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パチスロ半グレ隊 オッチン 1−2

 矢沢雪男ことオッチンが浮かない顔をしてパチンコ屋『ミワミワXY−Z』の店内に現れた。
 オッチンは店じゅうの台を全てチェックして、ウロウロと歩き回る。オッチンは現在38歳。ロング汚ヘアー、中太り、風呂嫌い、不眠症の男だ。
『ミワミワXY−Z』 の常連で、この男を知らぬ者は存在しない。と言っても常連はオッチンを腫れ物扱いして、誰も近寄らず、この男が隣の台に座った時は、すみやかに離れて距離をとった。オッチンはナルシストだから、人に興味がない。マイペースに、人をないがしろにする生き方を続けている。
 お目当ての台『クサスロ牧田みゆ』の前で足を止め、仁王立ちしてほくそ笑んだ。
 身にまとっていた黒のロングコートを脱いで、上半身裸になり、意外とブヨブヨボディだが、オッチンは気にせず80センチもの長いタバコをくわえた。
 しばらくの間、火をつけず物思いにふけり、色々と考えていた。
 1時間経って、台にメダルを投入して命がけの闘争を開始した。
 目が死んでいたオッチンだが、輝きはよみがえる。しかし、今日は負ける。
 無意味にメダルが何十枚か、頭の上から降ってきた。少し痛かったが、そのまま勝負を続けた。店内はとにかく暑くて、オッチンは醜い体に臭い汗をダラダラと笑えるほどに流している。
 急にアウディが店内に入ってきて暴走を始めた。負けてしまった。アウディはオッチンの前で止まり、火のついたタバコをオッチンに投げつけると、そのまま去っていった。オッチンは泣きながらくそ踊りをおどった。


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