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2015年 49冊目『ジョナサン・アイブ』

偉大な製品を生み出し続けるアップルの天才デザイナーの本です。アイブは、故スティーブ・ジョブスが絶対的な信頼を寄せたカリスマです。

とても面白い本でした。

スティーブ・ジョブスが1997年にアップルCEOとして復帰後、彼は若きイギリス人デザイナーと出会いました。

後にジョブスは、そのデザイナーがアップルを復活させられる人物だと悟ります。

その人物が、この本のタイトルジョナサン・アイブ。アイブはジョブスとともに、iMac, iPod, iPad,iPhoneなど時代のアイコンとなるテクノロジー製品を次々に作り上げます。

そして、ロイヤルティの高いファンを育て、アップルを世界的なブランドに育てていきます。

ジョブス死後ののアップルが成長を続けられているのは、流通とマネジメントの天才であり現CEOであるティム・クックとデザイン、エンジニアリングと言ったハードウエアとソフトウェアを統括しているアイブの2人のおかげであるのがよく分かります。

アイブはイギリスの教育熱心な家庭で育ちます。

お父さんは、その後イギリスのデザイン教育を伸ばしたことで受勲する程、デザイン業界に影響を与えた方です。

父の影響もあり、アイブはデザインに興味を持ち、学生時代から様々な賞を取ります。彼のデザインは、商品に派手な化粧をするといった当時の流行ではありません。

使い勝手がよく、洗練され、上品なデザインでした。今のアップル製品の源流となるようなデザインを志向していました。

学生時代に奨学金を出してくれたイギリスのデザインスタジオ「タンジェリン」に約束通り入社したアイブは様々な成果を挙げていました。

そのアイブに目をつけたのが、アップル社内にデザインスタジオを設立したロバート・ブルーナーでした。

彼は、過去3度アイブに誘いをかけていました。ブルーナーの最初のデザイン事務所にアイブがはじめて来た時。

ブルーナーがアップルに入社したした時、そしてアイブがタンジェリンに入社した時。

しかし、アイブはイギリスから離れる決心ができませんでした。しかし、今回、アップルはタンジェリンと共同プロジェクトを行い、アイブをメンバーに指名します。

その過程で何度もカリフォルニアに行き、ブルーナーたちとの仕事を気に入ったアイブはアップルに入社を決めました。

そして。すぐに頭角を表します。ただ、当時のアップルはエンジニア主導で、デザインはサブでした。その状況を180度変えたのがCEOに復帰したジョブスです。

彼は多数の製品群をプロ用、個人用ラップトップ、デスクトップの4つに絞り込みます。

そして、ジョブスとアイブが最初に取り組んだのが、個人向けデスクトップのiMacです。ここからアップルの怒涛の進撃がスタートします。

アップルがすごいなと思ったのは、通常であれば、直列で進める製造工程をコンカレントエンジニアリングと言う方法で並行して行うのです。

膨大なチェックシートと膨大な記入事項があるそうです。しかし、それをきちんとドキュメント化する事で、関係する人たちが全ての内容を抜けもれなく把握できるのだそうです。

一般的には、うまくいきそうにないように思うのですが、アップルの成果が、この方法の素晴らしさを証明しています。

最近は、リーンだとかアジャイルだとかドキュメントをきちんと残すのではなく、少人数にして情報交換を密にして判断を早くしようと言う話をよく聞きます。

しかし、ハードを作っていることも起因しているのですが、きちんと情報を残し続けているのだと言うのが素晴らしいと思いました。

そして、何よりデザインが全てに優先するのです。

デザインといっても見た目とかの狭義ではありません。
触り心地、使い心地、はじめて製品に出会う時の感動など、いわゆるUI/UXの世界まで広義に渡るのです。そして、全てのデザインはアイブに決定権があります。

その状況を作ったのがジョブスなのです。

アップルでさえ、従来はデザインよりもエンジニアリング主導だったそうです。

こちらも、最近はエンジニアリングが全てだと言う話がまことしやかに流れていますが、Google How Worksでも製品をより良くするアイデアを出せるPMが評価されるとありましたし、

今回の本もデザイナーとあります。世界最高の会社は、エンジニアリング優先の更に一歩先を行っているのだなと感じました。

本の中に出てくる製品デザインや過去のアップルの製品の写真を見るだけでも楽しくなりました。お勧めです。

▼前回のブックレビューです。

▼PIVOTに出演しました。よかったらご覧ください。

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