【第7回】「自分はすごい仕事をしている」という勘違い
転職希望者の中には様々なバックグラウンドの方がいて、それぞれ多種多様な業務に携わっています。
以下は、初めて転職を検討するようになった、日系大手企業の中堅社員との会話です。
「それで、今はどのような仕事をされているのですか?」
「現在、全社が注目する海外の大型プロジェクトに携わっています。すでにかなりの規模の資本を投下し、現地の多くの企業とも共同で作業に当たっていて、近い将来、巨額の利益を見込んでいます」
「そうですか、それはすごいですね。きっとやりがいもあるでしょう」
「はい、毎日忙しく過ごしています」
「それではお聞きしますが、毎日『何を』忙しくされているのですか?」
「というと?」
「あなたが自ら行っている実務を、具体的に説明して欲しいのですが」
「担当業務ですか、そうですねえ……」
その方はしばらく考えた後で、
「上司から指示された内容を現地にメールして、返事があると上司に報告します。急ぎの場合は電話で対応しています。
それから、海外から重要なお客様が来社した時には、他のメンバーと共に入り口でお出迎えします」
「なるほど。それでは、ほかに何か担当している実務はありませんか?」
「そうですねえ。そういえば、社内ミーティングの議事録はすべて私が作成し、上司のチェックを受けた後でコピーして関係者に配布しています」
「分かりました。それで次は、どんな仕事に就いてみたいのですか?」
「はい、現職で培ったグローバルなビジネス経験を活かして、是非、外資系企業にチャレンジしてみたいんです!」
実は、この中堅社員が冒頭に説明した業務内容は、自分が所属する部署の「事業全体」を述べたに過ぎません。
一方で、個人として担当している「実務」はというと、概ね上司をサポートする「補助的な業務」です。
従って、即戦力を求める外資系企業への転職は、正直「かなり厳しい」と言わざるを得ません。
日系大手企業で働く場合、年功序列の影響もあって、極めて初歩的な仕事を強要されるケースもあります。これは、ある意味致し方ないのかもしれません。
しかし、中堅社員が「自らグローバルビジネスに携わっている」と信じて疑わない仕事は、実は、上司の「サポート業務」に過ぎない場合もあるのです(サポートも大切な仕事ではあるのですが……)。
次回につづく(毎週月曜日若しくは火曜日に投稿予定)
(本文は、弊著『四十歳を過ぎて初めて転職の二文字が頭をよぎったら読む本』<ブイツーソリューション>より一部抜粋編集し、シリーズ化したものです)
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