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2022年 11冊目『一般システム思考入門』

ジェラルド・ワインバーグの本です。
松岡正剛さんの塾に通っているのですが課題図書です。

・システム:ものごとの見方を集め、これらを組み合わせた編集装置。
・著者のジェラルド・ワインバーグは、IBMシステムリサーチ研究所の中核メンバーで、ニューヨーク州立大学で最初のヒューマン・サイエンス・アンド・テクノロジー学科の教授。
・一般システム思考の「要訣」

我々が直面している問題は次の3つのうちのどれか
1 思考のプロセスを改善したい
2 特定のシステムをもっと研究したい
3 新しい法則を作るか、古い法則の整備かをしたい

・システムとは何か
1 境界がある
2 (そのシステムを見る)「見方」が含まれている
 2人以上の者が対象を観察し、それぞれが記述する。
 この何人もの見方を含んで、一定の区切られた境界をもつものがシステム
→システムは現象やできごとの集合体であるが、外的に自立しきっているものではなく、常にそこには観察者や認識者を含んでいる。

・どんなシステムも次の相反する紛らわしい特徴がまじっている
イ 全体は、部分のたんなる寄せ集め以上のものだろう
ロ 部分は、全体のたんなる断片以上のものだろう
→これを考慮しないと合成の誤りか分解の誤りに陥っていく

・編集工学の「工学」
相互作用する複雑さを相手にしていく
→複雑な相互作用にとりくみことによって、システムの新たな局面に創発をもたらしていく
・システムの本質は複雑性にある
→だからシステム関わるものは、知と知を扱う手続きを鍛えていく(必要がある)
→知識論や科学論は、もっと分析的で要素還元主義的

・科学
技術と手に手を取って、自然界や物質界や生物界の様々な要素を突き止めてきた。
科学が得意な分析手手法の勝利。
しかし、要素が分かってもサルの本質は全く分からない。
→すべての周辺状態を前提にしなければ、サルというシステムは分からない。

・文章
文章の意味を知ろうとしても、それぞれの言葉の辞書的な定義をつなげても出てこない。
→文章というシステムは、仮説的に構成するもの(アブダクション)
※要素の集合体を前にして、あらかじめシステムを想定することが構成的方法
 →一般システム思考のエッセンス。
例 森林
 森林は 植物(落葉)、草食動物、肉食動物、バクテリアなどの(部分)からなる(境界を持った)システム
 太陽、狩猟、木材の収穫などの影響を受ける

・システムを扱う(設計する)
1 システムの不完全性を残す(過剰完全制はシステムを殺す)
→マックスウエルの言葉:どんなに魅力的な要素や作用でも、それを入れこめる容器としてのシステムの器量が整っていないのなら、それらのオーバーフローしそうな要素や作用はいさぎよく捨て去るべきなのである。システムの欲ばった「過剰完全性」はシステム自体を殺す。

2 システム(ブラックボックス)は構築されるに従い不備なものになっていく。その場合は補完システムを導入する。
→不備なものになってきたときは、INとOUTの前後でどのような状態(状態関数)をとっているかを観察し、それを新たな「補完システム」(コンプレメンタリー・システム)として分岐して新規導入すべき。いつまでもメインシステムの構築にこだわっていてはダメ。

3 システムが構築されても、そのままでは生きたシステムにはならない
→そのシステムに観測者や操作者のふるまいが加わらないかぎり、システムはシステムになりえない。
・一般的なシステム設計

「問題をたてる」
「概念を用意する」
「構造をつくる」
「詳細をつめる」
「実験をする」
「評価をする」

・ごくふつうのシステムづくりでは、
  ①システムの全体としての境界(boundary)の決定
  ②そこに入る要素(element)の確認
  ③全体と要素の相互関係(relation)と構造(structure)の設定
  ④多重レベルの階層(hierarchy)の組み立て
  ⑤入力(input)と出力(output)の想定
  ⑥システムにおける機能(function)の確定

・「概念モデル」の暗礁
→良定義と悪定義の問題、根底定義(root definition)の問題、概念モデルと概念活動モデルのちがいの問題といった、さまざまな暗礁がある
→システムにはまずは「制約」(constraint)をどのようにつけるのかといった作業が重要で、ついでは「問題や概念をつねに再定義できるしくみや代替させるしくみ」が用意されているべき。

・システムでは生成(generating)・修正(modifying)・選択(selecting)の相互の案配が生きた様態
・編集工学では、システム・アプローチのワークフローを、
「与件の整理」「目的の拡張」「概念の設計」「設営の構造」「枠組と展開」「方法の強調」「隣接と波及」という7段階。(「よ・も・が・せ・わ・ほ・り」)。

・概念モデルの初期設計では、概念を対発生させるモデルを使う
→「精神・物質」「国家・個人」「責任・義務」「植物・動物」「重力・電磁気力」「都市・田園」といったダイコトミー(二分法)→これらは曖昧領域を消していく。
→たとえば「カオス・コスモス」「正名・狂言」「あはれ・あっぱれ」「来し方・行く末」など、アジア的日本的な対発生概念を盛り込む

・正解にこだわらないシステム作り
→「最適解」(optimal solution)、「満足解」(satisfying solution)、「可能解」(feasible solution)をうまく相互に活用する
→特にFS:利用者が何をしてくるのかを想定して、「構造探索モード」「関係発見モード」「要素確認モード」などに分けておく。3つを別々に定義づけ、適確に組み合わせる。
≒構造的にものに溺れたい知と、関係の発見におもしろさを感じる知と、たんに要素をたくさん確認照応したいと思う知を別々に設計し、それらをシステムの中で交差させる。

・ノードとリンクを動的にするための知の分類
a宣言的知識(declarative knowledge)と手続き的知識(procedural knowledge)を分ける
b・「事実としての知」「判断としての知」「連想としての知」を分ける。
c・「パターン・マッチングできる知」と「新たにパターンを必要とする知」を分ける。
d・個別知(private knowledge)・共同知(common knowledge)・世界知(universal knowledge)を分ける。
e・経路ごとに「出発の知」「途中の知」「到着の知」を分け、これらを分岐させる。
f・知識とメタ知識とを分ける。あるいは表層と中間層と深層を分ける。
g・eをダイナミックにするため「埋めこみリンク」「構造リンク」「連想リンク」を分ける。
・どんなシステムも複雑なシステム(想定外が起きるので)
・「仮説的な駆動」(hypothesis driven)と「条件的な駆動」(condition driven)とは違う

→IT社会ではウェブ設計と検索エンジンが大手を振って、「条件的な駆動」が権威になっているが、これでは限界がくる。
・「仮説的な駆動」システムの開発は難しいと思われている。
→その原因は工学そのものにあるのではない。「理解のアルゴリズム」と「察知のアルゴリズム」を別々に設計しようとしていないから。
→理解の社会では遅すぎる。察知の社会が登場する必要がある。「イメージの辞書」と「察知のアルゴリズム」が重なりあい、「ルールの群」が新たなコンテキストをあらわすようにならなければならない。


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