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【読書メモ】国語教育の危機

今年2冊目。先日参加したイベント「これからの国語科の話をしよう」で登壇された紅野先生の著書。イベントの予習として読みました。

国語教育の危機ー大学入学共通テストと新学習指導要領
紅野 謙介(ちくま新書)

■評価:★★★★☆(各章のバランスが気になるが勉強になる)

■よかった点
大学入学共通テストのモデル問題(H29公開)とプレテスト(H30実施)を学習指導要領とともに詳細分析。その問題点を丁寧に指摘しています。とりわけ記述問題については、その理念については一定の理解を示しつつも、形式にとらわれるあまり中身が十分に検討されていないとして、共通テストの向かう方向性について警鐘を鳴らしています。問題解説パートは、退屈な人は退屈でしょうが、関係者は読んでおくべきだと思います。
折々に作問者への同情を表明しつつ、作問のあるべき姿とその難しさについても語られており、問題を作る仕事をする立場としても勉強になりました。「無署名の文章には一定の権力性がつきまとう」という観点にはなるほど、と。

■気になった点
著者は「生きる力の根源にふれる」「言葉への愛情とためらい」といった表現を使いながら文学作品の重要性を強調していますが、ピンとこない人はピンとこないし、国語に期待されている思考力や表現力の養成に文学作品がどのように寄与しているのかを示さなければ、「実用文読解」「情報処理」を推進する向きとの議論は平行線のママではないだろうか、と。正直、私も文学作品読解の意義を語れません…
その点で、全体としてテスト問題の解説の分量が多く、後半の著者の主張が駆け足気味に感じられたのが残念ですし、批判には説得力がありましたが、だからどうすべき、という提言を読みたかったかな、と。

■総括・雑感
本書を読むと、大学入学共通テストと新学習指導要領下での高校教育の有り様が心配になります。バランス取るために改革派の国語論を注入せねば…笑
それはさておき、大学入学共通テスト、昨秋に2回目のプレテストが行われ、いよいよ次は本番のようです。第2回で少し路線変更したような感もあり、紅野先生の評を伺いたいな、と。

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