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中園孔二個展「すべての面がこっちを向いている」

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2021年4月の記事一覧

久しぶりに中園孔二の個展を見た。

(堀 元彰|東京オペラシティアートギャラリー チーフ・キュレーター)

久しぶりに中園孔二の個展を見た。率直に感じたままを言葉にしようとすると、どうにも月並みな言い方になってしまうのだが、彼がまだ元気に制作を続けている、そんな錯覚を覚えずにはいなかった。

こんなに描きためていたのかと思うほどの、ほとんど未発表の作品群。一目で中園作品とわかる、見覚えのあるキャラクター風のモティーフや表現描写には違

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この文章は「批評」ではない。

(山本浩貴|金沢美術工芸大学 講師)

最初に明言しておきたいことがある。この文章は「批評」ではない。なぜか。僕が「批評」の執筆を頼まれたときに使用したことのない語彙が、これから書く文章には含まれているに違いないからだ。僕には中園孔二の作品を「批評」することはできない。では、この文章は何か。そう問われれば、おそらくは「感想」ということになるだろう。より適切な言い方をすれば、「降参宣言」に近いかもし

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彼が赴いたように

(石川 卓磨|美術家、美術批評家)

 わたしが中園孔二を知ったのは、彼が亡くなってからだった。わたしは何年ものあいだ彼の作品に出会い損ねていた。そして、今回初めてまともな形で出会えたように思えた。

 中園は赴くことを好んだ。彼は、インタビュー映像の中で渋谷や新宿などの不快感を感じるような“キタナイ”場所に行きたくなると話していた。そして、美術館などの“キレイ”な場所や森も好きであり、この三つの

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中園孔二「すべての面がこっちを向いている」〜高速回転の渦の中〜

(川島秀明|画家)

中園くんを知ったのは、2013年、小山登美夫ギャラリーでの初個展でした。
当時僕はベルリンに滞在していて、直に展示を観る事はできませんでしたが、iPadの画面からも何か収まり切らない勢いを感じ、「どんな人なんだろう」と遠くから想像を膨らませていました。

初めて直に観られたのは、翌年の 8 /ART GALLERY/ Tomio Koyama Gallery での個展。
展示

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私は彼に会ったことがない。

(桝田倫広|東京国立近代美術館 主任研究員)

私は彼に会ったことがない。だから作品についてはともかくとして、彼の生き様に触れるようなことは言えない。それでも、彼の小品やドローイングを見ていると、どうしても思ってしまう。2021年の彼の新作が見たい、と。もちろん、すでにつくられた作品だって、いくらでも新鮮な眼差しで捉えることができる。そして未知の発見に驚き、喜ぶ。絵画は動いているのだ。でもそういう

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海を感じるアトリエ 中園孔二

(水沢 勉|神奈川県立近代美術館 館長)

 不慮の事故で突然この世を去った画家・中園孔二の作品に触れるたびに「夭逝の画家」という神話の影がどこからか差してくるのを感じる。おそらく、それは日本近代のコンプレックスとどこかで密かに通じている。
しかし、そこからいかにも自然に、ことさらに力むことなく解き放たれていたのが中園孔二の世界ではなかったか。今回のまとまった展示に触れて改めてそのことを痛感した。

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今日、六本木へ行って中園くんの絵を見た。

(後藤繁雄 | 編集者、アートプロデューサー)

今日、六本木へ行って中園くんの絵を見た。そこには彼が残していった小さな絵やスケッチブック、遺品などが清潔な感じに展示されていた。奥のコーナーには友人が彼のインタビューを撮った動画が流れていた。

「あの絵の感じ」がいっぺんに蘇ってきて、あまり人と喋らないようにして直ぐにその場を去った。夜家に帰って、小山登美夫さんと2012年の「アートアワードトーキ

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––すべての面がこっちを向いている

(山峰潤也|一般財団法人東京アートアクセラレーション 共同代表)

中園さんがインタビュー映像で、そう答えた時、ぞくりとした

それは紛れもなく画家の言葉だ、と

「すべての面が、僕に描かれることを待っている」

描く側と描かれ側、そう二分された世界観

そういう感覚なのだと思う

ただ、こうした画家としての核心とは裏腹に

映像の中で言葉を紡ぐ彼の存在は、儚い透明感に満ちている

都会の雑踏も、

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中園くんがまた新しい絵を見せてくれた。

(水田紗弥子 | Little Barrelキュレーター)

中園くんがまた新しい絵を見せてくれた。塗りの美しさ、風景のような人物とレイヤーの複雑さ、彼自身が自転車で疾走しているイメージそのままの流れていくような背景や、たくさんの目、目、目。そう思うと洞窟壁画のような作品もあり、中園孔二像が常に更新されていく。ドローイングも、ドローイングメモも、リカちゃん人形も、意外性がつぎつぎに登場する展示だっ

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