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何故マイナー怪獣が出演するのか?

1月29日『シン・ウルトラマン』の特報動画が公開された。
現時点で登場が確定している怪獣は2体

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ネロンガ

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ガボラ

どちらも初代ウルトラマンに登場した怪獣である。
しかし有名どころならバルタン星人など幾らでもいる。
何故、決して有名とは言えないこの2体をチョイスしたのだろうか?

3行で紹介

電気を食べる怪獣ネロンガの登場は、
初代『ウルトラマン』第3話「科特隊出撃せよ」

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「江戸時代に退治されたはずの怪獣ネロンガが実はまだ生きていた。建設された発電所の影響で電気を食べる怪獣として復活し、暴れ回る。」
といった話だった。

ウランを食べる怪獣ガボラは、第9話「電光石火作戦」

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「台風の被害を受けた街に突如ガボラが出現。ウラン採掘鉱を目指すガボラを、ウランのカプセルをおとりに別の場所に誘導しようとする。」
といった話だ。

1966年と原発と「明るい未来」

初代ウルトラマンのは1966年に放送された。

日本は戦後凄まじい速度で発展を遂げてきた。
終戦間もない1960年代も、例に漏れず激動の時代だ。

3C(カー・クーラー・カラーテレビ)の普及。
東京都内の車が100万代を超えたマイカー時代の到来。
1964年には東京オリンピックが開催。
日本の総人口は、戦後から40%近く増加し、1億人を突破した。

それらの発展を下支えたのが電力。
急増する電力のニーズに応えるべく、原子力発電の導入・準備が本格化したのも1960年代だった。

1961年原子力委員会、原子力開発利用長期計画を発表を皮切りに、
法の整備などが進み、
1966年、茨城県東海村に日本初の商業用原子炉「東海発電所」が営業運転を開始。同年、東京電力、福島原子力発電所1号炉にBWRを決定した。(1971年より営業運転開始)

アメリカが世界で初めて原子力発電を成功させたのが1951年。
10数年後に世界で唯一核を打たれた国が、それの技術を導入するという事に、当時の日本人たちも何も思わなくは無かったのだろう。
だが『ウルトラシリーズ』などの作中の扱いや、1963年に放送開始した『鉄腕アトム』の存在などから、基本的に肯定的に受け取る人も多かった様子だ。

むしろ危険な原子力すら克服し操る姿は、「明るい未来」の象徴だったのかもしれない。

社会風刺から始まった日本の怪獣

上記のようなバックボーンから、両怪獣は誕生した。

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特撮と原爆は切り離せない関係にある。
ゴジラが原爆と密な関係にある事は、よく知られているし、他作品でもウランとか原子力といったワードは度々目にする。

そもそも怪獣はそのサイズ感故に、時代の空気感・規模の大きい問題のメタファーとして非常に優秀だ。
そんな特性を持ちながら、原子発電技術の普及と同時期に発展してきた事も無関係ではないだろう。

そういった観点から、ガボラとネロンガはマイナーながらも特撮史的には「正統派」であると言える。

だからこの2体が選ばれた

2021年3月11日、福島第一原発事故から10年を迎えた。

『シン・ゴジラ』で核に触れた庵野秀明氏が、この事実に何も触れないという事は考えられない。
エネルギー問題をバックボーンに誕生した両怪獣の出演は、ここまで考えれば当然とも思える。

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ただ、彼らが誕生した1966年とは状況が全く異なる。
もはや原子力発電を「明るい未来」の象徴として捉える人間は、控えめに言って少数派だろう。
『シン・ウルトラマン』のデザインなども踏まえて考えると、今回のテーマは「移民問題」ではないかと予想しているが、それはまたの機会に語る。

界隈では
・ガボラのスーツはネロンガのスーツを改造したものである
・両怪獣の尾ビレと背ビレ以外のデザインが共通
であることから、「電気を食らったネロンガが、ウランを食らうガボラに進化するのでは?」などと噂されている。
十分にありそうな話だ。

元マイナー怪獣の2体が、どの様に描かれるのか。
今後も目が離せない。

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