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ハイエナに会いに行く。~マサイ・マラ#6~

気温が上昇し、肉食獣たちの動きが鈍り始めた

フィールド内に停滞の空気が漂い、圧倒的な大平原を堪能する時間に切り替わった。

しばらくサファリカーで走る

整わぬ道の中360度の地球の産物を目に焼き付けようと車体のあちこちにしがみつき身体を保った

時にはカメラを構えシャッターを切ろうと試みるがどれもピンの合わない写真ばかりになった。

それから1時間ほど走るとケニアとタンザニアの国境、つまりマサイ・マラとセレンゲティの境にたどり着いた

そこには数組の観光客がいてここが一つの名所になっている

皆、思い思いにポーズを決め写真を撮った。

そこで同じロッジに宿泊しているフランス人家族に出くわした

その家族は夫婦と10歳ほどの息子一人で訪れていた

その家族が写真を撮る番である

面白いことに親子三人が写真に収まるのではなく、息子がカメラマンで夫婦が被写体なのだ

それだけでも文化の違いを感じるが、それだけでは終わらなかった

夫婦がボーダーラインに立ち雄大な自然をバックにポージングし、いざ息子がファインダーに目を向けカメラを構えた

するとその夫婦はなぜか熱烈なディープキスを始めてしまった

僕は息子の様子を伺うと息子は息子でファインダーから目を離し、やれやれという感じで首を横に振りそのディープキスが終わるの待っている

僕には考えられない所業だった、しかも皆が見ているその場所で、こちらの方が恥ずかしくなってくる

数十秒その夫婦の交流を待ち、再び息子がカメラを構え無事シャッターを切った

そして、ついに息子はその場所で写真に収まることなく家族は車に乗り込み走り去ってしまった

なんとも異文化な面白い光景だった。


それからランチの時間が近づいてくると目的の場所まで車を走らせた

たどり着き、木陰にシートを広げ用意されたサンドウィッチを食べているとベルベットモンキーが木を伝いこちらにやってくる

どうやら人間に慣れているようで警戒心が薄い

サンドウィッチのほかに丸のままのリンゴもあったが僕はリンゴにアレルギーがあるのでベルベットモンキーに与えた

それを掴み逃げていくのかと思ったが、まだ何かねだっているようで警戒しながらも近づいてくる

そしてジェームズもリンゴを与えた

しだいに一頭だったのが二頭に増え、仕舞いには四頭のベルベットモンキーに囲まれてしまい、皆のリンゴを奪われることになってしまった。

サバンナで生息するベルベットモンキーは食料を確保することの難しさをこうして観光客の食料をねだることで解消しているのだろうか。


つづく

















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