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2016年 83冊目『東芝粉飾の原点 内部告発が暴いた闇』

日経ビジネスの記者が徹底取材し、内部告発情報をまとめた本です。
下手なホラー映画より怖いですし、背筋がピンとなります。

一歩間違えば、「弱い心があれば」「自分さえ良ければ」が強ければ、どこでも、誰でも起こることかもしれません。


後知恵的に解説すると、同業の総合電機メーカーと比較して、各種業績が悪かった東芝。

業績回復の一手として、原子力事業を強化する事を選択します。

海外強化かつ自分たちの強い技術と補完関係にある技術を持っているウエスティンハウスのMAを行います。

同業との競争になり、MAできないと成長できないと言う強迫観念から、その購入価格が上昇し、1500億から3000億高い6000億になります。

高く買ったのれん部分が、その後の東芝の選択を縛ることになります。
その後、福島原発の話が起き、戦略や業績見込みが大幅に変わります。

ところが、海外子会社であったり、業績が見える(本当に悪くなることが露呈する)のが数年先であったこともあり、よもやの監査法人とつるんでごまかしてしまいます。

他の事業も多かれ少なかれ、問題を誤魔化します。

期末に関連会社へ費用を付け替えたり、売上を水増ししたり、販売会社に押し込みで売上を立てたり。それを社長、カンパニー長が行います。
前任もやっていたからです。

財務担当者も、一度は反対するのですが、社長の命令であればと従います。
監査法人も、はっきりは分からないことを言い訳に、最終的にはぐるになってしまいます。

大口取引で、監査をするというよりも、膨大な書類を作成することがミッションになっています。

そして何よりも怖いのは、見かけの数値を誤魔化しているので、実際の商品や事業の状態が分からなくなるのです。

本当は赤字なのに、利益が出ている。
問題の分析ができません。

そもそも問題として議論されないのです。
あるいは少ししか利益が出ていないのに高収益に見え、打ち手が遅れるのです。

管理会計で配賦の仕方により、問題が見つからないことがあります。

そもそも配賦以前に誤魔化しているので、問題は全く見えません。

さらに問題を複雑にしたのは、ガバナンスの体制や仕組みを他社に先駆けて整備していたことです。

そこで話される内容や数値は間違っているのですが、会議体やアジェンダは最新の形態です。

当時、最高のガバナンス、お手本のガバナンス体制と言われていました。
これでは社外取締役や監査役の目も曇ります。

私は、功は碌で、品は位を!でマネジメントしてきました。
功績があった人には高い報酬を。
品性のある人を管理職に!という意味です。

東芝は、そうではなかったようです。
問題を指摘した人は、閑職に飛ばされる(事実あったようですし、うわさもたくさんあったようです)

組織は、簡単に腐敗するのだという典型事例です。
不正が発覚した後も、全体像が見えないように、一番の病巣が露呈しないように、監査法人と調査範囲を限定します。

先日発覚した三菱自動車と構造は同じです。
本の内容は、具体的な名前やメールも出てきて、かなり赤裸々です。

▼前回のブックレビューです。

▼新著『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』です。


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