行便は福岡県との間が多い。南北82km、東西18kmの細長い島。
朝鮮半島から渡来した説が有力だが、起源は不明。8世紀に聖武天皇に献上した記録がある。主に港から揚げた物資や木炭の運搬、田畑の開墾や耕作に利用され、狭い坂道の上に家を建てるために長崎市内の街づくりにおいても活躍した。一方、福岡県大牟田市の三井炭鉱で酷使され、平均2歳10ヶ月という短い一生を炭坑内で終えた対州馬たちがいたことも忘れてはならない。

🐴飼養頭数
44頭(2023,(公社)日本馬事協会,保存団体報告値)

🐴体高
125~135cm

🐴体重
200~300kg

🐴乗る人の体重制限めやす
70kg ※施設によるため要問い合わせ

🐴毛色
鹿毛、黒鹿毛が多い。次いで栗毛。数頭のみ青毛、青鹿毛。
かつては青毛、黒鹿毛の順で多かったという記録がある。
鰻線のあるものもいる。

🐴保護指定
対馬市天然記念物(2019)

🐴主な保存団体と活動
▶公益社団法人日本馬事協会
・血統登録、繁殖登録事業(1979)
※他の日本在来馬7種については「白徴(白斑)が無いこと」を条件としているが、対州馬については頭数を増やすことが最優先課題であるため、白徴があるものも繁殖用個体から除外しないこととしている。
・普及啓発事業

▶対州馬保存会(1972)※行政(対馬市)
〒817-0013 長崎県対馬市上県町佐須奈甲567-3 対馬市上県行政サービスセンター内
TEL:0920-84-2311 FAX:0920-84-2310
E-mail:taishuhorses@gmail.com

・学校での訪問授業やイベント開催等の普及啓発事業
・対馬市の『対州馬保存計画』はこちら(PDF)

🐴特色
◎小型のわりにたくましい脚
◎蹄鉄が不要なほど固いひづめ
◎坂を上る能力に優れている
◎優しく親しみやすい性格のものが多い

🐴現在または今後期待される活躍の場
◎乗馬体験
◎学校でのふれあい体験を通じた郷土教育
◎伝統行事「初午祭」*
◎島内の自然・文化遺産をめぐるホーストレッキングツアー
◎馬糞堆肥を使ったブランド農産物の販売

*初午祭:旧暦6月初午の日に瀬田地区で行われていた祭事。現在は目保呂ダム馬事公園のイベントプログラムのひとつとして「馬跳ばせ」という2頭立てのレースが継承されている。

🐴保存団体が望むこと
△島内外で140頭の飼育が目標だが、そのためには遺伝子検査を行い明確な基準を設けたうえで、血統情報を持つ島内個体のみでなく島外個体にも繁殖の範囲を広げたい。
△災害や疫病などへの危機管理のためにも島外でも飼育しておくことが望ましいため、島外の地域との結びつきを大切にしていきたい。
△島民ですら対州馬のことを知る機会が減って親しみを持ちづらくなっているので、対州馬について一緒に考えてゆける次世代の若者を育てたい。
△専門性を持った外部人材にも参加してもらうため、積極的に情報発信したい。

🐴対州馬に会える場所
※必ず会えるとは限らないため、各施設へは事前に問い合わせを。

【島内】
▶目保呂(めぼろ)ダム馬事公園
〒817-1523 長崎県対馬市上県町瀬田
TEL:0920-85-1113
保存会E-mail:taishuhorses@gmail.com

対州馬の飼育・繁殖の拠点。見学、乗馬体験が可能。乗馬体験は3日前くらいまでに事前予約が必要で、見学のみの場合もなるべく電話で問い合わせてほしいとのこと。月曜・木曜定休で、雨天時は土日祝臨時休園の場合も。

▶あそうベイパーク ふれあい牧場
〒817-1105 長崎県対馬市美津島町大山584-1
厩舎職員TEL:0920-54-5532
パークE-mail:mail@asoubaypark.com

浅茅湾に面した広大な敷地に、様々なレジャー施設が整っている総合公園。パーク内のふれあい牧場で対州馬を飼育しており、ふれあいと引き馬体験ができる。容器や車を用意できる方であれば、肥料用に馬糞をもらうことも可能。ペット同伴可※放し飼い禁止。月曜・木曜定休。

▶東横INN対馬比田勝(ひたかつ)
〒817-1703 長崎県対馬市上対馬町西泊1217-5
TEL:0920-88-6045 FAX:0920-88-6046

対馬北部、三宇田浜(みうだはま)海水浴場の白い砂浜とエメラルドグリーンのオーシャンビューを満喫できる客室も備えたホテル。魅力をアピールするために対馬市から貸与された対州馬が、ホテル敷地内の立派な馬場と厩舎で飼育されている。特にふれあいプランなどは用意されておらず、天気や時間などの都合が合えばお散歩している姿や厩舎で食事をする姿を見ることができるという感じ。
ホテルの公式サイトでは詳しい様子がわからないため、様子がわかるサイトのリンクを以下に張っておく。
・ローカリティ『ホテル敷地でスゴイ馬が育てられている!日本在来種の対州馬を飼育する東横INN対馬比田勝【長崎県対馬市】』(2023年12月)
・対州馬保存会公式Instagramリール動画(2024年6月)
・NCC長崎文化放送Youtubeチャンネル『【てんきゅ♡ながさき】東横INNに対州馬【トコサタ21市町よかとこめぐり】』(2019年10月)

【島外】
▶WARANAYA FARM&CAFE(長崎県)
〒856-0032 長崎県大村市東大村1丁目1880-72
TEL:0957-50-2276
Email:waranayafarm@waranaya.com

山の上にある、ほのぼのとした雰囲気の牧場併設のカフェ。対州馬のほか、ヤギやネコにも会える。水曜・木曜定休。

▶中伊豆ワイナリーヒルズランチ(静岡県)
〒410-2501 静岡県伊豆市下白岩1433-27
TEL:0558-75-7660 ※問い合わせは電話のみ

ワイナリーを中心とした総合観光施設内にある乗馬施設。広大なぶどう畑をクォーターホースでウエスタントレッキングできる。2017年に民間企業としては初めて対馬市から対州馬が1頭貸与され、対馬市観光親善大使として人気を集めている。
・アットプレス『「中伊豆ワイナリーヒルズ」にて 対州馬(たいしゅうば)歓迎セレモニーを開催』(2017年8月)
・中伊豆ワイナリーヒルズ公式Instagramリール動画(2022年12月)

【動物園等】
▶九十九島動植物園 森きらら(長崎県)
〒857-1231 長崎県佐世保市船越町2172
TEL:0956-28-0011
問い合わせフォームはこちら
年中無休。

▶富山市ファミリーパーク
〒930-0151 富山市古沢254
TEL:076-434-1234 FAX:076-434-1208
問い合わせフォームはこちら
Email:info2020@toyama-familypark.jp

3月1日~14日、年末年始休園。

▶八木山動物公園 フジサキの杜(宮城県)
〒982-0801 宮城県仙台市太白区八木山本町1-43
案内専用TEL:022-229-0631 FAX:022-229-3159
E-mail:
ken010320@city.sendai.jp(飼育動物関係)
ken010310@city.sendai.jp(施設利用)
問い合わせフォームはこちら(仙台市)
水曜定休(祝日の場合は翌木曜)、12月28日~翌1月4日休園。

🐴補足情報
1274年の文永の役(元寇)で宗氏の武将が乗って戦ったのが対馬産の馬だったといわれている。江戸時代には島内に4ヶ所の牧場があり、東北地方の南部馬を種雄馬として導入するなど馬産振興が行われたが、明治以降は外国産馬との交雑が進み、純血性が問題視された。戦後になって使い勝手の良い小型馬が好まれるようになり、島内の優良馬による「戻し交雑」に近い形で本来の性質を回復した。

🐴現地取材記事

http://www.chie-project.jp/011/no15.html
日本列島 知恵プロジェクト『にっぽん、馬紀行♯15初午祭を走る対州馬―長崎県対馬市―』,高草操,2014年12月

野間馬(のまうま)

野間馬

🐴ふるさと
愛媛県野間地方、現在の今治市周辺。
江戸時代に今治藩が軍馬を確保するために農家に馬を飼育させたのが始まり。農家に払い下げられ、農耕やミカンの収穫・運搬など、急傾斜地での駄載用として活躍した比較的小さな馬が野間馬と呼ばれるようになった。

🐴飼養頭数
52頭(2023,(公社)日本馬事協会,保存団体報告値)

🐴体高
90~120cm ※在来馬8種の中でもっとも小さい。

🐴体重
約150kg

🐴乗る人の体重制限めやす
25kg ※施設によるため要問い合わせ。いずれにせよ、中学生以上が乗るのは難しいと思われる。

🐴毛色
鹿毛、青毛、栗毛、芦毛。白徴は無し。
鰻線のあるものが多い。

🐴保護指定
今治市天然記念物(1988)

🐴主な保存団体と活動
▶公益社団法人日本馬事協会
・血統登録、繁殖登録事業(2001※在来馬認定は1985)
・普及啓発事業

▶行政(今治市)
・指定管理者として「のまうまハイランド」に飼育委託
・「今治市野間馬保存管理計画」はこちら(PDF)

▶野間馬保存会(1978)
※農協などの地元関係機関、団体、有志から成る。
・「のまうまハイランド」の運営
・野間馬の保存、繁殖
・小学生を対象としたクラブ活動

🐴特色
◎日本在来馬8種の中で一番小さい
◎体が丈夫
◎蹄鉄が不要なほど固いひづめ
◎遺伝資源として学術的重要度が高い
◎おとなしく素直な性格(繁殖終了・去勢済・高齢馬は特に)

🐴現在または今後期待される活躍の場
◎子どもの乗馬体験
◎ふれあい活動
◎ホースセラピー

🐴保存団体が望むこと
△のまうまハイランド内での飼育が80頭を超えた2004~2008年には闘争によるケガや死亡事故、疝痛による体調不良といった弊害が生じた経緯があり、適正頭数である50~60頭を維持しながら絶滅しないように保存していきたい。
△疫病などに対する危機管理として飼養場所を分散したいので、今後も他地域の動物園などへの譲渡・貸与をさらに進めたい。
△繁殖・保存用の集団を補強するための副次集団も作っていきたい。
△自然繁殖だけに頼らず、凍結精子の作製・保存に関する調査研究を進め、ジーンバンクを確立したい。

🐴野間馬に会える場所
※必ず会えるとは限らないため、各施設へは事前に問い合わせを。

【県内】
▶のまうまハイランド(今治市)
〒794-0082 愛媛県今治市野間甲8
TEL:0898-32-8155 FAX:0898-32-8255

今治市から飼育委託を受けた野間馬保存会が運営するふれあいパーク。「野間馬ものしり教室」で学習イベントも開催。火曜定休(祝日の場合は翌水曜)だが、引き馬とモルモットのふれあい・野間馬グッズも取り扱う売店の営業は土日祝のみ。年末年始は全館休園。引き馬は体重25kg以下の3歳~小学生対象、午前・午後各先着50名まで。団体利用は1日1団体に限り予約制で平日の午前中、引き馬とモルモットのふれあいが可能。問い合わせ受け付けは電話のみ。

【県外】
▶十和田市馬事公苑 駒っこランド内 駒っこ牧場(青森県)
〒034-0106 青森県十和田市大字深持字梅山 1-1
TEL 0176-20-6022 FAX 0176-20-6023
Email:inquiry@komakkoland.jp

月曜定休(祝日の場合翌火曜)

▶公益財団法人馬事文化財団 ポニーセンター(神奈川県)
〒231-0853 神奈川県横浜市中区根岸台1-3
TEL:045-662-8105
月曜定休(祝日の場合は翌平日)
※休園中、2028~2029年頃再開予定。

【動物園等】
▶とべ動物園(伊予郡砥部町)
〒791-2191 愛媛県伊予郡砥部町上原町240
TEL:089-962-6000 FAX:089-962-6194
E-mail:info@tobezoo.com

月曜定休(祝日の場合は翌平日)、年末年始休園。

▶上野動物園 子ども動物園すてっぷ ふたば牧場(東京都)
〒110-8711 東京都台東区上野公園9-83
TEL:03-3828-5171
月曜定休(祝日や都民の日の場合は翌火曜日)、年末年始休園。
・東京ズーネットニュース『在来馬の削蹄をおこないました』,2024年1月

▶富山市ファミリーパーク
〒930-0151 富山市古沢254
TEL:076-434-1234 FAX:076-434-1208
問い合わせフォームはこちら
Email:info2020@toyama-familypark.jp

3月1日~14日、年末年始休園。

▶天王寺動物園 ふれんどしっぷガーデン(大阪府)
〒543-0063 大阪府大阪市天王寺区茶臼山町1-108
TEL:06-6771-8401 FAX:06-6772-4633
E-mail:info@tennojizoo.or.jp

月曜定休(祝日の場合は翌火曜)、年末年始休園。

▶広島市安佐動物公園 ぴーちくパーク(広島県)
〒731-3355 広島市安佐北区安佐町大字動物園
TEL:082-838-1111(代) FAX:082-838-1711
E-mail:zoo@asazoo.jp

木曜定休(祝日は開園)、年末年始休園。

▶高知県立のいち動物公園 こども動物園(高知県)
〒781-5233 高知県香南市野市町大谷738
TEL:0887-56-3500 FAX:0887-56-3723
E-mail:info@noichizoo.or.jp

月曜定休(祝日の場合は翌火曜)、年末年始休園。

🐴補足情報
最初に野間馬の保存に取り組んだのは道後動物園(現・とべ動物園)。
このころ(昭和30年代)には野間地域(現・今治市)に野間馬はいなくなっていた。
1959(昭和34年)から個人で保存に取り組んだ長岡悟さんが周辺地域にわずかに残っていた野間馬をかき集めて飼育し、その一部を今治市に寄贈したことで、野間馬は野間馬放牧場に里帰りを果たした。
これが現在の「のまうまハイランド」となる。

🐴現地取材記事

http://www.chie-project.jp/011/no01.html
日本列島 知恵プロジェクト『にっぽん、馬紀行♯1子供たちのアイドルホース、野間馬―愛媛県今治市―』,高草操,2011年11月

トカラ馬(とからうま)

トカラ馬

🐴ふるさと
鹿児島県鹿児島郡十島村に属するトカラ列島。屋久島と奄美大島の間、南北約160kmに点在する12島のうち7島が有人、5島が無人島。
明治30年頃、奄美群島の東に位置する「喜界島」から未改良の在来種馬がトカラ列島の「宝島」に導入されたのが始まりという説が有力。駄載、農耕、サトウキビの搾汁で活躍し、島民にとっては家族同然の存在として暮らす。
1963(昭和38年)二十数頭に激減。絶滅の危機を脱するため、鹿児島県本土に移して増産開始。昭和50年代にふるさとへ帰そうということになり、宝島に1頭だけ残っていたオスを含む5頭が「中之島」の牧場に移された。
ところが1994(平成6年)大雨による水没で寄生虫被害が発生、猛暑も重なり、約半数が死亡。別の放牧地を作って本土から新たにメス2頭を導入することでピンチを乗り越えた。

🐴飼養頭数
90頭(2023,(公社)日本馬事協会,保存団体報告値)

🐴体高
110~120cm

🐴体重
約190kg

🐴乗る人の体重制限めやす
70kg ※施設によるため要問い合わせ。

🐴毛色
黒鹿毛、栃栗毛っぽいものが多いが、毛色が判別困難なものも少なくない。
首や肩に黒斑のあるものが全体の10%程度いる。白徴(白斑)は無し。
鰻線ははっきりしないがあるものも。

🐴保護指定
鹿児島県天然記念物(1953)※対象:中之島にいる馬のみ

🐴主な保存団体と活動
▶公益社団法人日本馬事協会
・血統登録、繁殖登録事業
・普及啓発事業

▶トカラ馬保存会(1973)
※鹿児島大学、鹿児島県畜産会、獣医師会、飼養関係者から成る。
〒890-0065 鹿児島市郡元1-21-24 鹿児島大学農学部 生物生産学科家畜育種研究室内
TEL:099-285-8589
・保存、繁殖活動

▶行政(鹿児島県、十島村)
※鹿児島県教育員会 県指定天然記念物のサイトにリンク
・保存、繁殖活動
・教育、普及啓発活動

🐴特色
◎おとなしく素直な性格
◎粗放な管理にも耐える
◎暑さに強くて丈夫

🐴現在または今後期待される活躍の場
◎ふれあいや乗馬体験などの観光資源
◎ふれあいを通した教育活動
◎ホースセラピー

🐴保存団体が望むこと
△現在はトカラ馬を保存する意義が理解されつつある段階だが、「家畜」である以上は活用の道を見つけなければならない。保存と活用の両立を目指したい。

🐴トカラ馬に会える場所
※必ず会えるとは限らないため、各施設へは事前に問い合わせを。

【トカラ列島】
▶中之島トカラ馬牧場(中之島)
〒891-5201 鹿児島県鹿児島郡十島村中之島高尾
問い合わせは十島村役場内 十島村教育委員会
〒892-0822 鹿児島市泉町14-15
TEL:099-222-2101(代表) FAX:099-223-6720
または十島村役場中之島出張所
〒891-5201 鹿児島県鹿児島郡十島村中之島27-9
TEL:09912-2-2101
集落から急な坂道を長く上った先にあるので徒歩では厳しいとのこと。広大な牧場に放牧されているのでよく見えない場合もあるとのこと。十島村歴史民俗資料館側の方が近くで見れるようにしてあるとの情報も。
》現地取材記事

http://www.chie-project.jp/011/no08.html
日本列島 知恵プロジェクト『にっぽん、馬紀行♯8孤高の黒馬、トカラ馬・その3~中之島編―鹿児島県十島村―』,高草操,2013年2月

▶宝島トカラ馬牧場(宝島)
島の北東部、大籠海水浴場の近くにある。
問い合わせは十島村役場宝島出張所(コミュニティーセンター)
〒891-5301 鹿児島県鹿児島郡十島村宝島923
TEL/FAX:09912-4-2129
》現地取材記事

http://www.chie-project.jp/011/no07.html
日本列島 知恵プロジェクト『にっぽん、馬紀行♯7孤高の黒馬、トカラ馬・その3~宝島編―鹿児島県十島村―』,高草操,2013年2月

【鹿児島県本土】
▶開聞山麓自然公園
〒891-0602 鹿児島県指宿市開聞川尻6743
TEL:0993-32-2051 FAX:0993-32-2051
高さ924mの開門岳の東麓にある公園でトカラ馬が放牧されている。
・4travel.jp 吉備津彦さんの旅行記『開門山麓公園でトカラ馬の赤ちゃんと初逢瀬後2つの展望台から絶景を楽しむ』(2024年3月)

▶鹿児島大学入来牧場
〒895-1402 鹿児島県薩摩川内市入来町浦之名字大谷4018-3
TEL:0996-44-2204 FAX:0996-44-2199
家畜専門の教育・研究施設。南西諸島の貴重な遺伝資源としてトカラ馬のほか、口之島野生化牛、トカラヤギも飼養し、保護・増殖への取り組みも行っている。畜産に関する視察研修等の申し込みを受け付けている。
・kumejimaumabokujyo-staffのブログ記事『入来牧場』(2019年4月)

▶鹿児島市平川動物公園
〒891-0133 鹿児島県鹿児島市平川町5669-1
TEL:099-261-2326 FAX:099-261-2328
年末年始休園

【奄美大島】
▶あやまる牧場(鹿児島県奄美市) ※公式Instagram
〒894-0624 鹿児島県奄美市笠利町大字須野 県道601号線沿い
共生園のごろ TEL:0997-63-1513
エサやり、ふれあい、引き馬体験可能。

※体験メニュー休止中(2023年11月)、再開未定。

【県外】
▶公益財団法人ハーモニィセンター 相模原麻溝公園ふれあい動物広場(神奈川県)
〒252-0328 神奈川県相模原市南区麻溝台2317-1
TEL:042-778-3900
月曜定休(祝日の場合は翌火曜)、年末年始休場。その他施設整備のための休場日有り。

▶上野動物園 子ども動物園すてっぷ ふたば牧場(東京都)
〒110-8711 東京都台東区上野公園9-83
TEL:03-3828-5171
月曜定休(祝日や都民の日の場合は翌火曜日)、年末年始休園。
・東京ズーネットニュース『在来馬の削蹄をおこないました』,2024年1月

▶一般社団法人遠野市畜産振興公社 遠野馬の里(岩手県)
〒028-0545 岩手県遠野市松崎町駒木4-120-5
TEL.:0198-62-5561 FAX: 0198-62-7760
E-mail:info@umanosato.jp

競走馬育成調教施設の管理、乗用馬・農用馬の繁殖改良と育成調教、乗用馬ふれあい(ホースパーク)事業を行う馬事振興施設。引き馬、乗馬の体験メニューはあるが、トカラ馬に関しては調教のための飼養であり、ふれあいができるかどうかは要確認。

🐴補足情報
1952(昭和27年)になってから鹿児島大学農学部の林田重幸教授らによってはじめて「トカラ馬」と命名された。
島で家族同然に人々と暮らしていた頃はたいへん優しく素直な性格だったが、頭数を回復するために放牧によって世代を重ねるうち、その温順な性質が失われてしまっていた。そこで公益社団法人全国乗馬倶楽部振興協会の藤田知己さんの尽力で乗馬クラブなどの飼養現場に協力を得て調教が行われ、ようやく人との絆を取り戻すに至った。

🐴現地取材記事

http://www.chie-project.jp/011/no06.html
日本列島 知恵プロジェクト『にっぽん、馬紀行♯6孤高の黒馬、トカラ馬・その1―鹿児島県十島村―』,高草操,2012年12月

宮古馬(みやこうま)

宮古馬。島では「スマヌーマ」「ミャークンマ」「ミャークヌーマ」などと呼ばれる。

🐴ふるさと
沖縄県宮古島市に属する離島。沖縄本島から南西に約290km、太平洋と東シナ海の間に位置する。
推定14世紀以降に大陸から渡来した「琉球馬」の末裔ともいわれる。明や清への献上品・交易品として利用されていた。
江戸時代には琉球王府による厳しい管理のもと、幕府に献上することで王府の体制維持に役立てられ、献上された御用馬は役人の乗馬・駅馬・伝馬、中国使節団の歓送迎用などに使われた。
王府の管理がなくなった明治以降、比較的大きな馬は本土へ移出。島民の抵抗により法律による去勢を免れた小型馬は生き残ることができた。
1980年の保存会結成時は残頭数わずか14頭。旧・平良市、その後日本馬事協会によって、遺伝的に宮古馬を祖先に持つ「粟国馬(あぐにうま)」の宮古島への里帰り計画が実施され、かろうじて全滅のピンチを脱した。

🐴飼養頭数
48頭(2023,(公社)日本馬事協会,保存団体報告値)

🐴体高
110~120cm

🐴体重
200kg

🐴乗る人の体重制限めやす
70kg ※施設によるため要問い合わせ。

🐴毛色
鹿毛が多い。栗毛、河原毛、月毛、粕毛もいる。稀に青毛。
鰻線がある。

🐴保護指定
沖縄県天然記念物(1991)
※当初は宮古馬保存会所有馬のみ対象、2020年~全馬対象。

🐴主な保存団体と活動
▶公益社団法人日本馬事協会
・血統登録、繁殖登録事業
・普及啓発事業

▶行政(沖縄県、宮古島市)
・宮古馬保存会の運営(宮古島市)

▶宮古馬保存会(1980)
※行政関係機関、宮古馬飼養者、学識経験者などから成る。
【事務局】
〒906-8501 沖縄県宮古島市平良字西里1140
宮古島市教育委員会文化財係内
TEL:0980-72-3764 FAX:0980-73-1976

🐴特色
◎小柄で扱いやすい
◎長年サトウキビ運搬に従事していたため、荷崩れしないための側対歩(島では「コースキ」という)が身についている
◎王府に百姓の乗馬を禁じられていたため、大駆けしない
◎高温多湿の亜熱帯性気候にも耐える
◎おとなしい性格で、飼い主によくなつく

🐴現在または今後期待される活躍の場
◎ふれあいや乗馬などの観光資源
◎ふれあいを通じた教育活動
◎ホースセラピーなどの医療福祉活動

🐴保存団体が望むこと
△2030年に100頭まで増やすことを目標にしているため、できれば宮古島に住んで飼育施設も用意できる新たな飼養者が増えてほしい。
△特に観光分野で収益を上げ、保存に必要なお金を捻出できるモデルを確立したい。
△飼養の委託費を増額して飼育者の負担を軽減したい。
△保存会による直接の飼養管理を徹底していきたい。

🐴宮古馬に会える場所
※必ず会えるとは限らないため、各施設へは事前に問い合わせを。

▶宮古馬放牧場
〒906-0105 沖縄県宮古島市城辺字長間1891-1
TEL:090-9781-6977(開園日の10:00~15:00)
宮古馬への理解を深めるとともに今後の利活用方法を検討するため、宮古島市教育委員会によって2023年から宮古馬の見学やエサやり体験を開始。電話での完全予約制。月・火・祝定休、年末年始、荒天時休園。

▶荷川取(にかどり)牧場
※ミャークヌーマ宮古馬の会(荷川取牧場編)facebookにリンク
〒906-0013 沖縄県宮古島市平良下里2606-2
TEL:0980-73-3850
宮古島市から預託を受けた宮古馬を飼育・繁殖する個人経営の牧場。スタッフはボランティア。牧場と宮古馬の保存育成を応援する島外在住者により、ミャークヌーマ宮古馬の会(荷川取牧場編)として情報発信が行われている。

▶まいぱり宮古島熱帯果樹園
〒906-0305 沖縄県宮古島市下地字与那覇1210
TEL : 0980-74-7830 FAX : 0980-76-3160
E-mail: info.maipari@group.tokyu.co.jp

与那覇前浜ビーチのすぐ横にある観光果樹園。宮古島でも珍しいヤシの木、パイナップル畑、バナナ畑などがあり、南国ムード満点の園内で宮古馬とふれあえる。引き馬体験も可能(小学生以下)。宮古島東急ホテル&リゾーツからは送迎あり。10月~3月のみ水曜定休。

▶宮古島市熱帯植物園内 宮古島市体験工芸村
〒906-0011 沖縄県宮古島市平良東仲宗根添1166-286
TEL:0980-73-4111
宮古島の自然や文化、歴史を幅広く知ってもらうため、熱帯植物園内に作られた工芸体験施設。一角で宮古馬を飼育している。

▶宮古島ぬー牧場
〒906-0107 沖縄県宮古島市城辺字友利1475-2
TEL:080-5986-8862
問い合わせフォームはこちら
元遠洋マグロ船の航海士が地元宮古島で開業した小さな牧場。エサやり、お散歩、引き馬体験(体重90kg未満)ができる(16歳以上。お子様は保護者同伴・追加料金必要)。

※新体制準備のため休業中(2024年4月末現在)

【今後オープン予定】
▶(仮称)沖縄県立宮古広域公園
与那覇前浜地区で用地取得準備中(2024年3月)、海と海辺を活かした総合公園。基本計画では、観光・レクリエーションゾーンに宮古馬牧場を設け、ふれあいができるようにする案が盛り込まれている。(2024年6月)

🐴補足情報
近年、新聞や週刊誌で宮古馬が報道され、良くない意味で話題になったことがある。
2015年、飼育者に補助金を出していた当時の保存会が、その時の目標である50頭を達成できそうな見込みとなったことを理由に、繁殖力の低い馬や高齢馬を保存場から除外(=補助金打ち切り、天然記念物指定解除)しようとした。受託飼育者や専門部会は当然これに反対。その後の保存会の動きが新聞報道されることとなった。
2018年には、一部の飼育者が劣悪な環境でまともな飼育もせず馬を死なせたことが週刊誌で報道され、保存会の管理責任が問われる事態となった。これを受けて保存会は、問題となった一部の飼育者から馬を取り戻し、直接飼育管理する対応を取った。
その反省から、2020年には新体制での保存活用計画がスタートしている。
「保存団体が望むこと」で委託費の増額や保存会による直接飼育が挙げられたのには、こうした経緯も関係している。

🐴現地取材記事

http://www.chie-project.jp/011/no02.html
日本列島 知恵プロジェクト『にっぽん、馬紀行♯2サトウキビ畑のミャーコヌーマ(宮古馬)―沖縄県宮古島―』,高草操,2012年1月

与那国馬(よなぐにうま)

与那国馬。島では「チマンマ(島馬)」よも呼ばれる。

🐴ふるさと
与那国島。沖縄本島から南西へ約509km、石垣島から約127kmの日本最西端の離島。
少なくとも16世紀以降に琉球王府、石垣および諸外国との交易により移入したと考えられるが、南方の島々の馬が起源とする説も完全に否定されてはいない。
19世紀頃からは乗用または駄載用として牛とともに放牧された。馬の伝来時期が遅いこと、人口が少ないこと、王府からも遠く統治しにくいことなどから、競馬などの琉球支配層馬事文化の影響は受けなかった。さらに、他の在来馬急減の原因となった去勢を命じる法律の影響もなかった。
戦後、モータリゼーションの影響で頭数が減少したため保存会結成。
1982(昭和57年)絶滅の危機を伝える新聞記事をきっかけに神奈川県から久野正照さんが移住。1992(平成4年)に「ヨナグニウマふれあい広場」(現・一般社団法人ヨナグニウマ保護活用協会)を開設以後、島と馬に魅せられた若者が集まるようになり、保存活動が盛んになる。

🐴飼養頭数
110頭(2023,(公社)日本馬事協会,保存団体報告値)

🐴体高
110~120cm

🐴体重
200kg

🐴乗る人の体重制限めやす
70kg ※施設によるため要問い合わせ。

🐴毛色
ほぼ鹿毛。日焼けのため毛色の判別が難しいものが多い。
過去の記録では粕毛、青毛、鹿毛、栗毛とバリエーションがあったようだが、島では鹿毛が好まれた結果遺伝子単一化が起きた可能性がある。
鰻線がある。

🐴保護指定
与那国町天然記念物(1969)

🐴主な保存団体と活動
▶公益社団法人日本馬事協会
・血統登録、繁殖登録事業
・普及啓発事業

▶行政(与那国町)
〒907-1801 沖縄県与那国町字与那国129
与那国町役場 産業振興課 農業委員会
TEL:0980-87-3582 FAX:0980-87-3202
・血統登録、繁殖登録事業

▶一般社団法人ヨナグニウマ保護活用協会(2017)
※うみかぜホースファーム、久米島馬牧場、石垣島馬広場、ちまんま広場、伊豆の国うま広場の5つの団体から成る。
〒901-1412 沖縄県南城市佐敷新里1688
ユインチホテル南城うみかぜホースファーム内
TEL:090-6869-5788
E-mail:info@yonaguniuma.com 
※与那国馬に関する問い合わせをこちらのメールで受け付けている。
通称「馬広場」。日本の希少な与那国馬を有効活用し、その保存への貢献を目的に活動している非営利団体。「NPOヨナグニウマふれあい広場(1992)」を前身とし、島内外の与那国馬を飼養する施設から成る。
・与那国馬の自家繁殖
・乗用、セラピー、教育に活用するための調教
・さまざまな「馬遊び」の提案

🐴特色
◎優しく素直な性格
◎粗食にも耐える
◎体が丈夫で、体格に比して重いものを運べる
◎蹄鉄が不要なくらいひづめが固く、サンゴ石灰岩の悪路も歩ける

🐴現在または今後期待される活躍の場
◎海馬(うみうま)遊び、ビーチライド、トレッキングなどの「馬遊び」
◎牧場遠足やふれあいを通じた動物介在教育
◎ホースセラピー
◎与那国馬について学ぶ研修事業
◎島の生物多様性への寄与(馬がいることで草地生態系が保たれる)

🐴保存団体が望むこと
△在来馬の持つ遺伝的・文化的価値を確認しつつ、時代に合った具体的な価値を見出していきたい。
△保存活用に関わる人だけでなく、移住者や地域住民、研究者や行政も連携して活動を進めてほしい。
△先人が築いてきたものを子どもたちに伝えていきたい。
△地域を担う人々がどうしたら豊かに生きられるかに寄り添っていきたい。

🐴与那国馬に会える場所
※必ず会えるとは限らないため、各施設へは事前に問い合わせを。

【島内】
北牧場東牧場
北牧場
〒907-1801 沖縄県八重山郡与那国町与那国4068-1
東牧場(東崎)
〒907-1801  沖縄県八重山郡与那国町東崎
観光案内所TEL:0980-87-2402 FAX:0980-87-2445
与那国空港の西隣に位置する北牧場(70ha)に約80頭、東崎灯台のある東牧場(60ha)に約15頭、人の手がほとんどかけられずに牛とともに周年放牧されている。一見野生馬にも見えるが、全馬牧場組合員によって管理されており、所有者のいる馬である。お互いのために、むやみに触れないよう注意。
※一般道沿いの「南牧場」にいるのは在来種と他種の交雑馬。

▶ちまんま広場(旧・ヨナグニウマふれあい広場)
〒907-1801 沖縄県八重山郡与那国町与那国3686
TEL:090-4470-4792 ※外作業が多いため、当日以外はなるべく以下フォームから。
馬遊び予約・問い合わせフォームはこちら
ふれあいと体験乗馬、ミニトレッキング、海馬遊び(夏限定)、経験者向けの外乗(夏季休業)コースのほか、ブラッシングやお散歩などの「乗らない馬遊び」体験も提供。カレンダーで予約可能日時の確認が可能。また、JRA助成事業として研修生の受け入れも行っている。条件等の詳細・応募フォームはこちら。

▶NPO風馬(ふうま)与那国馬倶楽部
〒907-1801 沖縄県八重山郡与那国町与那国465
TEL:090-7308-9931
予約フォームはこちら。
E-mail:fuma.yonaguni@gmail.com

ふれあい、体験乗馬、森や浜辺のトレッキング、集落の散策のほか、夏季限定で海馬遊び(海の中では馬にはまたがらない)を提供。前日まで要予約。

▶与那国馬風(う)牧場
〒907-1801 沖縄県八重山郡与那国町与那国3500
TEL:090-2502-4792 FAX: 0980-87-3988
予約・問い合わせフォームはこちら ※相談により決める事が多いため、予約は電話の方がスピーディーとのこと。
E-mail:isla_mujeles@yahoo.co.jp

引き馬ではなく自分で馬を動かせるようになってから出発するスタイルで、草原・海岸・海中(夏季限定)・森林のトレッキングコースを提供。通常のハミではなく島伝統の「ウブガイ」という木製馬具を使用しているため、普段とひと味違った意思疎通の工夫を体感してみたい馬乗りさんにもオススメ。体重制限は75kgまでだが、超過料金にて最大85kgまで可としている。火曜他不定休。弟子または秘書の募集要項はこちら。

【島外】
▶うみかぜホースファーム(沖縄本島・南城市)
〒901-1412 沖縄県南城市佐敷新里1688 ユインチホテル南城・スポーツ棟
TEL:090-6869-5788 ※外作業が多いため、緊急時以外は以下フォームから。
予約フォームはこちら
問い合わせフォームはこちら
(一社)ヨナグニウマ保護活用協会の本部所在地。ふれあい、森林や海岸のトレッキング、夏季限定で海馬遊びを提供。団体向けのプログラムや、不定期にふれあいイベントも開催し、与那国馬の多彩な分野での活躍に取り組む。1週間前までの完全予約制。

▶久米島馬牧場(久米島)
事務所
〒901-3138 沖縄県島尻郡久米島町字上江洲457-135 メッセハイツ102
※馬遊びの集合場所はコースにより異なるため要確認
TEL:080-6491-1950 ※外作業が多いため、緊急時以外の問い合わせはフォームかメールにて。
予約フォームはこちら
問い合わせフォームはこちら
E-mail:kumejima-uma@kyi.biglobe.ne.jp

馬に乗らないふれあいも歓迎!海、森、山、史跡など様々なトレッキングコースを提供。夏季限定の海馬遊びや、1月中旬~2月上旬限定の「日本一早いお花見外乗」も。通常のハミではなく島伝統の「面繋(ンゲー、ゥムゲー)」という木製馬具を使用しているため、普段とひと味違った意思疎通の工夫を体感してみたい馬乗りさんにもオススメ。体重70㎏以上の場合は要相談。スタッフ・研修生も募集中。興味ある方は問い合わせフォームから。

▶石垣島馬広場(石垣島)
事務所
〒907-0331 沖縄県石垣市平久保17
牧場
〒907-0331 沖縄県石垣市字平久保平久保牧355
※ナビでは表示されない。海馬遊びの集合場所は異なる場合があるので要確認。
TEL:080-6485-5979 ※外作業が多いため、緊急時以外の問い合わせはフォームかメールにて。
予約・問い合わせフォームはこちら
E-mail:ishigakijimaumahiroba@yahoo.co.jp

夏季は海馬遊びのみ、他の時期は引き馬やミニトレッキングから、浜歩きや牧場トレッキングなどを提供。新コースも順次開拓中!石垣島在住者向けのオトクな乗馬レッスンも。JRA助成事業として研修生を受け入れ。興味ある方はこちらから。売り上げの一部が馬たちの活動資金となるオリジナルグッズも販売中!オンラインストアはこちら。

▶伊豆の国うま広場(静岡県)
〒410-2113  静岡県伊豆の国市中
※世界遺産 韮山反射炉から伊豆にらやまカントリークラブ方面へ車で約15分
TEL:080-6040-4792 ※外作業が多いため問い合わせはフォームかメール歓迎だが、緊急時やメールが難しい場合はTELも可。
予約・問い合わせフォームはこちら
E-mail:takahara4792@gmail.com

エサやりや乗馬体験、引き馬、馬場内レッスンから、林道の外乗コースまで様々なふれあいメニューを提供。市内在住のカメラマンによる馬との記念日写真撮影プランも。不定休、完全予約制。平日午前中についてはイレギュラー対応となるため1週間前までに要問い合わせ。ボランティアスタッフ応募についてはこちら※2024年3月現在募集休止中

【動物園等】
▶沖縄こどもの国 琉球弧 うまんちゅ広場(沖縄本島・沖縄市)
〒904-0021 沖縄県沖縄市胡屋5丁目7-1
TEL:098-933-4190
問い合わせフォームはこちら
乗馬体験可能(土日祝の決まった時間帯のみ、体重制限65kgまで)。園全体は火曜定休(祝日の場合は翌水曜)、年末年始・荒天時休園。

▶上野動物園 子ども動物園すてっぷ ふたば牧場(東京都)
〒110-8711 東京都台東区上野公園9-83
TEL:03-3828-5171
月曜定休(祝日や都民の日の場合は翌火曜日)、年末年始休園。
・東京ズーネットニュース『在来馬の削蹄をおこないました』,2024年1月

▶公益財団法人馬事文化財団 ポニーセンター(神奈川県)
〒231-0853 神奈川県横浜市中区根岸台1-3
TEL:045-662-8105
月曜定休(祝日の場合は翌平日)
※休園中、2028~2029年頃再開予定。

🐴補足情報
▶Let's support! ヨナグニウマ
かわいい与那国馬雑貨を販売し、売り上げの一部を(一社)ヨナグニウマ保護活用協会に寄付している。オンラインのほか、各種馬イベントや展示販売イベントにも積極的に参加している。

▶Kadibooks(カディブックス)
馬との生活をつづったエッセイ本や、馬と仲良くなる方法が描かれたゆるかわな絵本を出版。与那国島にあったが、久米島へ移転準備のため休業中(2024年4月)。
》カディブックス出版の書籍は一般の書店流通に乗っていないが、引き続き各取り扱い書店で在庫があれば購入可能。
『馬語手帖―ウマと話そう』,河田桟,カディブックス,2012
『はしっこに、馬といる―ウマと話そうⅡ』,河田桟,カディブックス,2015
『くらやみに、馬といる』,河田桟,カディブックス,2019
》以下の絵本は出版元が偕成社なので、一般書店や各種オンライン書店で購入可能。
『ウマと話すための7つのひみつ』,河田桟,偕成社,2022
私が所有している本すべての中で一番の愛読書が『くらやみに、馬といる』である。電子版がないので自分で朗読を録音し、それを聞きながら寝落ちしたりする。

🐴現地取材記事

http://www.chie-project.jp/011/no05.html
日本列島 知恵プロジェクト『にっぽん、馬紀行♯5伝説の島に生きる、与那国馬―沖縄県与那国島―』,高草操,2012年7月

日本在来馬のジーンバンク事業

▶独立行政法人家畜改良センター十勝牧場(北海道)
〒080-0572 北海道河東郡音更町駒場並木8-1
TEL:0155-44-2131 FAX:0155-44-2215
御崎馬を除く7種の日本在来馬について、生体または凍結精液による遺伝資源の保存を行っている。
白樺並木から展望台までの幹線道路は一般車の通行が可能。展望台周辺は馬の放牧地になっているが、各家畜の基地・放牧地・牧草地などは立入禁止となっているため馬には触れないよう注意。
なお在来馬以外の馬種も多数いるため、必ずしも在来馬が見られるとは限らない。
あくまでも研究施設であり観光牧場ではないので、お土産品等の売店は無い。
・研修やインターンシップ希望の方はこちら
・教育機関、畜産、酪農関係団体等で家畜基地内の見学希望はこちら

愛されるよりも愛したい馬事(マジ)で

日本にも馬ならいっぱいいるのでは?

確かに競走馬などはより速い馬を産み出すために毎年毎年人の手によって繁殖育成が行われているわけで、単純に馬の数でいえば少なくはないのかもしれない。
大きなレースには十万人単位の人が観戦に訪れる一方で、成績を残せなかった馬たちの多くが行き場なく処分されているという、また別の問題がそこにはある。
馬の寿命は25~30年ほどだが、こうした馬は3歳くらいで処分されることもある。
いわば「使い捨て」のような生産システムが長年続けられてきた。
近年、こうした馬の第2・第3の馬生、例えば乗馬用の馬として調教し直したり、ホースセラピーに活用したり、余生は養老牧場でゆっくり過ごしてもらったりといった取り組みが盛んになってきたところだ。

とはいえこれはあくまでもサラブレッドのような競走馬など外国にルーツを持つ馬たちの話で、日本在来馬に限って言えばその数は風前の灯火。
飼育頭数は多くても北海道和種の1000頭前後、少ない種では50頭に満ない(保存地域以外での飼養数は除く)。
この“絶滅の危機”ともいうべき状況にもかかわらず、関心を持つ人は多くはないのが現状だ。

海外では日本とは比べ物にならないほど、人々にとって馬は身近な存在だと聞く。
海外在住経験豊富な「うまテラス」代表でホースジャーナリストのYURIEさんも、海外ではホースショーなどのイベントが家族連れで訪れるようなごく一般的な娯楽のひとつとして定着していることに驚いたと語っている。
特に自国産の馬に関しては誇りを持っている人が多く、様々な充実した施設や資格などもあり、馬に関わる職には事欠かない国もあるという。

日本人が言うところの自他共に認める「馬好き」は主に西洋馬に対するものであるというのが『日本の馬』編者の見解で、これがこの記事冒頭の引用文につながる。
日本人は、一部の生産者や在来馬好きを除いては、外国人ほど自国産の馬に興味関心も誇りも持ち合わせてはいない。

戦後のモータリゼーションは世界的に同じように起きたはずであり、馬と人との距離・馬の果たす役割については多くの国ではおそらく時代に合わせて上手く変化したのだろう。
それが日本においては交通・運搬や農業では到底機械の利便性には敵わないとなった時点で、馬との関係を絶つような流れになってしまった。
「馬と共に暮らす」という文化が失われたことで、日本在来馬は急激に絶滅の危機へと陥ることになったのである。

繁殖して増やせば解決では?

減っているなら単純に数を増やせば良いかというと、そうはならない事情がある。
一頭の在来馬が暮らすには1ヘクタールの土地が必要とも言われるのだから、各在来馬のふるさとの土地だけでは、そこで安心で快適に暮らせる馬の数には限度がある。
実際、野間馬が飼育地内で80頭を超えたところで闘争によるケガや死亡事故が起きたり、疝痛で体調を崩す馬が増えたりしたことがあり、現在は適正飼養頭数を5〜60頭としている例もある。
そもそも飼養できる面積が極端に限られている離島の馬たちだっている。

「その在来馬らしさ」というのも重要な論点になる。
とにかく数を増やそうとして遺伝的にそれほど近くない種まで入れてしまえば混血が進み、元々のその在来馬らしさが見た目にも遺伝的にも失われ、価値が損なわれかねない。
そうならないために、日本馬事協会や保存会によって血統登録などの管理が行われるようになってきている。
ただ、狭いグループの中だけで繁殖を繰り返せばやがて近親交配によって遺伝的な多様性が失われたり、弱い個体が生まれやすくなって結果的に絶滅に繋がる恐れもある。

さらに、例えばあるひとつの土地でしかその在来馬が飼育されていなかったとして、そこに災害や伝染病や寄生虫が発生した場合も、絶滅の危険性が高まる。
こうしたリスクを回避するために、その在来馬らしさを保ちながら、その在来馬のふるさと以外の複数の土地で頭数を増やす取り組みも行われ始めている。

なぜ在来馬を保存する必要があるの?

それは、生態系における多様性の保存という点で遺伝的に貴重であり、ご先祖様たちが馬とともに紡いできた暮らしは文化的にも価値があるから。

というのが、ペーパーテストなら100点の回答だろう。

しかし一般庶民的感覚からすると、そんな精神論的なことを言われてもいまいちピンと来ない。
正直、関係者や馬好きでもない限り「遺伝的・文化的価値があるんだね。それで?」なのではないだろうか。

もっと多くの人が在来馬にリアルな価値を見出して関心を持ってもらうためには、昔の交通・運搬や農業のように役に立つ=お金になる必要はどうしても出てくる。

在来馬は体高100〜135cm程度と馬の中では小柄な「ポニー」と呼ばれる部類の体格をしている。
比較的体が丈夫で、蹄鉄が不要なほどひづめが固く、粗食にも耐える。
軍馬としては劣ったかもしれないが、小さいからこそ駄載などの取り扱いがしやすく、狭い坂道でも小回りが利く所が便利だったのだ。

現代において活用するにしても取り回しやすいのはメリットになり得る。
乗る場合を考えれば体高が高すぎないという点で恐怖心が少なくて済むし、安全性も高まる。
もちろん馬にも一頭一頭個性があるので全馬がそうとは限らないし、繁殖期など時期的な気性の変動もあるが…性格は温厚で、人の指示によく従うものが多いといわれている。

こうした特徴は、ホースセラピーやふれあいを通した教育活動、コンパニオンアニマル的な関わり方を提供することに向いていると考えられる。
このことから、現在各地で地域おこしや自然教育・研究、トレッキングや流鏑馬、ホースセラピー、さらには災害救助馬など、今の時代に合った在来馬の新たな活躍の場が模索されているところだ。

馬に乗らない馬好き文化は黎明期にあると言えるだろう。
共に盛り上げてもらえる仲間が増え、いつしか馬に乗らない馬好きが皆「いずい」と感じなくなる日が来ることを願う。自分も含めて。

まとめ作業で実感!第ゼロ段階の課題

実は今回の各在来馬に関する情報収集は、非常に困難を極めた。
インターネット検索で調べれば何でもすぐわかるこの時代において、これほどまでに情報がまとまっていないとは思いもしなかった。

  • 対象在来馬の写真・最新の飼育頭数・体高・毛色・保護指定などの基本情報が載っている

  • 対象在来馬に会える場所の情報がまとめられている

  • 対象在来馬の歴史と現状、今後の課題が書いてある

  • 保存活用の活動に参加・支援したい人に対する案内がある

  • 保存団体の構成員や連絡先などの基本情報が載っている

  • 定期的に手入れされ、最新情報が提供されている

  • 読みたいと思わせるようにデザインや体裁を整えている

  • 変な広告が表示されない

  • 公式のWEBサイトである

これらの点において、一般社団法人ヨナグニウマ保護活用協会はかなり充実度が高く、次いで対州馬保存会も力を入れようとしている様は感じられた。
各保存会が「積極的に情報提供を行って関心を持ってもらい、一緒に保存活用のために活動してくれる若者を増やしたい。」と訴えるならば、まず上記の条件に沿ったホームページを作るところから始めるのも重要ではないだろうか。

各保存会が基本情報や会える場所などをなるべく統一したフォーマットで掲載し、それを例えば日本馬事協会であったり馬事文化財団であったりがまとめたページを作り、ここを見るだけでまるっと在来馬のことがわかる!…というのが理想ではある。
現状では、在来馬に少し興味関心を持った人が「知りたい情報」に辿り着くまでの道のりはなかなかに険しい。
タイパまたはタムパ(タイムパフォーマンス)が優先される現代においては、せっかく興味を持ってくれたのに「じゃあ、いいや。」と切り捨てられる素因になりかねず、非常にもったいないと思った。

おそらく現場の方々は本業の傍らで身銭を切って保存活動をしていたり、完全無給のボランティアだったりで、馬の世話だけで手一杯なのだろうと想像する。
ホームページ制作・管理やSNSの運営を外注するお金の余裕も、インターネットでの情報発信の重要性に気づく余裕すらないかもしれない。
どこの業界にもあるようなアナログ至上主義的傾向も比較的強いらしく、もし外から働きかけがあったとしても、デジタルアレルギー反応のようなものがあってなかなか受け入れられないのではないかという意見もある。

それでも、一生懸命発信しようとしている人は確実にいるということはわかった。
このまとめ記事がその一助となれれば幸いである。
ミャークヌーマ宮古馬の会(荷川取牧場編)facebookのように、遠隔地にいても現地から情報提供を受けて発信する方法もあるという気づきもあった。
「うまテラス」で協力して何か手助けができないだろうか?などと妄想したりもした、今回のまとめ作業であった。

※日本在来馬の歴史や遺伝情報などについては研究段階であり、ここで紹介した内容がすべて確定的な事実とは限らない。したがって他WEBサイトや書籍等の記載とは異なる部分もあるものと思う。あくまでも「諸説あり」のスタンスで捉えていただきたい。
※各団体や施設の情報は変わる場合があり、リンク切れが発生する可能性も十分に有り得る。もし何かお気づきの点があればお知らせいただけるとありがたい。なお、各在来馬に会える施設については公式サイトで明確に「在来馬名」を掲載している・飼育していることが確認できる場所のみの紹介とし、交雑種や「ポニー」としか表記されていないものは除外している。

2024年6月

サポートいただけたら、大変励みになります! いただいたサポートは主に馬活とGLAYのために使用し、次回の記事投稿に役立てます🐴💕