見出し画像

ユーザーの製品活用について考える|Onboardingの効率化_v2

「顧客起点のサービス提供が自社の利益を最大化する」をテーマに記事を書いています。
前回の記事はこちら
https://note.com/nakayamada/n/n26659188c40b

今回の論点

前回、Onboardingの投資最適化について途中で挫折したので、今回は少し目標をさげて「ロータッチにおけるOnboardingの最適化」について考えたい。

目次

1. 顧客観点でみるロータッチ移行
2. オペレーション観点でみるロータッチ移行
3. ファイナンス観点でみるロータッチ移行

1. 顧客観点でみるロータッチ移行

SaaSや顧客起点の経営を目指すならば、1にも2にも問い続ける質問は「顧客はプロダクト・サービスに価値を感じているのか?」ではないか。

多少なりとも営業を経験した方であれば、商談において自信を持って答えたいのは「我々のプロダクトを購入すればあなたの問題は必ず解決する。なぜならばすでに同じ問題を解決したユーザーがいるからだ」だ。

「プロダクト・サービスに価値を感じている」を定量・定性的に測定するにはどうすればいいか。

Q.我々はハイタッチOnboardingによって顧客のサービス活用を支援できているか?

顧客観点で考えるならばこの問に答えるところから始めたい。コスト度外視。価値を感じているかどうかに「yes」といえないと次のstepにはいけない。
どのような指標があり得るだろうか。

ログイン関連(Monthly, Weekly, dailyのログイン状況や法人全体のログイン率など)・主要機能の活用状況・当該サービスを利用した結果向上するだろうKGIなどが挙げられるか。

また、プロダクト/サービスのリリース初期にはCS担当者の定性情報も参考になるだろう。

これらハイタッチOnboardingで定義した、顧客がサービスを活用していると判断できる定量/定性指標を元に、同様の指標をロータッチOnboardingでいかに達成してもらうかを考えるのが重要だろう。

Q.ロータッチOnboarding移行で何が変わるのか

ハイタッチOnboardingに比べて何が変わるのだろうか。
まずはじめに思い浮かぶのはOnboardingにかかる人的工数の削減だろう。Onboarding担当者が手厚く支援する状態から簡便なOnboardingへ、もしくはプロダクトやコンテンツ・ユーザーコミュニティなどがOnboarding担当者の支援を代替してくれるかもしれない。

コンテンツやプロダクトそのものがOnboardingに寄与するフェーズはテックタッチと呼べるので、ユーザー側の推進者のみ支援するなど、支援対象が限定的になる選択も考えられる。

いずれにせよ、ハイタッチOnboardingで提供した価値を損ねることなくコストを下げるにはどうすればいいのかを念頭におきながらハイタッチOnboardingも設計する必要がある。

2. オペレーション観点でみるロータッチ移行

オペレーション観点でみると、ハイタッチ支援とどう違うのだろうか。

Q. 顧客の状態は見える化されているか
ハイタッチ支援に比べ、ロータッチ支援においては顧客との会話や直接的なコミュニケーション頻度がさがると容易に想像できる。
それらを補ってなお余りある支援体制は整っているだろうか。

例えば顧客の状況を把握するために...

・プロダクトから得られるデータ(アクセスログ・Q&A閲覧状況等)
・カスタマーサポートに寄せられるチケット数
・NPS等のアンケート情報
・社内イベントへの参加状況

などが参考値になるのではないかと思い浮かぶ。そしてそれらのデータは独立していて担当者が容易にアクセスできる状態にないかもしれない。

そのため、はじめは属人的でもいいので、ユニークネスを担保する法人IDやユーザーIDを元に散らばった各データを名寄せして、スプレッドシートで簡易ヘルススコアを作成するなどできるところから始めたほうが良い。

並行してデータ基盤の整備やヘルススコア設計のSaaS導入など進めていけば良い。

Q. CS担当者のスキルセットや採用におけるjob descriptionはどうか

ハイタッチ支援の担当者とは異なるだろう。彼らがプロジェクトマネジメントや折衝・交渉力といったスキルの必要性が高い一方、ロータッチ支援の担当者ではデータを元にしたアプローチがメインになる。
データ分析力や担当社数に鑑みると行動量も重要かもしれない。自然と若くて給与レンジもハイタッチ支援担当者の少し下あたりになるかもしれない。
少し脱線するならば行動量と熱量のある若手のキャリアパスや人材育成体制についてもこのあたりで検討が必要になりそうだ。

3. ファイナンス観点でみるロータッチ移行

CS組織に投資してもらうためには経営陣やCFOに対してファイナンス観点でも説明できねばならない。どのような議論が考えられるだろうか。

Q. 我々は顧客のLTV・payback periodをどう解釈するべきか

資金調達状況等にもよるが、当該サービスをいつ黒字化できるか、そのために顧客セグメントごとにどのような収益性が考えられるのか。
CSに投資してもらうには、CS活動のROIを示す必要がある。その中で重要なのがLTVやpayback periodなのではないか
(ファイナンスの専門家の皆さんにはぜひそれ以外の論点もご教示いただきたいです)

今回は触れていないが、おそらく提案時にはOnboarding後のロータッチ支援も言及するだろう。
ロータッチ支援への移行=1人あたりが担当する顧客の増加
とも読み取れる。

ハイタッチ支援とロータッチ支援の違いを整理してみる。

画像1

非常に簡単なモデリングを行っているが、一般的に高単価な顧客はハイタッチ支援がしやすくCSMのサラリー(ないし社内におけるレンジ)も高いように設定した。

a. APRUに対してどこまでコストを抑制すべきか
まずはじめに論点となるのは、「payback periodが何ヶ月で、そのために他のコストと合わせて人的コストはどこまで抑制すべきか」という点ではなかろうか。
ファイナンス観点であれば、なるべく安いコストで1日でも早く回収したいのが本音だろう。

そのオーダーに対して、「顧客セグメントAにおいてはxxヶ月かかるだろう。なぜなら当該セグメントの顧客満足度・サービス活用度はxxとなっており、この要因はyyyがあるからだ。改善の打ち手としてXXXやYYYを実行しており、この検証にP人工をQヶ月かけたい」といった議論がなされるのではないだろうか。

または、「ロータッチセグメントにおいて、X人の人員補強を行いたい。現状、当該セグメントの顧客満足度はNPSでAとなっている。改善の打ち手としてコンテンツ製作やプロダクトによるテック支援も進めているが、実装にYヶ月かかると想定されている点、当該セグメントにおける顧客群のITリテラシーに鑑みると一定の人的支援が与える顧客満足度の影響は大きいと考える。」などと提案するのかもしれない。

b. プライシングに対する提案
後者の提案においては、逆にプライシングを検討することで1人あたりの担当顧客数をへらすといった観点もあるかもしれない。

「プライシングについて、法人規模別の価格帯を打ち出したい。例えばAといったプランはどうか。この際、プライシング変更について顧客の理解が得られるのかといった観点があるが、CSとしてSLA(Service level agreement)をしっかり説明していて、具体的な運用相談については寧ろもう一歩支援が欲しいとの声ももらっている。プライシング変更に伴う担当顧客数減は、CS担当者が1社あたりに介入できる余裕を広げる。SLAの改訂やそれらによる顧客満足度・LTVの向上に期待できる」

といった会話ができるのではなかろうか。

終わりに

今回はロータッチ移行における論点を書いてみた。次回はテックタッチについて考えてみたい。
筆者はテックタッチの経験がほとんどないので、ほとんど妄想のような形になるがお付き合いいただきたい。

Twitter:@nakayamada62
部署横断的な推進業務の進め方や稟議提案などざっくばらんに相談乗ります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?