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2016年 51冊目『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 』

NPO法人POSSE代表の今野晴貴さんの本で、大佛次郎論壇賞を受賞し10万部売れたと帯にあります。

ブラック企業と言うと従来は「暴力団のフロント企業」と言う意味で使われる言葉でしたが、現在では「違法な労働条件で若者を働かせる企業」の意味で使われることが増えています。

ブラック企業問題の被害の対象は主に正社員です。

特に若年者い社員への、長時間労働やパワハラ、モラハラとして表面化しています。

ブラック企業のパターンは、
・「月収を誇張する(長時間の残業前提)」、「正社員と偽装する(実際の仕事はアルバイト・パートと同じ)」ことで大量採用。
              
・「入社後も続くシューカツ(絶え間ない競争風土)」、「(ついていけない従業員への)戦略的パワハラ」による選別。

・「残業代未払い」、「異常な36協定(残業の例外規定)による長時間労働」、「辞めさせない」ことによる(若者の)使い捨て。

・「(異常な環境による)職場崩壊」による(パワハラ、セクハラ、モラハラ)などによる無秩序。

などが起きています。

結果、若者たちは精神疾患などによりメンタルヘルスを起こします。
メンタル発症により、若者の人生を変え、日本の労働力を減少させ、疾病の対応のため医療費を使うという事になります。

つまり、若者が根性が無いなどと問題を矮小化してはいけないという事です。

前述のように、ブラック企業の餌食になっているのは大卒の新卒です。
この少子化の日本で、若い有益な人材を使いつぶしているわけです。

今までとは何が違うのか?
従来の日本企業も、新卒に対して「長時間労働」「異動」「転勤」などを求めていました。
私たちもそうでしたし、私たちの親の世代もそうでした。

その代わり、大企業を中心に長期就業を保証し、年功で給料が上がっていったわけです。

企業内教育も充実していました。
職場でのOJTもありました。

つまり、若いうちに理不尽なことはあるが、キャリアも積め、長期展望が立てられたわけです。

ところが、現在では理不尽な要望は求められるのに、短期間での使い捨てが横行しているわけです。

長期就業も、給料アップも、教育も無いという事です。

定量的なデータが無いので、この問題の大きさは分かりません。

ブラック企業の事例は載っているのですが、その大きさが分かりません。

まずは、実態把握をし、問題の大きさと今度の拡大可能性をつかむことが重要だと感じました。

また、ブラック企業に若者が就業しないためには、いくつかの打ち手が複合的に必要だと感じました。

まず、若者、個人に対しては情報提供が必要だと思います。
つまり、上述のような会社があるという情報を伝えることです。
その見分け方が必要です。

その見分け方習得のために、できるだけ早く、可能であれば高校、少なくとも大学1,2年生から伝えることが重要です。

先日、一部大手企業と一部大学の間で1年生夏休みからの長期インターンの話が取り上げられていました。

これなどはブラックについて直接ではないですが、就業について学ぶ良い機会だと思います。

また、情報提供会社もやれることがあります。情報提供のルールをそろえる事です。

実際の労働時間、給料に含まれる残業時間、離職率などの提供を求めることなどです。

さらに、このような会社に入ってしまった場合の相談先、交渉支援先などの整備も重要です。これは国の仕事ですね。

日本の将来を担う若者のために国も民間も教育機関もNPOも協力して対応する事が重要だと感じました。

▼前回のブックレビューです。

 ▼新著『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』です。


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