見出し画像

臨床心理士と可愛い絵本④

『臨床心理士と可愛い絵本』と題して、
シリーズでお送りします(更新は気ままに〜です)。
 
幼い頃に好きだった絵本を
大人になった今あらためて手にした時、
そこには深くて広くて大きなメッセージがあるように感じました。
 
"大人になったから" だけでなく
"臨床心理士として" の視点も増えた私が、
一冊の可愛い絵本に想いを寄せて、語ります。
 
=====
 
第4回目にご紹介するのは
【 くらい くらい 】
(はせがわせつこ:文 やぎゅうげんいちろう:絵 福音館書店)
 
〈あらすじ〉
本を開くと、そこは真っ暗。
手足のある何かの影は見えますが、
何なのか、誰なのか、全然わかりません。
 
「でんきを つけて ちょうだい」
と言われて明かりをつけると・・・
 
そこには、可愛くて楽しいお友だちが!
 
でも次のページをめくると、また真っ暗。
 
再び、「でんきを つけて ちょうだい」の声で明かりをつけると
ちょっといたずらっ子のような、嬉しそうな表情の友だちに出会えます。
 
最後のページの友だちは、
大事な宝物を持って大きな笑顔を見せてくれます。
 
=====
 
 
この可愛い絵本を読んで、
臨床心理士Tは、こんなことを考えました。
 
(1)ひとりでは不安でも、誰かと一緒なら、できる!
 
この本は、題名の通り表紙は暗く、最初のページも真っ暗です。
得体の知れないシルエットだけは見えていて、
暗い部屋のドアをそーっと開けて中をうかがう時のような
なんだかドキドキ、バクバク、不安なあの気持ちよぎります。
 
この感覚は、4月の新生活にも似ているかも知れません。
新しいクラスメイト、新しい職場環境・・・
まだ知らないこと、初めてがいっぱいの中に入っていく時の緊張感。
真っ暗な中を慎重に手探りで進んでいく、期待と不安が入り乱れた感覚。
 
皆さんもこのような感覚を抱いたことがあるのではないでしょうか。
 
この絵本には、真っ暗な絵と共に
「でんきをつけてちょうだい」というセリフがあります。
 
「でんきをつけようかな」という独り言ではなく、
「〜してちょうだい」という、誰かから誰かへのお願いのセリフです。
つまり、ここにいるのは一人ではないようですね。
 
私はこのセリフがとても素敵だなあと思います。
暗くて不安な時、よく見えなくて困っている時、
「明かりをつけてもらえませんか」
とSOSを出せているように感じるからです。
 
新生活には期待よりも不安の方が何倍も大きい・・・
目の前が真っ暗でこの先に進むなんて無理だ・・・
という時、
「でんきをつけてちょうだい」=「ねえ、助けて」
が言えたなら、
この絵本のようにパッと明るくなって、
楽しい気持ちが訪れるのかも知れません。
 
一人じゃなくて、誰かと一緒になら、
やってみようかなと勇気が湧くことってあるよなあ〜
と、この絵本からも感じました。
 
 
(2)不安のその先に、ワクワクがある!
 
絵本のページは、暗い、明るいが繰り返されます。
読み進めるうちに、小さな気持ちの変化が起きてきます。
なんだか暗いページも楽しみになってくるのです。
 
最初はあんなにも不安だったのに、
次は誰かな?次はどんな表情をしてるかな?と
すっかりのめり込んでいる自分に気づきます。
何度も繰り返し読むうちに、
最初は見過ごしていた細かい部分にも目がいき
「この靴かわいい〜」なんて新しい発見もあります。
 
暗さに少しずつ慣れてきたり、
明かりをつければ怖くなんかないと分かったり、
暗い→明るい、を何度も経験したからこそ、
いつの間にか不安は小さく、楽しみが大きくなっているのです。
 
このことから、
不安なことがあっても、誰かと一緒になら乗り越えることができ、
その先にはきっと、嬉しいこと楽しいこと面白いこと、
笑顔になっちゃうことがあるんだ!と気づかされます。
 
実際に人生の中で起きる“不安なこと”は、
絵本のページをめくるほど簡単に乗り越えられるものではありません。
絵本でも明るいページの次はまた真っ暗なように、
せっかく前向きになったのにまた気持ちが沈む、ということはよくあります。
 
それでも、
その暗さを少し楽しめるようになったり、
また暗くても大丈夫と思えるようになったりするのは、
周りには助けとなる存在があることを知り、
乗り越えてきた経験があるからこそなのだと思います。
 
私は心理士として、
いつもあなたに明かりを灯す人になりたい、とも思いますが、
それよりも、
「また暗くなっても大丈夫。
その時は誰かに明かりをつけてもらったらいいんだよね。」
ということ一緒に体感していけるような存在でありたい、と思うのです。
 
 
====
 
『臨床心理士と可愛い絵本』いかがでしたか?
第4回目 お付き合いいただき ありがとうございます。
 
同じ絵本であっても、感じ方は多様です。
同じ人が同じ絵本を読んでも、
その時の体調や気分によって
感じ方や気になるところが変わることもあります。
 
あなたが【 くらい くらい 】を読んだ時
どう感じ、どんなことを考え、
どんなメッセージを受けとったか、
きかせていただけましたら嬉しく思います♪
 

大阪駅・梅田駅徒歩10分、地下鉄中津駅すぐ
大阪中津臨床心理カウンセリング
http://osaka-shinri.site/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?