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美容室の開業 業務委託サロンで働く個人事業主はなぜコロナ融資が借りられないのか?

 業務委託サロンで働く方から、コロナ融資を受けたいのですが?というご相談を頂きました。残念ながら、美容室を経営している個人事業主の方は融資の要件を満たせばコロナ融資が借りられますが、業務委託サロンで働く個人事業主の方は融資の条件を満たしてもコロナ融資が借りられません。
 税務署に開業届を提出して業務委託サロン、シェアサロンで働いている人は「事業所得」で確定申告をしていると思います。この方たちは「事業所得」で確定申告をしていますので分類としては個人事業主となります。美容室を個人で開業している開業している人も同じ個人事業主。同じ個人事業主でも、使える融資制度に違いがあるのはなぜでしょうか?

○事業性と独立性の判断基準
 日本政策金融公庫や民間銀行で事業の融資を受けるためには一定の要件を満たしている必要があります。その要件というのが、「事業性」と「独立性」といわれる判断基準です。
 
〇「事業性」とは?
 事業とは、独立、継続、反復して行われる仕事のことで、その仕事を独立、継続、反復していると個人事業と言われ、個人事業主の人は確定申告の際には「事業所得」で申告をすることになります。 
 コロナの影響を受けて50%以上の売上減少で「持続化給付金」が受けられる制度がありましたが、私の知っている限り、かなり多くの業務委託サロンで働く方が「持続化給付金」を受け取っていたようです。業務委託サロンで働く個人事業主の方は、独立、継続、反復の要件を満たしていると考えられるので、この事業性に関しては概ね認められるのではないかと思います。ただ、融資制度の判断基準である「事業性」はもっと厳密に事業を判断しているようです。

〇「独立性」とは?
 「独立採算制」という言葉がありますが、大きな会社などで、その中にある組織のそれぞれが独立して収支の採算を取ることを目指す体制のことを言います。1つのお店だけで売上から経費を支払って採算が取れるような体制を作っている状態を指します。
 業務委託サロンで働く人も、業務委託先からの売上と自分が負担する経費を支払って採算が取れる仕組みを作っている訳ですが、金融機関が融資の判断で見ている「独立性」とは少し意味が違うようです。
 美容室で言えば、場所を借りているだけでは「独立性」があるとは判断されないようで、美容室は保健所の許可を受けないと営業が出来ないと決められていることから、この許可があるかどうかが「独立性」の判断がされているようです。

〇日本政策金融公庫、民間銀行の事業資金を借りるには?
 「事業性」と「独立性」があるかどうかで事業融資が借りられるかどうかが決まります。この判断基準は「保健所の許可」を受けているかどうかで判断されます。保健所の許可を受けた事業でないと融資が受けられません。日本政策金融公庫で創業融資を受けた場合、融資申請をして、自己資金も準備して、美容師としてのキャリアもしっかりと準備してきた方であれば、創業融資を受けられる可能性が高くなりますが、たとえ、融資が受けられる!という承認が出たとしても、保健所の許可が出ないと、融資金を受け取ることは出来ません。又は、受け取った融資金を返さなければいけません。

〇保健所の許可があるかどうか。
 保健所の許可を受けて営業している美容師であれば、事業をしている者として、日本政策金融公庫、民間銀行から事業用資金を借りることが出来ますし、売上の要件を満たせばコロナ融資も借りることが出来ます。業務委託サロン、シェアサロンで働く方も個人事業主ではありますが、美容業に関しては許認可制になっていることで、保健所の許可があるかどうかで事業性、独立性が判断されているのです。

〇おわりに
 業務委託サロンで働く方は、個人事業主でもコロナ融資は借りられません。でも、逆に、既に事業をしている人として確定申告をしていたとしても、今から美容室の開業のためのお金を借りようとした場合は、既に事業を開業しているので、本来は創業融資が受けられないのですが、実質的には独立ではなく、お勤めの美容師を実質的には同じとして、創業融資を受けることは可能です。事業として業務委託サロン、シェアサロンで働き続けることよりも、将来の独立のための通過点として活用される方がメリットがあるのではないかと思います。

美容室専門税理士 中嶋 政雄

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