中園孔二個展「すべての面がこっちを向いている」

ANB Tokyoでは2021/4/24-5/23の期間、中園孔二(1989-2015)の個展「すべての面がこっちを向いている」を開催します。このnoteでは、来場いただいた方々よりお寄せいただいたテキストを公開いたします。

中園孔二個展「すべての面がこっちを向いている」

ANB Tokyoでは2021/4/24-5/23の期間、中園孔二(1989-2015)の個展「すべての面がこっちを向いている」を開催します。このnoteでは、来場いただいた方々よりお寄せいただいたテキストを公開いたします。

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中園孔二個展「すべての面がこっちを向いている」3Dアーカイブ&フォトレポート公開

中園孔二個展「すべての面がこっちを向いている」</strong> 2021年4月24日(土)ー 5月23日(日) ANB Tokyo 3F&4F 展覧会詳細 多くの反響をいただいた中園孔二個展「すべての面がこっちを向いている」のフォトレポート、そして展示会場の全容をおさめた3Dアーカイブを公開いたします。 本展を見逃してしまった方、もう一度気になる作品をご覧になりたい方スマホやPCから、会場を回遊してをお楽しみください。 All images ©︎Koji Nakazo

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      すべての面がこっちを向いている。

      • 中園さんの絵の前に立って。

        三沢厚彦(彫刻家) 中園さんの絵の前に立って。 絵がどんどん動いていく、さあ、次に行こう、、やばいよ、やばい、、、何かに引き込まれる感覚をいつも感じてる、、絵の良し悪しを考える前に、、筆が走るんだ、、、絵の具も意思を持って自らキャンパスに蠢いていく、、、あ、この感じ?、、あっという間に時間が過ぎる、、、夜が明けるまで身を任せようか、、もう恐怖は感じない、、、一つの塊になった。 中園さんの絵の前に立つとそんな感覚と意識、そして画面からスピンオフする何かが心地よく身体に突き刺

        • 【近日公開予定】

          中園孔二が愛読していた小説家、舞城王太郎さんが、個展「すべての面がこっちを向いている」をご覧になって掌篇を寄稿してくださいました。 6月第1週に本展専用noteで公開予定です。 なお、中園孔二個展「すべての面がこっちを向いている」は5月23日(日)をもって終了いたしますが、会期終了後には展覧会アーカイブも公開いたします。 もう一度展覧会を振り返りたい方、新型コロナウイルス感染拡大予防のため移動制限などの理由でご来場が叶わなかった方、必見です。 どうぞ楽しみにお待ちくだ

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        • 中園孔二個展「すべての面がこっちを向いている」
          19本

        記事

          中園さんの作品を初めてみたのは中園さんの大学卒業制作でした。

          (山口つばさ|漫画家) 中園さんの作品を初めてみたのは中園さんの大学卒業制作でした。 「飾らないことによって露出する狂気」という言い方が適切かどうかわかりませんが、私はそういった作品に誠意を感じますし、単純に好きですし、自分もそうでありたいと思わされます。 そういう作品は画集で見ると怖さが前に出てくるんですが、実際にみると優しさのようなものを感じることがあり、中園さんの作品も例に漏れずそういった優しさを感じる場面がいくつもありました。 今回ドローイングやインタビュー映像を見

          中園さんの作品を初めてみたのは中園さんの大学卒業制作でした。

          すべての面とのあいだにある厚み

          (西澤徹夫|建築家) 自分にとってすべての面がこっちを向いているだけではなく、他の誰かにとってもすべての面がその人に向いている状態にあるということの確かさ。僕たちがモノを見たり触ったりすると同時に、モノたちも他の誰かを見返したり触り返したりしているということの確かさ。 絵画や建築が僕たちのさまざまな感覚の媒介となっていくことによって、なにか僕たちの営みのようなもの全体、見たり触れたりしたことの膨大な履歴のようなものが、自分と表面のあいだに近寄りがたく圧縮された空気のように

          明るいけど暗い

          (真心ブラザーズ YO-KING|ミュージシャン) 明るいけど暗い うるさいけど静か 満腹だけど飢餓   60年代のストーンズのような 澄みきった鶏のスープのような 湿度のあるサウナのような ことを思いました。

          無垢で複雑な「なにか」に会いたくて

          (村田沙耶香|小説家)  最初に中園孔二さんの絵を知ったのは、東京都現代美術館のコレクションに行った編集さんが、「すごい! 村田さんは絶対好きだと思う!」とメッセージをくださったときでした。そのときの印象は、「はっとするほど鮮やかで、それなのに複雑に絡みあう不思議な色彩だな、すこし怖いけれどかわいい、愛おしい」という、なんだか、無垢な感情しか生まれてこなくて、それがこの絵の力であるという気持ちでした。  編集さんも私も中園さんの絵に魅了され、本の装丁に使わせていただきまし

          無垢で複雑な「なにか」に会いたくて

          再び初めまして、中園さん。

          (黒沢聖覇|タイランドビエンナーレ・コラート2021コ・キュレーター、東京藝術大学)  ANB Tokyoで開催中の中園孔二展について執筆依頼をいただいた。わたしはこれまでモスクワビエンナーレを含む国内外の展覧会における中園作品の展示、キュレーションに関わり、自身の修士論文でも中園孔二の批評的文脈を確立するべく尽力した。また幸いなことにそれ以降様々な機会をいただき、何度も中園作品について、文章を執筆してきた。  しかし、きっと多くの鑑賞者がそうであるように、わたしもまた中

          中園孔二さんの絵が好きです。

          (ハナレグミ 永積 崇|ミュージシャン) 中園孔二さんの絵が好きです。 見ていると頭を通過する前に笑いがこみ上げてしまう。 なんでだろうな? 友達の痛快なアイデアや物語を聞かせてるもらってるような気分なのかな? どんな描き方なのか僕にはわからないけど どの絵も走りながら書いてるみたいに見える。 書いてる側から次もその次もそのまた次も浮かんじゃって やべ!俺天才じゃーん!?なんて言ってたんじゃないかな? 呼吸が上がっていくのが聞こえてくるんだけど どの瞬間にもワクワクが乗っか

          久しぶりに中園孔二の個展を見た。

          (堀 元彰|東京オペラシティアートギャラリー チーフ・キュレーター) 久しぶりに中園孔二の個展を見た。率直に感じたままを言葉にしようとすると、どうにも月並みな言い方になってしまうのだが、彼がまだ元気に制作を続けている、そんな錯覚を覚えずにはいなかった。 こんなに描きためていたのかと思うほどの、ほとんど未発表の作品群。一目で中園作品とわかる、見覚えのあるキャラクター風のモティーフや表現描写には違いないが、つい最近描かれたばかりのように、どれも真新しく新鮮に映る。また、つねに

          ––すべての面がこっちを向いている

          (山峰潤也|一般財団法人東京アートアクセラレーション 共同代表) 中園さんがインタビュー映像で、そう答えた時、ぞくりとした それは紛れもなく画家の言葉だ、と 「すべての面が、僕に描かれることを待っている」 描く側と描かれ側、そう二分された世界観 そういう感覚なのだと思う ただ、こうした画家としての核心とは裏腹に 映像の中で言葉を紡ぐ彼の存在は、儚い透明感に満ちている 都会の雑踏も、海や森の中も、 同じようにナイトクルージングしていた彼の心の襞 それが絵画に

          ––すべての面がこっちを向いている

          この文章は「批評」ではない。

          (山本浩貴|金沢美術工芸大学 講師) 最初に明言しておきたいことがある。この文章は「批評」ではない。なぜか。僕が「批評」の執筆を頼まれたときに使用したことのない語彙が、これから書く文章には含まれているに違いないからだ。僕には中園孔二の作品を「批評」することはできない。では、この文章は何か。そう問われれば、おそらくは「感想」ということになるだろう。より適切な言い方をすれば、「降参宣言」に近いかもしれない。 もう少しだけ中園と「批評」の話を続けると、彼の作品は批評家にとって「

          彼が赴いたように

          (石川 卓磨|美術家、美術批評家)  わたしが中園孔二を知ったのは、彼が亡くなってからだった。わたしは何年ものあいだ彼の作品に出会い損ねていた。そして、今回初めてまともな形で出会えたように思えた。  中園は赴くことを好んだ。彼は、インタビュー映像の中で渋谷や新宿などの不快感を感じるような“キタナイ”場所に行きたくなると話していた。そして、美術館などの“キレイ”な場所や森も好きであり、この三つの異なる場所へと赴くサイクルが自分にはあると話していた。場所自体に目的があるという

          中園孔二「すべての面がこっちを向いている」〜高速回転の渦の中〜

          (川島秀明|画家) 中園くんを知ったのは、2013年、小山登美夫ギャラリーでの初個展でした。 当時僕はベルリンに滞在していて、直に展示を観る事はできませんでしたが、iPadの画面からも何か収まり切らない勢いを感じ、「どんな人なんだろう」と遠くから想像を膨らませていました。 初めて直に観られたのは、翌年の 8 /ART GALLERY/ Tomio Koyama Gallery での個展。 展示作業にとても時間がかかったと聞きましたが、やはりこの時も、収まり切らずに全体が動

          中園孔二「すべての面がこっちを向いている」〜高速回転の渦の中〜

          海を感じるアトリエ 中園孔二

          (水沢 勉|神奈川県立近代美術館 館長)  不慮の事故で突然この世を去った画家・中園孔二の作品に触れるたびに「夭逝の画家」という神話の影がどこからか差してくるのを感じる。おそらく、それは日本近代のコンプレックスとどこかで密かに通じている。 しかし、そこからいかにも自然に、ことさらに力むことなく解き放たれていたのが中園孔二の世界ではなかったか。今回のまとまった展示に触れて改めてそのことを痛感した。  絵画を絵画として成立させる条件が、まさに過不足なく満たされたときに、それを