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日々雑感15 風の教会

建築学を勉強していたのは、もう20年前のことだ。
好きな建築家の一人に安藤忠雄さんがいる。シンプルな形態、コンクリートと自然の融合が、設計の中心となっている。

神戸市灘区にある風の教会は、20年前から知っていた。なかなか訪れる機会がなく、やっと現物を見ることができた。安藤建築の初期作品は住宅や教会が多く、通常は非公開とされている。今回の風の教会も、六甲山のアートイベントの1つとして公開された形だ。

コンクリートで囲まれた四角の箱。伝統的な教会にある三角屋根はない。左側面が一面ガラス面になっており、圧迫感はない。壁の切れ目から漏れる自然光が陰陽を作り出す。正面の祭壇にはアート作品が並んでいるけれども、通常はシンプルなテーブルだけなのだろう。
訪れた日は霧がかかるほどの曇天だったが、充分に明るい空間だった。

わたしが挙げた結婚式の教会を思い出した。シンプルな四角い構造、ガラスの多様、そして曇天。結婚式当日は暴風雨だったけれど、教会の中は静かで明るかった。風の教会に、どこか似ている。

本だけで見ていた風の教会の写真が、記憶に残っていたのかもしれない。祈りの本質とは、と安藤忠雄さんが著述していたと思う。
西洋の教会は必要があって、あの形になった。現代の、そして日本に必要な形とは何か。
わたしが好きなのは、哲学のある建築である。

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