支店長3

ドラマ『集団左遷‼』の原作に学ぶ、新天地で信頼を集める方法

新年度を迎え、進学や就職・異動などで新しい世界に飛び込む人が多いこの時期。飛び込んだ先が自分と同じ考え方の人ばかりなら良いのだが、そう簡単には行かない。

江波戸哲夫著『新装版 銀行支店長』も、そんな主人公の新生活が舞台のお仕事小説だ。

片岡史郎は、大手・三友銀行の支店長。ある日副頭取に呼び出されると、三友銀行最難関の支店、飯田橋支店(三友銀行と合併した大昭和信用金庫の元支店。そのため、多くの元大昭和信用金庫の行員が在籍)の新支店長を命じられる。
行員たちは、大昭和信用金庫のゆるい風土で働いてきたため、規律を重んじ猛烈に営業する三友銀行のやり方に強く反発し、営業成績が伸びない。
片岡支店長は、そんな行員たちをまとめあげ、支店のノルマ達成に奔走する。すると、支店長に心動かされた行員が一人、また一人と支店長の味方になっていくのだった。

時代の変化に苦しんで

この小説が初版が出たのが1992年。最初に断っておくと、主人公の片岡支店長は今の時代に合わない人間かもしれない。

男性行員は始業時刻の50分前、女性行員は30分前に出勤するのが当たり前と思っているし、サービス残業をしない部下をあまり良く思っていない。

仕事が第一優先で家庭を顧みず、「自分が年収1,500万円を稼ぎ出しているのだから、家のことは妻がするのが当然」「出世すれば妻も喜んでくれる」と信じ込んでいる。

「なんだ古い時代のサラリーマンの話じゃないか」

そう思って読むのをやめてしまうのはあまりにもったいない。

なぜならば、職場で自分と周りの考え方の違いに悩むのは、令和を迎える現代にも、よくある話だからだ。

考え方の違いを受け入れる

この主人公が評価すべきポイントは、自分と周りの考え方の違いを受け止めているところ。そして、内心でははらわたが煮えくり返りながらも気持ちを鎮め、一つ上の目線から部下を操っているところだ。

小説では本当の気持ちが()内に描かれているので、胸中を察しながら楽しく読むことができる。

部下から「前の支店長が上手くいかなかったのは怒鳴っていたのが原因」と進言を受ければ「怒鳴らない」と誓って守る。

「自分が納得できる目標でないと達成できなくても当然」と言われれば、支店が置かれている状況を丁寧に説明した上で無理強いはしない。

とは言え、営業成績を上げなければ支店長自身の進退が危ぶまれる。そのため、部下の未達分を支店長が先陣を切ってカバー。自分の決まりそうな案件も、取引先に説明して部下の手柄にしてあげるといった、男気を発揮。

新しい環境で周りに信頼されるためには、周りの考えを冷静に受け止めながらも力を引き出すこと。そして、がんばる姿を見せ続けることが大切なのかもしれない。

粘り強く部下の指導や営業活動を行う、サラリーマン姿がなんともかっこいい。『新装版 銀行支店長』は、時代錯誤と戦いながらがんばるかっこいいおじさん‟片岡支店長”に、勇気をもらえる一冊だった。

また、銀行の話にしては営業色が強く、外回りや商談の内容が事細かに描かれているのは銀行出身の作者ならでは。銀行のことは全く知らなかったが、「意外と泥臭い仕事なんだな」と親近感を持てるようになった。

ドラマ化決定

ちなみに本書は4月21日(日)よる9時よりTBS日曜劇場で連続ドラマとして放映される。片岡役は福山雅治、反発する部下を香川照之が演じる。

銀行のドラマと言うと大ヒットドラマ『半沢直樹』と比べられるので、どう展開されるかが見どころ。毎週、片岡支店長の活躍に勇気づけられながら、仕事に奔走したいと思った。

編集:アカ ヨシロウ

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