留学に行くと日本が好きになるという説
巷でウワサになっている「留学すると日本が好きになる」という説。割と手垢に塗れた表現っぽさは拭えないが、はたして事実なのだろうか。今回はこの説について検証していきたいと思う。noteを開いて文章を書いているのは来週に筆記試験があるというのに勉強をしたくないという一種の逃れでもある。試験前に部屋を片付けるとか全く関係のない本を読み始めるみたいな経験は誰しもあると思う。台風のせいで週末の予定に支障が出てしまった方は暇つぶしにご覧いただけると嬉しい。
僕が留学していたフィンランドという国は国連の幸福度ランキングでも毎年上位、社会福祉、教育、ジェンダー平等などが世界の中でも相当に高い水準にあるということでなかなかに興味深い国である。北欧デザイン、ムーミン、サンタクロースといったコンテンツ(?)でも人気が高い。この辺りに関しては今回の趣旨とズレてしまうため、また別の機会に詳しく書いていきたい。
さて、以下の文章に関しては完全に僕の経験と思考に基づく主観的なものであることに留意していただきたい。例外はたぶん凄いあると思う。あと、僕は割とテキトーに生きていくことをモットーとしているので、意識高い人は不快に感じるかもしれない。
結論から言えば僕は留学に行って日本が好きになったタイプの人間である。「え、高福祉社会で就労環境も良いフィンランドに行ってまでなんで?」と自分でも思った。その理由について考察していきたい。
その前に、留学前に僕が持っていた日本に対する考え方について。僕は留学前は割かし日本アンチだった。理由は恐らく読者の皆さんが持つ日本に対する不満と恐らくほぼ同じである。就業環境だったり、ムラ社会的雰囲気、変化への対応の遅さといった理由だ。それを留学後には何となく受け入れられるようになった。その理由を考えてみると以下のものである。
①海外で就職できなさそう・・・どうしてもフィンランドで就職したければフィンランド語や現地で使えるスキルを必死で学習して現地の国家試験を取るなりコネを作っておくなり、道はあったはずである。しかし僕は自分に甘いため、外国語学習を極力さぼりたいタイプの人間である。留学でも「とりあえず行けば語学力も上がるんじゃね」みたいなマインドであった。そのため、新卒から海外企業に就職できるようなスキルも語学力も無い。すると、日本で就職することになる。ここで発生するのが「認知的不協和の解消」である。要は、「自分は海外で活躍したいけどその能力がない」→「自分は海外ではなく日本で働きたいのでは?」という良く言えば発想の転換、悪く言えば逃げである。解消の過程で脳内で日本社会への肯定が発生する。「海外で働くのは難しい」→「日本社会も意外と良い部分があるのでは?」→「日本の文化も視点を変えると良い」→「ええやん」という具合にである。あばたもえくぼとはよく言ったもので、一度良く見えてきたものは加速度的によりよく見えてくるものである。恋とかもそうなのではないだろうか。いや、知らんけど。
②日本文化の良さが見える・・・コミケのフィンランド版やゲームイベント、現地のオタサーなどいろいろ参加してみたところ、現地の人から案外日本文化が好かれていることを実感した。アニメを入り口に日本全体に好印象を持つ人々も少なくない印象だった。そのうえで日本文化、特にオタクビジネスの可能性に関してまだまだ伸びしろがあることに気づいた。アニメ業界、ゲーム業界共に日本国内では産業構造、就業環境的に改善点がまだまだあるかもしれないが、対外的に考えれば可能性に溢れたビジネスである。そのため、こういった業界に携わったり、そばで見ていくには日本で生活するのが一番効率が良い。秋葉原が存在するのは日本だけなのである。
③ルーツに興味が出てくる・・・留学することによって自分のルーツに興味が出てくる。人間の移動や言語というのは面白いもので、ルーツや母国語によって規定される特性というのは意外と多い。母国語によって発音の方法に影響が出てくるし、英語の発音にも関係してくる。ルーツというのは時に殺し合いを発生させるほどの影響の強さを見せる。こういった意味で考えると島国、鎖国経験ありといった背景を持つ日本という国は大変興味深い。
④日本の景色も意外と良い・・・フィンランドは一年を通して非常に景色が美しい。夏場は白夜が湖を照らすし、冬は雪やオーロラが森を彩る。街並みも純粋なヨーロッパ的建築とはやや異なり、独自性が強いため面白い。一方でそういった景色を見ていくと、日本の山々の緑や大都市の光というものの相対的な美しさを感じる。首都圏を中心とするどこまでも続いていくようなメガロポリスは文明の発展を感じるし、日本の山や森は神秘的な感じがする。
ざっと挙げていくと以上のような感じだろうか。あと、僕はよく目にする欧米至上主義的な言説に疑問を抱くことも多い。勿論日本が見倣うべき欧米のシステムは多いが、それが簡単に実現しないのはどうしても解決できない理由が多々あるからである。どこの国にも問題は山積しており、日本だけが「終わっている」わけではない。
まあとにかく、僕は今後も日本で生きていくんだろうなと思います。
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