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2024年 51冊目『化石に眠るDNA-絶滅動物は復活するか』


映画ジュラシックパークでは、琥珀の中に残された蚊が吸った恐竜の血液からDNAを取り出して恐竜を蘇らせる。

長く冷凍状態であったマンモスなどが見つかって、そのDNAが分析され、それからマンモスが復活するかもというニュースを見た事もあります。

ワクワクしたのを覚えています。

そして、無自覚に、それはできるんでしょうって思っていました。

これを科学的に真正面から確認してみましょうってのがこの本です。

化石から古代DNAを取り出すことは、無人販売所の箱の中から特定の人が入れた硬貨を取り出すことに似ている。

長い年月の中で、化石には土中にある菌類や最近、発掘後は人間、あるいは空気中のDNAが混入するからです。

つまりかなり難しいのです。

古代DNA研究は1984年に馬(クアッガ)の古代DNA解析からスタートしたそうです。

そしてアミノ酸の真偽性の問題が付きまとっているそうです。

それは、アミノ酸が完全なタンパク質として見つかれば良いのですが、そんなことはありません。

部分的なたんぱく質であったり、遊離アミノ酸であったりします。

すると、その部分だけでは、誰のものか特定できないのです。

ちなみに1984年のクアッガの研究が優れていたのは

1 DNAが残っているだけではなく、ミトコンドリアのDNA塩基配列によりクアッガがシマウマに近縁であることを証明

2 DNA塩基配列を鵜呑みにせずに、劣化している可能性を検討。
  元の塩基配列を復元

3 混入の可能性も検討した。

ざっくり結論を書くと

1 その生物だけのDNAを抽出するのが困難

2 取り出したDNAを正しくつなぎ合わせるのが困難

3 恐竜のように古い生物のDNAを見つけ出すのは困難

ただしかなり技術的なブレークスルーが起きているのです

C.マリスのPCR法の発明にはじまり、新世代シーケンサーの開発、及びコンピュータ科学の進歩がありました。

これらにより少量の雑多なサンプルの中から効率よく目的DNAを増幅する技術が確立しました。

さらに、つなぎあわせたゲノム全容を知ることができるようになったそうです。

スヴァンテ・ぺーボらはこの技術を用いてネアンデルタール人の全ゲノムを解読しました。

そしてアフリカ人以外のホモサピエンスはある時期ネアンデルタール人との交雑があったことを証明しノーベル賞を受賞したそうです。

可能性があるとすれば、絶滅種からDNAを抽出・増幅・編集し、そのうちの絶滅種に特有の遺伝子を選んでクリスパーキャス9による遺伝子編集で近縁種に導入するという方法があり得るそうです。

山中伸弥先生のi-PS細胞もそれに有用できるそうです。

恐竜やマンモスの近縁種は何なんでしょうね。

少し可能性があるようで、ワクワクします。

ただ、絶滅生物を復元させることが本当にして良いことなのか?

著者は警鐘を鳴らしている。

▼前回のブックレビューです。

▼PIVOTに出演しました。よかったらご覧ください。


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