歌妖曲〜中川大志之丞物語〜
妹に誘われてキャナルシティ劇場へ、舞台を観に行ってきた。
妹についついついていっちゃうお姉ちゃん。
私たちお目当ては「歌妖曲〜中川大志之丞物語〜」
題名に“中川大志“ってあるくらいだから、もちろん主演は中川大志さん。
正直、イケメン俳優を生で見れるいい機会程度にしか思ってなかったけれど、この舞台はそんな思いを鋭く切り裂いてくれた。
あらすじ
舞台内容について
復讐者は大きく分けて、終わりがハッピーエンドなパターンと、バッドエンドパターンと2つあると思うのだけど、こちらの舞台は明らかに後者。
そもそもこの物語、身体障害者に対して容赦ない暴力やら、芸能界と裏社会の繋がりやら、かなりセンシティブなラインを攻めている。
あくまで個人的な意見ではあるけれど、私がみた復讐物の中でも、かなり胸糞度高めだと思う。
後半どんどん人死んでいくし。
でも、そんな超ヘビー級の激重内容を、昭和のテレビ全盛期の華やかさと、レトロポップな懐かしい雰囲気で明るく映し出してくれて、そのアンビバレンスな空気感が見ていてすごく楽しかった。
定の場面場面の心理描写も、また巧みである。
鳴尾家に復讐することを決めつつ、一族の中で唯一優しくしてくれた兄への憧れ、そんな兄を真っ先に事故とはいえ殺してしまったことへの罪悪感、兄の死からの復讐への葛藤と覚悟、妻と相棒への疑心、憎みつつもずっと認められたかった父への思い……
様々な感情を抱えながら、どんどん闇落ちしていく定を追っていくうちに、こちらも比例するように彼に感情移入してしまい、復讐を成し遂げてもなお満たされずにいる定を見ていると、「彼はただ家族の一員として幸せになりたかっただけなのに」と悲しい気持ちになった。
定が最期に舞台上で火に包まれながら、ラララと歌いながら焼けていくシーンは1秒たりとも目が離せず、物語への没入感が凄まじかった。
歌が上手い
これは単純な感想なんだけど、中川大志さんめちゃくちゃ歌が上手い。
ミュージカル劇だから、歌が上手いは前提なんだろうけど、よく通る綺麗で力強い声と、歌唱中の高いパフォーマンス力は、本当にアイドルのようで、それだけで見ていて満足感がすごかった。
他の俳優さんもやっぱり上手くて、ヒロインを務めた松井玲奈さんはもともとSKE48とアイドルが本業の人だっただけあって、歌ってる姿がめちゃくちゃ可愛くて、視覚、聴覚ともに楽しめるパフォーマンスをみることができた。
(家に帰ってきて、母に「中川大志、めっちゃ歌うまかったよ!」って伝えたら「番組で歌歌ってた時もめちゃくちゃ上手かったからね〜」と軽く返された。え、そんなに有名な話なの?私が知らなかっただけ?)
演技が上手い
もうこの舞台を見るまで、私の中では中川大志=人気のイケメン俳優くらいの認識でしかなかったけど、鑑賞後、自分の認識の甘さを痛感した。
舞台が始まって第一声からして「え?これ本当に中川大志?」と思ってしまうほど、普段の印象とは違った。
中川氏はこの舞台の中で、一族の嫌われ者鳴尾定と、歌謡曲のトップスターである桜木輝彦のいわば2人二役やってるわけだが、この2人は明らかに別人だった。
定は四肢が捻じ曲がってるから、定でいる時はずっと腕を内側に入れ込んで、背筋を曲げ、足も内股とかなり動きづらい無理な姿勢で動かなければいけない。
反して桜木は時代を象徴するトップスター。
華やかさと、スターにあるべきオーラ、凛とした態度を取り続けるため、こちらも一瞬たりとも気が抜けない。
違うベクトルの緊張感を常に持ち続けながら、複雑に絡み合った感情を鑑賞者に伝え続けなければいけないのだけれど、それらを見事にやってのけていたと思う。
中川大志=実力派俳優
これが間違いない。
最後に
ちょっとした不満を言うなら、あんだけひどく痛い思いをして全身整形をしたのに、薬が切れたり、時間が経ったりしたら元の姿に戻ってしまうと、え?なんのために整形した?とは思った。
あと、これは私が舞台に詳しくないだけなのかもしれないけれど、舞台って同じ役者さんで違う役回りをいくつもするものなのか?
さっき死んだはずの組の若頭が、次の場面ではバーのマスターとして生き返っていたし、しばらく時間が経てば、また組に戻っていて「この人は誰?幽霊?」と思わず笑いそうになってしまった。
とは言えこの作品は、最後の最後まで油断できないハラハラドキドキの復讐エンターテイメントで、すごく面白かったので、見ることができて本当に良かったと思う。
(カーテンコールのときの中川大志さんのかっこよさもエグかったしな……)
ちなみに、隣で見ていた妹はよほど感銘を受けたのか「舞台ハマった」なんて呟いていた。
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