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「はじめて話すけど……小森収インタビュー集」小森収


《和田 『アニーよ銃をとれ』は実話――バッファロー・ビルのワイルド・ウェスト・ショウ――に基づいていて、西部をテーマにしたサーカスなんですね。だけど、あの中で歌われる「ショウほど素敵な商売はない」は、西部とかサーカスとかピストルを撃つとか、そんな言葉が出て来ない。客の拍手がよくてとか、客の入らない日もあるとかね。これはワイルド・ウェスト・ショウだけではなくて、あらゆるショウ・ビジネスに使える歌なんです。これも、観たときにそんなことを考えてるわけではないけど、ちょっと経ってから、あ、そうなんだと思ってね。やっぱり巧いな、と思うわけね。そういうのは、アメリカのミュージカルに共通してて、ミュージカルの中の曲がミュージカルから独立して、スタンダードとして残っていくじゃないですか。(中略)「ゼイ・セイ・イッツ・ワンダフル」は、シチュエーションを全然無視して、でも、そこで歌うことによって、そこでしか使えないっていうふうになっている。だから、その曲はスタンダードになるんですよ。物語は忘れられても、それだけで独立できる。ほとんどのアメリカのミュージカルは、そういう作り方がされてますね。》(「和田誠  バタくささのルーツを探る」325−326頁)

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