美容室の開業 共同経営で開業はできるのか?
自分ばかりが損をしているのでお店をやめたい。どうしたらいいのか?というご相談を受けました。この方は、もう一人の方と共同で美容室を経営していました。
開業のお金を借りる時は自分が、保健所の登録も自分、お店の賃貸契約も自分、でも、お店のお金は全部、半分。もともと先輩、後輩の中で、一緒にお店をやろうと声を掛けられ今までやって来たけど、都合の悪い事だけ自分がやらされている。いい加減、この関係をやめたい。
共同経営の難しさに直面したご相談でした。共同で美容室を開業したいと言われる方は実は多いです。今回は共同経営の難しさ、共同経営で経営する場合の対応策についてご紹介します。
〇共同経営の難しさ
共同で経営する場合の多くは、二人が同じ立場で、同じ責任を負う、ということになります。もちろん、立場や責任、報酬についてはお互いに取り決めをすることになると思いますが、多くの場合は、責任も報酬も対等であることが一般的です。開業する時は、二人で経営した方がメリットがあると感じやすいのですが、しばらく経営すると、さまざまな場面で難しさを感じることが多くなります。
冒頭でご紹介したケースでは、先輩、後輩の関係で共同経営をスタートされていました。後輩の方も、最初は一人でお店を経営するよりは安心だし、リスクも半分にできるから、ということで先輩からの申し出を受けてお店をスタートしました。しかし、利益は確かに半分でも、お店は1つ。お店を経営する上でやらなければならない手続きはすべて自分がやらなければならない。お金は半分でも、万が一の借金のリスクは自分にある。次第に、理不尽さを感じるようになったようです。お店の経営が順調に伸び始めると、開業当初はリスクだと思えていたことも視界から消えて、次第に、経営のやり方、考え方が合わなくなってくることもあります。一番はお金の問題でトラブル。金銭的な問題を完全に半分にするというのは現実的にはとても難しいです。
〇共同経営するメリット
共同経営で美容室を経営することのメリットは、経営者としての覚悟を持った人が二人いる、ということです。経営者と従業員では、見ている方向、やるべき仕事への責任感が違います。最も重い責任を果たす役割が二人いる訳ですから、お互いが力強いパートナーとなります。共同経営のメリットを生かして、開業から4年目で2店舗目を出した方がいます。2店舗目出店の課題は、店舗責任者の採用、育成となりますが、1店舗目から二人の経営者がいる状態ですから、2店舗目の出店準備が整えば、すぐにでも出店が可能です。二人の方がリスクが押さえられる、という発想ではどちらかと言えば上手く行かず、二人いることで力が大きくなる、と考えている方の方が上手く行くように見えます。リスクを半分に、という考え方自体が失敗を前提に考えていますから、そもそも経営が成功するはずはありません。
〇共同で美容室を経営するには?
一番簡単なのは、法人で経営することです。個人事業だと、どちらかが事業主で、どちらかが給与をもらう関係。確定申告では事業主は事業所得で、給与をもらう人は給与所得。所得の違いから、税金面も含めて、二人を完全に平等にすることは出来ません。二人とも個人事業主というやり方もできないことはないのですが、もし、二人以外の人を採用するとなると、契約は半分には出来ませんから、どちらかでの採用となり、雇用のやりにくさも生まれます。法人で経営するのではあれば、株式も半分、役員報酬も二人とも同じ金額に設定するだけで、金銭的な不公平感は生まれません。トラブルの原因がお金であることを考えると、法人で共同経営をするのがベストな選択肢と言えます。
〇おわりに
開業当初の感じているリスクと、開業した後に見えてくるリスクははっきり言って違います。開業前は、そもそも経営が成立するのか?という状態ですから、兎に角リスクを押さえられそうな選択をしてしまいがちですが、共同経営をしている人のお店の成長が早いとは限らず、むしろ、共同関係が原因でトラブルとなることが多く、成長にスピード感はあまり感じません。開業前ではなく、開業した後の状況を見据えて、共同経営で開業するかどうかを決めることが大切です。
美容室専門税理士 中嶋 政雄
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