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散歩の楽しさに気づいた

 ここに引っ越してきた頃は、よく散歩をしていた。「帰ってこれるかな」と不安になりながら気になった道をひたすら歩いた。そうして大体の場所を歩き尽くして、「飽きたな」と思った。景色が変わらないから散歩しても面白くないと感じるようになっていた。

 昨日、「こんな道あったっけ?」と思うような遊歩道を見つけたので、今日の昼に歩いてみた。オシャレな新興住宅地があって、やけに見晴らしのいい階段で小学生くらいのカップルがキスをしていた。もうちょっと人目のない場所でした方がいいと思うよ。

 何もかもが新しくて、そこかしこにデザインがある住宅地だった。偶然より意図を重視する。新しいってそういうことなのかな。

 

 大きなため池のある公園。大雨のたびに何度も沈んだ広場。いま歩いている場所はいつかの水の底なのだと思うと不思議な気分になった。

 ため池の鴨を眺めていると、鳩と鯉が集まってきた。誰か餌付けをしているな。
 野生の鯉が黒いのは日焼けのせいらしい。昔、父が言っていたことだが、ググってみてもそれらしい情報は見つからなかった。嘘かもしれない。どっちが?

 日曜の昼間。すれ違う人はみな「地元用」といった服装だった。いわゆるダル着。ダル着の中にも個性が表れているから面白い。
    ホストの私服みたいな真っ白なジャージに、真っ黒な煙草を手にした人がいた。甘い香りがした。

 その人の世界観ができあがっていてカッコいいと思った。私も自分の世界が欲しい。人の少ない場所で、自分の世界に閉じこもって暮らしたい。私は多分、やっぱり、人間が苦手。



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