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2016年 19冊目『人事と法の対話 新たな融合を目指して』

一橋大学の人事関連の専門家である守島先生と神戸大学の労働法の専門家の大内先生の対談です。

ゲストとしてイオンの人事部長(正規と非正規についいて)、ベネッセの人財課長(育成について)、東大教授(メンタルヘルスについて)、コマツ顧問(グローバル人事について)を招いて3人での対談もあり、具体的な事例も学べます。

参考になったポイントをメモしておきます。

はしがき

・人事管理(hrm:Human Resources Management)と労働法は対立すると捉えるのが一般的。

・企業からは労働法が次々とハードルを設定し、人事管理をやりにくくするものに映る。

・労働法は、企業の自由に任せていると、労働者の利益が損なわれるので、介入する。

・労働者を粗末に扱う企業は、労働者の生産性が落ちるので、労働者の利益を守ることこそ、企業経営にとって重要なこと。

・日本企業は企業内育成をきちんと行う。

・育成力が強すぎて、新卒採用時に特別な技能は不要であるほどである。

1. 人材を獲得するとき

・派遣というのはある意味で面白い働き方で、従業員にとっては自由度が高い。

その中でキャリアを育成する形になっていけば、社会にとっても本人にとってもハッピーな状況ができてくると思います。

派遣を無くした方が良いという極論がありますが、むしろこのような良い働き方を育て上げていくことが必要である。

2 正社員と非正社社員の間

・イオンの正社員5点セット(なんでもやります、どこでも行きます、いつでも働きます、定年まで働きます、優秀です)

・そうでない人が8割。(ロングタイムパート、ショートタイムパート)

・5点そろっていない正社員も存在する。

・給与比較は3点。自分の過去と現在、同職種の他人と、世間相場と。

3 .公正な評価と納得できる賃金

・3つの公正性。

結果の公正性、手続きの公正性、対人的な公正性(評価者の態度)

4. 人材を動かすとき

・人事異動はほぼ企業の自由でできる。出向、転籍は労働者の同意が必要。

・EUでは事業譲渡をすると(職種別採用なので)、従業員は譲渡先へ。日本では、本人の同意が必要。

5. 人材を育成するとき

・ベネッセは2009年に人事制度改定。
1995年改定時の自由と自己責任から、会社が主体的に能力開発する方向へ変更。

6. ワーク・ライフ・バランス

・EUにある勤務間インターバル。
   勤務終了時間と次の開始時間に11時間の休息を空けなければいけない。

・イオンは2020年までに女性管理職比率を50%に上げる。

7. メンタルヘルスと産業医の役割

・産業医は事業者と労働者が定める産業保健という領域の中でリーダシップを取る存在。

・労働安全法に定められている。
 1000人以上の従業員では常勤産業医、50人以上では嘱託産業医。

・メンタルヘルス不調で30日以上休んでいる人は従業員の1%から2%。

・労働者の自殺者数は年間7〜8000件。

・労働時間と脳・心疾患の相関はある。
 長時間とうつは10件程度の研究で2つはあるが8つは無いという研究結果。

8. 退職のマネジメント

・解雇のルール 労働契約法16条。
  解雇は客観的に合理的な理由があって、社会通念上相当と認められない場合には、権利の濫用となり無効となる。

・解雇が自由なアメリカでもステップを踏む。

1警告をする
2別の仕事につける
3会社が一定負担をして訓練する
4雇用のまま就職活動させる(ただし、即解雇は可能)

・解雇の4要件
1.人員削減の必要性
2.解雇回避努力
3.被解雇者選定の相当性
4.手続きの相当性

・ドイツでは解雇する際、解雇予告期間は勤続年数に応じて長くなる。

9. 高齢者の雇用

・2012年高年法改正:60歳以上の雇用者の選別ができなくなった。

10. 労働紛争の解決

・日本の労使協調型組合は珍しい。敵対型労組の対応ノウハウが無い日本の人事はグローバルで困っている。

・労働組合組織率は18%程度

11. グローバル化で問われる日本の人事

・コマツは売上80%超が海外。58%が外国人。

・人事は分権。生産、開発、調達は集権。

・人事は現地化を進めた方が効率的

・外国人とはfairよりtrust relationshipが重要。

12 対談を振り返って

・社員の新たな区分。
   中核的正社員、準中核的正社員、周辺正社員、基幹的非正規社員、
    伝統的非正規社員(登録型派遣含む)

▼前回のブックレビューです。

▼新著『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』です。

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