2016年 34冊目『左遷論 - 組織の論理、個人の心理 』
私もテックの社長からホールディングスの室長なので、左遷と思われるかなと思い手に取りました。
冒頭は「バブル期に入行したH行員は、メガバンクの支店で融資課長であった。支店長が見つけた新規取引先は3か月後に倒産し、5億円をだまし取られた。
H行員は、社長を探し当て、5億円の回収に成功する。
その仕事ぶりが認められ本社融資部次長に栄転する。
H行員は200億円の融資を実行した老舗Iホテルの担当になる。
ホテルは資金運用の失敗で120億円の損失を出す。
銀行、Iホテル内で、様々な人間の思惑が錯綜し、事態の収拾は困難を極めた。
H行員は、Iホテルの損失隠ぺいを突き止め、社長に構造改革案を提示し、同社の経営再建にも道筋をつけた。
さらに金融庁の執拗な検査も知恵と行動力で乗り切った。
銀行内部の不正に対しても毅然と立ち向かい、銀行のコンプライアンス危機も乗り切った。
そして銀行を私物化しようとしたO常務に取締役会で土下座させた。H行員は2段階特進とうわさがあったが、彼は証券子会社への出向を言い渡された。
そう、半沢直樹のラストシーンです。
この左遷論は、この話から始まります。
そして聞きます。なぜ昇進にならないのか?
そりゃ、読みたくなります。
銀行はまだまだ年功序列が残っており、1年上のトップを超えないと言う不文律があるそうです。
それを行うとその年次のやる気を一気に失わさせるそうです。
それが半沢直樹を上げなかった理由です。
また、子会社出向の意味も異なってきている話も挙げられています。
左遷は表やデータに出てこないので、研究もほとんどないようです。
文献検索のCiniiで検索しても128件しかヒットしません。
ただ、左遷の話は皆、大好きで、定期異動の際の酒の肴になりがちです。
また、実際以上に、本人も左遷されたと思っている人も多いようです。
それは、自分の能力への過信が原因だと言います。
調査によると実際よりも3割増しで自己評価しているようです。
すると、通常の異動も左遷と映る(昇進しなかった)ようです。
なるほどって思います。
また、賃金についての世間相場があるかどうかも大きいようです。
欧米では職種ごとの賃金相場がありますが、日本は無いですよね。そうすると疑心暗鬼になりがちです。
アメリカの賃金管理には3つの原則があります。
1.内的公正の原則:同一労働同一賃金を基本とする
2.外的公正の原則:世間相場の賃金を支給すべきである
3.個人間公正の原則:同じ仕事で働きぶりが異なれば、
賃金に差があってもよい。
同期より給料が安いと言う事実があった場合に、3かもしれません。職種が異なれば2が理由かもしれません。
日本は、2がよく分からないのに、なんとなく3を認めない感じがします。それが被害者意識を生んでいるのでしょうかね。
左遷をきっかけに成功した?菅原道真、森鴎外、池上彰さんなどについても取り上げられています。
面白い本でした。
▼前回のブックレビューです。
▼新著『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?