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2016年 35冊目『貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち』

20万部売れた「下流老人」の著者藤田孝典さんの著書です。
若者の現実を大人はわかっていない。

結婚・出産なんて「ぜいたく」だ。
学生はブラックバイトでこき使われて学ぶ時間がない。

社会人は非正規雇用や奨学金返還に苦しみ、実家を出られない。
栄養失調、脱法ハウス、生活保護・・・彼らは追い詰められている。
と帯にあります。衝撃的な内容です。

著者は社会福祉士でNPO法人ほっとプラス代表理事として若者、特に貧困者の相談支援をされている方で、中に出てくる話もリアリティがあります。

一般家庭の所得が減っています。するとその家庭の子供への進学負担が相対的に重くなります。

塾や予備校の金の負担も大きいです。

国立大学に行けば良いと思うかもしれませんが、授業料は50万円を超えるのです。

ちなみに私立は80万円以上。親の仕送りも減ります。
バイトに行かざるをえません。
サービス業を中心に人不足になっているので、長時間労働を要望されます。

場合によっては自社商品の販売ノルマを持たされ、結果、それを購入せざるをえなくなります。

長時間バイトのために勉強も出来なくなります。
親の収入も減っているので仕送りも減っています。

結果、バイトを辞めることができません。

就職選択でも、非正規の割合が増えています。

非正規そのものが悪いのではないのですが、職業人としてキャリアアップするための訓練の機会が限定され、長期就業しても収入が増えない可能性が高まります。

しかも学生時代に多数の人が奨学金を借りています。
それも利子付きのものを。

これでは奨学金ではなく教育ローンです。

収入も減っているのにローン負担もあり、職業人として訓練されていないので、収入増加の見込みもたちません。

結果、実家に住んでいる割合が増加しています。
親もいつまでも元気ではいられません。
八方塞がりです。

ただ、この話を聞いても、特殊な話ではないか?大げさに言っているのではないか?と疑問を持つ方もいるかもしれません。

典型的な質問に対して回答しています。

・労働万能説:働けば収入を得られる! 前述のように経験を積んでも給料が 増加しない仕事が増えています。

・家族扶養説:家族が助けてくれると言う神話!
  家族も貧しく、逆に搾取されたり、共倒れになるケースもあります。

・青年健康説:元気で健康だ!
   収入が減り、食費を削り、不健康になっていきます。

・時代比較説:昔もそうだった!
  企業も変化しています。
  企業内教育の対象にならない人の割合が増えているのです。

・努力至上主義説:若い時の一時的な苦労だ!
 企業が変わっているので、一時期の選択による状況が定着してしまいます。

年収200万円以下の若者(独り暮らしの40歳未満の独身男女)の4人に1人がホームレス経験者だそうです。
信じられない衝撃的な数値です。
家がなくなると、きちんとした仕事を始めることもできません。

著者は、諸外国との比較で、若者の貧困者の住宅問題解決を説きます。
高等教育時の奨学金を給付にする事を説きます。

ブラックバイト、ブラック企業から抜け出したり戦うために、そのために設立された新しい労働組合の支援を受ける事を説きます。

対応する大人も彼らの情報をきちんと理解し、具体的な解決策を提示できるアセスメントの能力を取得した人が対応する事を説きます。

また、この問題は子供の時から起きているので、子供の貧困問題解決と連携をする事を説きます。

読んで、構造的な理解が進みました。これ、何とかしないといけない問題だと理解できました。

直感的に地方創生の流れと組み合わせる事で解決できないかと思いました。

大都市圏では住居費が圧倒的に高いです。
一方、地方は住居費が安い。
しかし、仕事が無いという問題があります。

ところが、幾つかの地方では、商品・サービスに競争力があるのに、後継者がいないと言う問題があります。

地方で可能性あって人不足の場所に、大都市圏の若者を動かすUターン、Iターンが解決策の1つになるかもしれません。

実際、そのような動きが全国の数カ所で起きようとしています。

東北復興をきっかけに若者が動き出しています。
瀬戸内7県が協同してインバウンドニーズに対応しようとしています。
信州でも農業復興の話があるようです。

海外に目を広げれば、さらに可能性が高まるかもしれません。

もちろん、その手前で、食べることにも困っている、住むところにも困っている若者がいるのは即刻対応が必要です。

緊急的な施策と大きな流れを作る施策が必要に思いました。

ちょうど新職場のワークス研究所がUIターンで成果を出せる人についてのレポートを出していたので、この話がつながったのかもしれません。

この本は、文章の好き嫌いはあるかもしれませんが、中身は知っておくべきだと思いました。

▼前回のブックレビューです。

▼新著『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』です。

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