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無断改編禁止ー公任と花山院、「紅葉の錦」をめぐってー

改変禁止

朝まだき嵐の山の寒ければ散るもみぢ葉をきぬ人ぞなき(拾遺抄)

『十訓抄』の中で、花山院が言及した歌はこれなのでしょうか。

『拾遺抄』は藤原公任がまとめた歌集です。これを参考に花山院は『拾遺集(拾遺和歌集)』を編纂させたと言います。

公任が承諾しなかったので、変更されなかったはずなのですが、後に花山院がまとめさせた『拾遺集』では「紅葉の錦」に変えられています。

「紅葉」とくれば「錦」と詠むのは当たり前なので、公任は避けたのだとも。


実は、この歌は、他の本でも少しずつ違うのです。

大鏡:をぐら山あらしの風のさむければもみぢのにしききぬ人ぞなき
拾遺集:朝まだき嵐の山の寒ければ紅葉の錦きぬ人ぞなき
拾遺抄:朝まだき嵐の山の寒ければ散るもみぢ葉をきぬ人ぞなき
公任集:朝ぼらけ嵐の山のさむければちる紅葉ばをきぬ人ぞなき

(漢字のあて方は本によって違います)

ちなみに『大鏡』の引用は有名な「三舟の才」のエピソードです。嵐山ではなく小倉山になってしまっていますね。

私は「朝まだき」が入ることで情景がグッと深くなる気がして、拾遺抄の歌が好きです。


本当に花山院が書き換えさせたのか、別人によるものか、はたまた、本人が直したのかわかりませんが、いろんな本に登場するということは、公任の歌はそれだけ、もてはやされたということでしょうね。

しかし、撰者の好みもあって、歌集にまとめる時に書き換えるのは、あることだったらしいです。驚かずにはいられませんが。

例えば、小倉百人一首の持統天皇の有名な歌。

春過ぎて夏来にけらし白妙の衣干すてふ天の香具山

万葉集では、

春過ぎて夏来るらし白たへの衣干したり天の香具山

新古今和歌集でも、先の歌が採られています。この時代は婉曲的でやわらかい響きが好まれたのだとか。

そうだとしても、私が作った歌だとしたら、なんだか納得いかないかも。

《参考》
『新日本古典文学大系 平安私家集』岩波書店


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