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岸辺露伴 ルーヴルへ行く

渡辺一貴監督作品、高橋一生氏主演の「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」を見てきた。

荒木飛呂彦先生の「ジョジョの奇妙な冒険」のスピンオフ作品である「岸辺露伴は動かない」シリーズの一つ「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」を映画化したのが今作。

ドラマ版を数話見ていて面白かったし、何より高橋一生という俳優が好きな私にとって、これは見ないわけにはいかない…!

そう思ってムビチケを購入し、いよいよ映画館に向かう。

あらすじ

漫画家の岸辺露伴は、若い頃淡い思いを抱いていた思い女性から「この世で最も黒い絵」についての噂を聞く。
新作執筆中に、噂の絵がルーヴル美術館に所蔵されていると知った彼は、そのルーヴル美術館に足を運ぶためパリへと赴く。
しかし職員は絵の存在を知らず、データベースで見つかったのは使用されていない倉庫。
そこには本当に絵が存在するのか。
また、絶対的な黒が映し出すものとは、一体なんなのか──。

以下ネタバレあり感想


気になったポイント

①ちょっと間延びしている
元々ドラマだったものが映画になる時あるあるなんだけど、映画として間を持たせるために、途中の演出がダレてしまい間延びしてる感が少々あった。
特に露伴先生の過去回想の時。
もちろん最後まで見たら満足できる内容ではあるんだけど、リアルタイムで見ていると少し退屈に感じた。

②奈々瀬が情緒不安定すぎる
露伴先生が若い頃に淡い思いを抱いていた相手である奈々瀬。
そんな奈々瀬の言動とか行動がまぁ情緒不安定。
いい雰囲気かと思えば、急に冷たくなるし、露伴先生にいきなり抱きついたかと思えば、自分が描かれた漫画をズタズタに切り裂くし。
もちろんこれも最後までみたら、なんで奈々瀬がこんな行動をとったのか分かるようにはなっている。
だけど分かるまで奈々瀬という女性の行動が、ただのヒステリーを起こしてる哀れな女性として受け取れるためちょっと勿体無いような気持ち。

③露伴の記憶が戻ったのは何故?
この謎私いまだに解けてない。
露伴先生が窮地に陥った時に、自分をヘヴンズドアして全ての記憶を消すって司令を自分で書いて、その窮地を脱した。
しかし、その命令によって記憶を消した露伴先生なんだけど、手で顔を擦ったら消したはずの記憶が再び戻っていた。
これは何故?
原作読めば分かる?
都合が良すぎないか?
有識者、誰か教えて。

④黒い絵アニメ絵すぎん?
黒い絵が写った時に、そこに描かれていた女性の絵がなんとも現代的なアニメ絵で、これが悍ましい絵の正体?とちょっと残念な感じがあった。
もちろん綺麗な絵ではあるし、不気味さはあるんだけど、この絵は江戸時代くらいに描かれた作品だし、元々城のお抱え画家として仕事をしていた人の絵柄にしては少々お手軽なタッチ。
もう少し上村松園や甲斐庄楠音のような不気味な女性の日本画を期待していたからちょっと残念。

露伴先生の過去

露伴先生の青年期は間延びはしているものの、魅力あるシーンだったと思う。

あの思春期をようやくすぎたあたり、だけどまだ大人になりきれてない頃に出会う、年上の儚げ美人の破壊力って正直凄まじいものがある。

理想の年上のお姉さんって感じ。
美しくして、儚くて、気品があって、色気たっぷりで。
木村文乃氏はその役柄を見事演じきったわけで、同性の私からしても女性としての魅力方っぷりのキャラクターだった。

もし私が男だったら、いや、別に今の性であったとしても、あんな綺麗で、目を離したらいつか消えてしまいそうなシャボン玉のような美しく儚い美人に弄ばれたい。
そして性癖をめちゃくちゃに捻じm……。

兎にも角にも、そんな綺麗なお姉さんに淡い思いを抱いていた露伴先生も、今はあんなにすかしてるけど、きちんと男の子なんだなと感じ、グッとくるものがあった。

ルーヴルの装飾の美しさとパリの風景

普段美術館に行くのが好きで、展覧会の感想をあげるくらいには美術が好きな私にとって、パリ、そしてルーヴルという地は憧れof憧れ。

一生のうちに一度は行ってみたいそのルーヴル美術館が舞台となっている今作は、その地に降り立ってからというものすべての装飾やデザインが優美で美しくとても目を奪われるものだった。
元々宮殿として使用されていただけあって、壁の装飾に使われている彫刻や、天井画など細部に渡るまで洗練された芸術品で敷き詰められているものの、すこしもイヤらしさを感じさせない気品の高さが、ルーヴル美術館の魅力なんだと改めて感じた。

全て天気が悪く曇り空でのロケーションだったのが少し残念だったけど、その曇天の空と、露伴先生引いては物語の不可解さやミステリーの雰囲気がマッチしていて、これもこれで全然アリだな、と最終的には大満足。
後で監督のインタビューを確認したら、曇り空で撮ったのは敢えてとのこと。
監督の映像作品への拘り、そこに痺れるッ!憧れるッ!

黒い絵が持つ過去と後悔

黒い絵の正体は、かつてお城のお抱え画家の家系に生まれた山村仁左衛門という画家が、神木の真っ黒い樹液を採取して描いた奥さんの絵であった。
そして、その奥さんが奈々瀬だったというのは、映画見ていて驚きはあったものの、腑に落ちる真相であり、伏線は見事に回収された。

その山村仁左衛門の顔が露伴先生にそっくりだったし、奈々瀬の旧姓が岸辺なことから、奈々瀬は露伴先生の先祖ということが判明。
仁左衛門は奈々瀬と神木に触れたということで厳しく罰せられ、最後に仁左衛門は怨念で絵を完成させ、力尽きた。
その怨念が宿った黒い絵が鑑賞者の後悔や罪を映し出し、呪い殺してしまうという恐ろしい呪物になってしまう。

その罪や後悔に罪悪感があっても、なくても、自分の故意ではなくてもその呪いは自分に襲いかかってくる。

ここホラーすぎる。
ここで張り詰められていた緊張感が一気にピークに達し、目の前の惨状に釘付けになる。
めちゃくちゃ怖いけど。

あと、露伴先生の下宿先にいた頃の奈々瀬が、自分をモデルに絵を描かれて、髪の毛の黒の表現に拘るかつての旦那さんに似た顔の画家にヒステリーを起こしたのだと、最後の最後で納得できた。

高橋一生という俳優

私実は高橋一生氏が初恋相手。
といっても実際の人物にしたわけではなく、かつて彼が声優を務めた「耳をすませば」という映画に出てくる天沢聖司という役が私の初恋だったから、そういってるわけで。

それで、高橋一生という役者が好きなわけだけど、今回の岸辺露伴という役にこれほどハマる演技力の高さと、キャラクターの特異さにはいつもワクワクさせられる。

露伴先生のインテリ故の嫌味な感じとか、何を考えてるのか分からないけど、どこか安心感があるところとか、一緒にいてなんだかワクワクさせられる感じとか、すごく堪らない。

こういうドSだけど、目の前の人を助けずにはいられない感じの変人キャラをやらせて上手く演じこなせる俳優の中に、高橋一生氏はトップクラスだと思う。
後見た目が若い。
でも大人の色気もある。
最高。

最後に

岸辺露伴ワールドとパリ、そしてルーヴルの美しさが融合した今作は、ミステリーとしての魅力を2時間十分に堪能できる素敵な作品だった。

全てが耽美で、不可思議な世界観を味わいたい貴方に、是非。

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