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2015年35冊目『エボラの正体』

帯に、世界を震撼させたエボラは更に進化し、適応力を身につけている。
とあります。世界を震撼させたエボラ(当初はエボラ出血熱と言われていましたが、実際は出血することはほとんど無いそうです。)、何がわかっていて、何がわかっていないのか興味があり手に取りました。

最初の発見は1976年、今から40年前、コンゴ民主共和国(知りませんでしたが、別にコンゴ共和国と言う国もあります。)でザイール株エボラが発病しました。

318名が感染し、280人が死亡しました。
致死率、実に88%です。

アウトブレークした国は、古い順にコンゴ民主共和国、スーダン、ガボン、コートダジュール、ウガンダ、コンゴ共和国。従来はウガンダ、コンゴ民主共和国、コンゴ共和国が頻度、人数とも多かったようです。

それでも1回あたり100ー300名程度でした。しかし、昨年は、従来発症していなかった西アフリカ3国(ギニア、リベリア、シエラレオネ)で実に1万5000名以上が発症し、半数以上が亡くなりました。

ウイルスは何種類もあり、発見された古い順にザイール株、スーダン株、タイフォレスト株、ブンディブギョ株などがあります。

過去の実績では、ブンディブギョ株の致死率は相対的に低く25ー51%。タイフォレスト株は1人しか感染しておらず、その人は唯一のコートダジュールで感染した人で、幸いにも死亡せずに済みました。

一方、ザイール株、スーダン株の致死率は高く70%ー80%以上になるようです。

エボラは人獣共通感染症(ズーノーシス)に分類され、人間にも感染する可能性のある動物由来の感染症です。ズーノーシスウイルスは宿主である動物の中に隠れることができるのです。

病気が姿を消したように見える時でも、何処かに潜んでいるわけです。このエボラは宿主が分かっていないのです。(おそらくコウモリであろうと言うところまで分かってはいます。

それを明らかにしつつある実験やレポートについても記載があり、興味深いです)宿主が分かっていると、その分布や宿主率、行動範囲を調査することで、発症を抑制する可能性が出てきます。

しかし、それが明確に分かっていないこと。これが、エボラの怖いところです。

発症後に広まるメカニズムは、幾つかの複合要因によります。

医療費が高く、人々は最低限の治療しか望まないこと。

また隔離施設に愛する人が閉じ込められるのを嫌がること。

伝統的な葬儀では、遺体を洗い清めるなど何らかの形で触れる機会が多いことがあります。

また、乗合タクシーやバスと言った安価な手段で、移動ができること。

アウトブレーク発生時に、物資や専門技術の支援が十分で無いことがあります。

そして、何よりも熱帯雨林の環境変化が大きいと考えられています。

この15年で熱帯雨林伐採により、熱帯雨林は広い範囲で消失しています。

これによりウイルスとの接触の可能性(コウモリの粉や飛沫に接触する可能性、もしくはそれ以外の罹患野生動物との接触の可能性)は大きく増加します。

これだけ考えるとアフリカで起きている他人事ですね。

ただ、知らなかったのですが、日本はアフリカ熱帯材輸入国として、世界の上位に位置するのです。

つまり、我々はアフリカの国々の人々とエボラウイルスとの接触機会の増加に無関係とは言えないのです。(エボラとは関係無いですが、同時に地球温暖化促進、生物多様性低減にも熱帯雨林喪失は影響があると言われています)。

この本を読み、エボラについて何ができるのか?

熱帯雨林喪失を防ぐために何ができるのか?などを考えるきっかけになりました。

お勧めです。

▼前回のブックレビューです。

▼PIVOTに出演しました。よかったらご覧ください。

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